まさかの再会

「やっと起きたよ……。まったく貴方は昔から無茶ばかりするんですから」

 俺はフェンリルの膝の上で眠っていた。

「昔も確かこんなことあったよな? その時もフェンリルに膝枕をしてもらっていた気がする」

 そういうとフェンリルが俺の頭を撫でてくる。

「無茶をする貴方に気づいて咎めてくれる人は見つけたかい? いつでも私が貴方のそばに居られるわけじゃないんだからね」

 そういって彼女は徐々に薄くなっていく……。

「大丈夫だよ、昔みたいに無茶すると悲しませちゃう人達が出来たから」

 そういうとフェンリルは笑って『なんか悔しい』といって消えてしまった。どうやらフェンリルの魔力が尽きたようだ……。


「とりあえずフェンリルのおかげもあって、ボーンナイトやボーンビーストそれにリッチーも退治出来たからOKだけど……。さすがに此処には住めないよな……」

 氷漬けになった洞窟を見て、俺は溜息を一つ吐いた……。


「うわぁっ、何だか凄いことになっているね」

 夕方、俺を迎えに来たファフさんが驚いた顔で洞窟を見つめている・

「えぇっ、ちょっと色々あって氷漬けにしちゃいました……。とりあえず中に居た死霊達は約束通り全滅させたのでOKです」

 そういってファフさんを見つめると彼は頷いて洞窟を指差す。

「死霊を倒してくれたのはありがたいんだけど、問題が死霊から氷漬けに変わっただけにしか思えないんだけど……」

 まったくもってその通りです。でも、最初の約束通り、死霊は倒したから交渉の余地はあるはず。そんなことを思いながらドラゴンの姿になったファフさんの背中に掴まり山小屋に戻るのであった……。


「おかえりファフ♪ もしかして退治出来なかったの?」

 ピラトゥスさんが土下座をしている俺の姿を見たピラトゥスさんが不思議そうに尋ねてくる。

「違う、死霊達はきちんと倒してきたんだけど……。本人に謝らせます【フェンリル】」

 そういって構築した魔法陣に手をかざすとフェンリルが現れる。

「今日はなんだか呼ばれることが多いいね? どうしたの?」

 そういってフェンリルが顔をあげると驚いた顔のピラトゥスさんが居た。


「あれっ? お姉さんって私を助けてくれた……」

 そういってフェンリルがピラトゥスさんの顔をジィーッと見つめている。

「おかえり、ご主人……? えぇーっと何がどうなっているんだ?」

 部屋の奥から出てきたフレイが見つめ合っているフェンリルとピラトゥスさんを見て不思議そうに尋ねてくる。

「いや、正直俺もいまいち分からないから話を進めようと思う。俺は死霊達を倒すために一人では荷が重かったので召喚魔導で神獣のフェンリルを召喚して一緒に戦っていたんだけどフェンリルが洞窟の中で【エクスプロージョン】を唱えて洞窟が崩壊し始めたので【永久凍土】で氷漬けにして崩壊を食い止めました……。なので、戻っても大丈夫だけど寒いです」


 そういうとピラトゥスさんは驚いた顔で俺とフェンリルを見比べている。

「あっ、分かった! 思い出したよ! おっきくなったね? お母さんと手を繋いで何度か私のところに来ていたよね? うわぁーっ、すっごい可愛くなってる!」

 そういってフェンリルがピラトゥスさんの顔を覗き込んでいる。

「いやっ、そのっ、恥ずかしいんですけど」

 そういってピラトゥスさんは顔を隠してしまう。

「フェンリル、知り合いなのか?」

 俺がフェンリルに尋ねると彼女は頷き『こんなに小っちゃい頃に結構な頻度でお母さんに連れられたピラちゃんには会っていたよ』というと『止めてください』とピラトゥスさんが本気でいやそうに懇願している。

「この子との出会いは、この子のお母さんが関係してるんだけど今から500年ぐらい前に私が人間と魔族の戦争の道具にされたくなくて自分自身を封印したんだけど、彼女のお母さんとは仲が良くて暇なときにお喋りしに来てくれていたの……。そんなある時、一人の女の子を連れてきたの、それが彼女で……。おっきくなったらお姉ちゃんみたいに美人で強くなるって言ってくれたのよ」

フェンリルは嬉しそうに話しているがピラトゥスさんは顔を真っ赤にして『いやぁー、止めてください』と叫んでいる。

 なんか、本当にすみません……。

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