ムードクラッシャー

「どうでしょう? 綺麗にしたんですよ!」

 そういって綺麗に整備された温室の中を案内してくれる。植えられている植物を見るとどれも薬効のあるものばかりだ……。

「旦那様は生傷が絶えないでしょうし薬草はあればあるだけ重宝します」

 そういって俺の手を引いて、何も植えられていない場所へ移動する。

「ここに何かを植えたいのですが何がいいでしょう?」

 首を傾げて耕された地面を指差しながら尋ねてくる。

「うーん、温室なんだし果物とかを植えるのはどうかな? 例えばオレンジとかバナナとか……」

 そういって地面に絵を描いていくとブドウの絵を描いたところでファムさんが前のめりになりブドウの絵を見つめる。

「ブドウ! ブドウも作れるんですか? 私、ブドウがいいです! ブドウ作ってみたいです!」

 そういって目を輝かせながら嬉しそうに腕を振り回している。

「分かった、俺もそういうことは初心者で分からないことが多いけど二人で一緒に育てていこう」

 そういって笑いかけるとファムさんは顔を真っ赤にして『うん』と言ったあと道具を取りに行ってしまった。


【フレイヤ&フレイSIDE】

「鈍感」

「だね……。ご主人様って女性の機微に疎いよね? フレイのことも男の子と勘違いしていたし」

 魔王様は代理でこの領土を治めていたサキュバスのマーニさんと言う方の会社に顔を出しに行くと言って屋敷を出て行ってしまったので報告をしようとフレイと一緒に温室に来たのだけど……。

「とりあえず、話し終わったみたいだし中に……」

「空気を読みなさい、フレイもご主人様と一緒で鈍いところがあるよね? 気をつけないと後で手痛いしっぺ返しがあるからね」

 そういうとフレイは不思議そうに首を傾げている……。

「ねぇねぇ、【しっぺ返し】ってなんだ?」

 そこかぁーっ、そこに疑問を持ったのかぁーっ……。

「とっ、とりあえず空気を読んでってこと! たぶん奥様が帰ってきたら分かるから」

 そう伝えるとほぼ同時に奥様が戻ってきた。

『……は、旦那様といsy……れることだけで……』

 ここからじゃ二人の会話がしっかりと聞こえない……。

「何の話しているんだろう? 【しっぺ返し】のことを話しているのかな? ちょっと行って聞いてくる!」

そういってフレイが立ち上がり温室のドアを開けてしまった!

「バカッ! フレイ何するの!」

 もーぅ、本当に空気が読めないんだから! 私は溜息を吐いてフレイを制止すべく後を追うことにした……。


「なぁなぁご主人様、【しっぺ返し】って何なんだ?」

 突然やって来て、唐突に何を聞いてくるんだろう?

「しっぺ返し? 意味でいいんだよな? 例えば俺がフレイにデコピンをすると即座にフレイが反撃をしてくること? まぁ要するに即座に仕返しをすることを言うかな」

 そういうとフレイは一人頷いている。

「どうしたフレイ?」

 そう尋ねるとフレイは俺とファムさんを見つめて土下座をして謝ってくる。

「二人のラブラブな空気を読まないでいきなり入ってきちゃってごめんなさい」

 なっ、何をいきなり言ってんだ……。ほら見ろ、ファムさん怒って顔を真っ赤にしてるじゃないか、確かに若干そんな雰囲気あったけど他人から言われると恥ずかしいんだからな!

「うっ、うわぁぁぁぁぁっー」

 怒っていたと思ったファムさんは、どうやら恥ずかしくて顔を赤くしていたようで、叫び声と共に恥ずかしさのあまり走って逃げ出してしまった……。

「ちょっ……、早い……。フレイ、あとで謝っておきなよ」

 そういうとフレイは頷いてションボリしていた。


【ファムSIDE】

 嘘、そんなに顔が緩んでた? 一目で分かるぐらいに……。恥ずかしい!

 そんなことを思いながら廊下を走っていると角を曲がってきた誰かと衝突してしまう。

「きゃあっ、落ちちゃった誰か私の頭を拾ってください……。うぅっ、目が回る……」

 声のした方向を見ると首から上の無いメイド服の女の子がいた……。

「ごめんなさいフレイヤさん、今拾いに行くからね」

 そういって座っているように肩をポンっと叩くとOKサインをしてくれたので身体を残して頭を回収に向かう……。


「うぅっ、まだクラクラする……。あんなに急いでどうしたんですか奥様?」

 頭を乗せてチョーカーを着けたフレイヤさんが私を見つめてくる。

「ごめんなさい、ちょっと恥ずかしくて……」

 そういうとフレイヤさんは『あぁーっ』と言ったあと苦笑いをしながら『フレイが空気を読まずにすみませんでした』と謝ってくる。

「ううん、私もごめんなさい前を確認しないで走っていて……」

そういって私も謝るとお互い見つめ合ってフフッと笑ってしまう。


「そっか、そんなことを話していたんだね? 私ってそんなに顔に出やすいのかな?」

 そういうとフレイヤさんは苦笑いをしながら頷いている。

「ファムさんはご主人様と話していると年相応な乙女の顔になって、直ぐに顔が赤くなるのでとっても分かりやすいです」

 どうやらフレイヤさんも気づいていたみたい……。恥ずかしい……。

『ファムさん、どこー?』

 廊下からシグルド様の声が聞こえる。

「頬、ニヤケてますよ♪」

 私は顔を真っ赤にしながらシグルド様のところに向かい走り出すのだった。

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