魔力枯渇による副作用
「何してるんですか! そのガラスを壊しちゃったら、こっちに来ちゃうじゃないですか!」
マーニさんが慌てた様子で駆け寄ってくる。
「そんなことを言っている場合じゃなかったからね……。【燃やし尽くせ獄焔】」
手のひらから黒い炎を出現させて、糸に絡まっているハーピーの少女の糸だけを焼いていく。
「すべてを焼き尽くせ」
そういって地面に黒い炎を放ち、部屋を覆いつくす。
「ちょっと、中にはまだ人が居るのにどうしてこんなことをするの! 焼け死んじゃう! 早く止めて!」
そういってマーニさんが俺の身体を揺すってくる。
「マーニさん、私達は大丈夫です! この炎、触っても熱くないんです」
炎の中から従業員の女性の声が聞こえる。
「この炎は、俺が敵と判断した相手にしか効果が無いんだ……」
そう説明しながら炎の威力を上昇させる……。
「旦那様、素直じゃないんですから……」
説明を聞いていたファムさんは嬉しそうに笑って俺のことを見つめてくる。
「何で笑ってるの? 何かおかしなこと言った?」
そういってファムさんやマーニさんを見つめると、何故かマーニさんが涙を流している。
「違う種族で、このあいだまで戦争をしていた敵同士のはずだった私達のことを……」
「違う、勘違いするな! 俺は
そういって俺は炎の威力と質をあげてキラーモスの幼虫を焼き尽くす。
「たっ、助かったぁ……」
焼き焦げたキラーモスの幼虫たちの隙間から捕まっていたハーピーや火炎放射器を構えたエルフやケンタウロスの女性が這い出てくる。
「はぁーっ、疲れた……。少し休ませて……。あと、壊した壁と強化ガラスは復元魔導を使って直しておきます。ただ申し訳ないのが死んだ生き物は復元することは出来ないので屋敷から弁償できそうなものを持ってきます」
そういって倒れるとファムさんが駆け寄ってきて、俺のことを支えてくれる。
「もう、無茶しないでくださいよ……。マーニさん、旦那様を休ませてあげたいので休憩できるところに案内してもらえませんか?」
ファムさんがマーニさんに尋ねている声が聞こえるけど徐々に意識が虚ろになっていく。
俺は昔から強力な魔導を使うことが出来るが魔力が極端に少ない……。それに魔力を使い過ぎると反動で眠くなってしまう……。だから俺は心から信頼出来る人が居ないところじゃ極力控えて……。
そこで俺の世界は暗転した。
【ファムSIDE】
シグルド様は疲れたのか眠ってしまった……。
「彼、私たち魔族のことを友人って思ってくれていたんですね……。それなのに私達は【白髪の死神】って肩書だけで彼のことを判断して彼自身を見ようとしてなかった……」
マーニさんがそういって申し訳なさそうにシグルド様のことを見つめている。
「それなら、シグルド様が目を覚ましたら色眼鏡なしで接してあげてください」
そういって笑いかけると彼女は苦笑いをしながら『そうですね、私達を友人だって言って、必死に助けてくれる死神なんて居ないですからね』と言ってシグルド様を休憩室に連れて行くのを手伝ってくれた。
【シグルド夢】
「やっと寝たか?」
俺は今、寝たふりをしている。何故かというと、ギルドからの依頼を達成して得たはずの報奨金が知らぬ間に減っているから犯人を捕まえるために、あえて寝たふりをして様子を窺っていたのだが……。
「大丈夫だって、このお子ちゃま勇者は魔力を消耗し過ぎたら次の日まで起きないから」
「それもそうか……。お子ちゃまは、俺達が金をくすねている事も気づいて無いみたいだからな……。俺達はコイツの金を使って繁華街で豪遊しようぜ」
何考えてんだコイツら……。人の金で豪遊とか……。
「私は推しの子と一緒にシャンパンタワーしてこよーっと」
「俺は女の子と寝てくるぜ! 本当に勇者さまさまだな!」
聖女と呼ばれ、世間的には美しいだとか清楚ともてはやされていて可愛かった彼女が実は男と、とっかえひっかえ寝ているクズだった……。
そしてイケメンなのに硬派で武一辺倒だと思っていた格闘家は、実は女の尻ばかり追って獣のように性交をするゲスだったことを知った……。
「俺達が何の見返りもなく、お前みたいな、お子ちゃまと一緒に旅なんてするはずがないだろ? バカでも少し考えれば分かるぜ」
目の前の景色は急に変わり、決別するときに場面は変わる。
「本当にバカよね、この世の中に聖女なんて本当にいると思ったの? 何? 女は清楚でおとなしくなんて考えていたの? そんな女、居るわけないじゃん! 幻想よ!」
そういって二人は剣と杖を構えて、にじり寄ってくる。
「バレっちゃったからには仕方ないか、コイツを殺して有り金と積み立てていたお金、俺達二人で山分けにしようぜ」
格闘家の男はそういって薙刀を俺の頭目掛けて振り下ろしてくる。
「いいですね、その提案、乗りましょう。ただ、一つだけ条件があります。とどめを刺した方が6割です。火よ、彼の者を焼き払え【フレイム】」
聖女は微笑みながら、火の魔導を俺に向けて放ってくる。
勝手にお金を使うな、何に使っているかは知っている、人の金を盗むとか最低だと伝えたら逆ギレして俺のことを殺そうとしてくる……。
「二人共、武器を収めて改めて一緒に旅を続けるつもりは無いですか?」
そう声を掛けるが返答はなく、薙刀による斬撃と魔導が俺を殺そうと放たれるだけだった……。
あの時の俺の選択は間違っていないはずだ……。あの時、二人を殺っていなければ俺が確実に死んでいた……。
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