すれ違い

その後、フェンリルの魔力が切れるまでピラトゥスさんとの出会いや彼女の初恋・黒歴史・小さかった時の恥ずかしい話などをファフさんに『旦那なんだから彼女のすべてを知っておけ』といって延々と喋っていた……。

余りにも恥ずかしかったのかピラトゥスさんは寝室に籠もってしまった……。


「問題の解決方法には色々と言いたいところはあるけど約束は守ってくれたので私も友好関係を結びたいけど……。なんか納得いかない……。結局巣には戻れないんだし……」

 そういってピラトゥスさんは頬を膨らましている。

「それじゃあ、仲良く友好的にするんだったら、いっそのこと街に住まない? 家の建設が終わるまでは屋敷に住んでもらって……」

 そう提案しているとフレイが驚いた顔で俺のことを見つめてくる。

「住むって街にですか? 街の人たちが怖がりませんか?」

そういってフレイが心配そうに話しかけてくる。

「大丈夫、俺は二人を信用しているから二人は信用を裏切るような相手じゃないって」

 俺は、そういって二人を見つめる。

「大丈夫かな? だって僕たちは神獣だし、それにまた戦争が起こったら道具として戦争に……」

 心配そうな顔でファフさんは俺を見つめてくる。

「そんな事には俺が絶対させない、それにこうやって喋ることが出来るんだ、意思の疎通さえ出来れば恐怖なんてどっかに行っちゃうよ」

 そういうと聞いていたフレイは苦笑いをして意見を求めるように二人を見つめる。

「んんーっ、分かった……。それじゃあ、お世話になろうかな? 良いかなファフ?」

 ピラトゥスさんは頷いてファフさんに尋ねる。

「えっ、えぇーっ……。分かった君がそうするって言うなら僕は君に付いて行くよ」

 こうして街に移住してくることになった。


「それじゃあ戻ろうか、ファフさん背中に乗せてくれてありがとう」

 そういって俺とフレイそれにピラトゥスさんは背中に乗って荷物をファフさんの身体に括り付けていく。

「それじゃあ二人共、俺の近くに来てくれるかな?」

 そういって俺は空気抵抗をなくす魔導【ゼロ・ウィンドウ】を唱える。

「よろしくね貴方♪」

 そういってピラトゥスさんはドラゴン姿のファフさんにキスをする……。

「任せてよ!」

 やる気に満ち溢れたファフさんの飛行速度は凄まじく速かった……。


【ファムSIDE】

 伝書バトで何日か遅れるって連絡があったけど、やっぱり心配だな……。

「ファムさん、急いで外に来てください!」

 慌てた声でフレイヤちゃんが私のことを呼んでいる。

 フレイヤちゃんの声で緊急性があることは分かったので私は慌てて屋敷を出る。

「北東の方角からドラゴンがこっちにむかって飛んできています」

 そんな、嘘よね? だって北東の方向ってシグルド様が……。

 私は最悪な状況を考えてしまって、その場に立っていられなくなってしまった……。

「大丈夫です! 気をしっかり持ってください。今はファムさんが此処の領主代理なんですから! 民を守るためにどうするのか決断してください!」

 フレイヤちゃんに肩を支えられて私は立ち上がる……。

「シグルド様は絶対に帰ってきます。私達がドラゴンを退けて、帰ってくる場所を死守します」

 そう決意したと同時に伝書バトが飛んできた……。良かったシグルド様は生きているみたい、きっとドラゴンがこっちに向かっていることを知らせようとしてくれたんでしょう。大丈夫です、絶対に守ってみせます。

 私とフレイヤちゃんはドラゴン迎撃の準備を始める。



「伝書バトにドラゴンに乗って帰るから驚かないでって書いておいたから、そのまま街の上空飛んで屋敷の中庭に降りてくれると助かる」

 ファフさんにそう伝えるとファフさんが不思議そうに首を傾げる。

「門の上に大砲とか槍を構えた人とかが居るんですけど戦争か何かが始まるんですか?」

 いや、特に何も聞いていないのだが……。

「ちょっ、こっちに向かって大砲を放ってきましたよ! どういうことですか!」

 そんなこと聞かれても……。

「もしかして手紙を読んでない? だってご主人が乗っているって分かっていたら絶対に攻撃してこないよね?」

 確かにフレイの言う通りだ、俺が乗っているって知ったらファムさんは攻撃より魔導を使って飛んでくるだろう……。

「マズいな……。ちょっと俺、転移魔導使って屋敷に行ってファムさんに事情を説明してくるからそれまで避けていて」

 そういって俺は転移魔導を唱えて屋敷に一足先に戻る。


「ファムさん、フレイヤ、何処に居るの?」

 屋敷の中で声を掛けてみるが全く反応が無い……。

「もしかしたら門の上で指揮を執っているのか? あっちの方向に転移先を登録してないから走るしかないか……」

 俺は屋敷を出て門にむかって走り出した。

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