ファフニール
「恥ずかしい……」
「我慢してくれ……」
隣で俺のことを見つめるフレイにそう伝えて必死に寝ようと努力をするが、息づかいや視線を感じてしまって、なかなか眠れなかった……。
【フレイSIDE】
うわぁぁぁぁぁーっ、眠れない! 眠れないよ! ご主人様の顔、近すぎるよ!
そんなことを思いながら俺は顔に出さないように布団に包まろうと引っ張り眠ることにした……。
【シグルドSIDE】
寒い、あれっ? どうして布団が無いんだろう? 掛けて寝ていたよね? んんー?
あっ、布団っぽいのがあった……。 俺は布団を引き寄せて抱き枕を抱いて眠りに就いた……。
【フレイSIDE】
これは一体どういう状況なんだろう……? 俺は何でご主人様に抱かれているのだろう? 状況を確認しよう……。俺、寝てた。目が覚めたら布団の中で抱きつかれていた……。
「まったく分からないよ! どうして? どうして抱かれているの? 俺はファムさんじゃないよ!」
思わず大きな声をあげっちゃたけど、ご主人様は起きそうにない……。
「どうしようドキドキして寝れないよぉーっ!
朝、目が覚めると目の前に顔が真っ赤で目を充血させたフレイが俺を見つめていた。
「おっ、おはようございます。ご主人様」
そういって眠りに就いてしまう……。
「あらっ? 起きているか確認に来たんだけど、もしかしてお邪魔でした?」
下着姿で疲れた様子のフレイと下着姿でスッキリしている俺が居る……。
「絶対誤解されたじゃん!」
そう叫ぶと隣で寝ていたフレイが『うるさい』といって俺の腕を抱き枕にして眠ってしまった……。
「あっ、あの……。ゆっくり寝ていても大丈夫ですからね?」
いつ、様子を見に来ていたのかファフさんが恥ずかしそうに言って、部屋の扉を閉めてしまう……。
人の家なのにイチャイチャしてる痛い奴らと思われてしまったかも……。
「おはようございます」
お昼過ぎになり、やっとフレイから解放された俺は起き上がりリビングに行くとニヤニヤするピラトゥスさんが居た……。
「誤解です」
そういって彼女を見つめるとピラトゥスさんはキッチンに居るファフさんに『どう思う』と意見を聞くとファフさんは『僕もラブラブなんだと思った』といって粟と山菜の煮物と魚の塩焼きがテーブルに並ぶ。
「昼食の用意が出来たから起こしてきてあげて……。それと食べ終わったら君達が探している薬草を探すの手伝うから一緒に山に行こう」
そういってファフさんは笑いかけてくるので俺は頷きフレイを起こしに行くことにした。
「それで、探している薬草というのは、どういったものなのですか?」
ファフさんが後ろを振り返り、俺達に尋ねてくる。
『どうするんですかご主人様! 俺達、薬草を採取しにきたんじゃないですよ! インペリアルドラゴンと話し合いに来たんですよ』
後ろに居るフレイが俺の裾を引っ張りながら小さな声で尋ねてくる。
「実はドラゴンの巣の近くに咲く【
そういって苦笑いをするとファフさんは強張った笑顔をしていた。
結局【龍竜胆】は見つからず、今日もファフさん達の家に泊まらせてもらうことになった。
「なかなか見つからないですね……。やっぱりドラゴンの巣に近づかなくちゃ見つからないんですかね?」
そういって山道を下りながらフレイが俺とファフさんに話しかけてくる。
「そうですね、とは言ってもドラゴンの巣って何処にあるんですかね?」
苦笑いをしながらファフさんは返事をして一人テクテクと下りて行ってしまう。
『ご主人様、気づきましたか? 彼、ドラゴンのことを話題にしてから妙にソワソワしだしましたよね? さっきなんかドラゴンを討伐するために軍隊がもうじき此処に来て入山規制をしちゃうから早く【龍竜胆】を見つけたいって言ったら身体が凄く震えていたし……』
そういってフレイは疑うようなまなざしで先を行くファフさんの背中を見つめる。
『何かを知っているんだろうけど、何も言わないってことはきっと知られたくないことなんだと思う、だから向こうが話してくれるまで待とう。【龍竜胆】が見つからなければドラゴンは此処に居ないことにもなるし……。気長に探せばいいよ』
そう言いながら先を行くファフさんの後を追って山を下りる。
山を下り、小屋に着いた頃には辺りは闇に包まれ月が森を照らしていた……。
「うわぁーっ、綺麗だね!」
月に照らされた小屋の周りには綺麗な花が咲き乱れている……。
「本当だ……。凄いな」
そういって花を眺めると何処かで見た覚えがある花だった……。
「っ! フレイ俺の後ろに隠れて!」
俺の声を聞いたフレイは首を傾げながら隠れたとほぼ同時に身体がバターの様に引き裂かれる……。
やっぱりだ、あの花は此処に来る前、植物図鑑で見た【龍竜胆】だった……。そして俺を引き裂いたのは他でもないこの小屋に住んでいるファフさんだった……。
「気づいちゃったんですね? そうです、僕はインペリアルドラゴンのファフニールです。貴方たちに恨みは無いけど軍隊に知らされると面倒なので死んでもらいます」
そういってフレイを殺すためにドラゴンの姿になったファフさん……、いや、ファフニールが前足を振り下ろす。
「あぁーっ、絶対ファムさんに怒られる……。どうしてくれるんだよ!」
振り下ろされた前足を大剣に形状変化させた【レーヴァテイン】で受け止めてファフニールを睨みつける。
「どうして生きているの? 君はさっき僕に引き裂かれて死んだはずじゃ……」
まるで幽霊でも見るかの様な目で俺のことを見つめてくる。
「話せば長くなるから省略する。俺、不死身」
そういって身体を見せると既に傷口は塞がっていた。
「そんな、嘘だ! 人は不死身になんてなれない!」
そういって俺の右腕を噛み千切り咀嚼する……。
「いきなり何するんだよ、いくら不死身だからって痛いんだからな? それに服が更に酷い状態になっちゃたじゃないか!」
喰い千切られた腕は咀嚼されると同時に傷口からニョキニョキと腕が生えてくる。
「怖い、怖い……。バッ、化物だぁー!」
そういってファフニールは後退していく……。お前もドラゴンで化物なのだが……と思ったのだがツッコむのは止めておこう……。
「お願いだから落ち着いて、軍隊が来ているってのは嘘だから……。それに俺達は戦いに来たわけじゃなくて話し合いをしたくて来ているだけだから」
怯えるファフニールに話しかけると彼は人型に戻り、泣きながら小屋に入っていってしまう。
「ご主人様、俺の服も真っ赤になっちゃったよ……。姉さんにどやされる……」
青ざめた顔で俺の顔を見てくるが、どうにもしてやれない、俺が庇ったって言ったら余計フレイが怒られるのは目に見えているからだ……。ごめんフレイ……。俺はフレイの肩を叩き頭を撫でた後、小屋の扉を開けて中に入っていく。
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