ゆうちゃんとオニのくに

@m_e_yszw

ゆうちゃんとオニのくに

1 

 むらさきの おおきなかおに ちゃいろい とんがったつの。きいろい 大きなきばは 上に二本 上に二本 はえていて いまにも かみつかれそう。けれど こんなに おこったかおの オニに にらまれても ゆうちゃんは ちっとも こわく ありません。

 ゆうちゃんは ようちえんの ひまわりぐみで 一ばん 小さくて 一ばん こわがりなのに。なぜって? だって……それは、このオニは ゆうちゃんが クレヨンで いっしょうけんめいに かいている え だからです。

 きょうは せつぶん。オニたいじの日です。ゆうちゃんと ようちえんの おともだちは いま 先生と いっしょに オニの おめんを かいているのです。

 

 どしどしどし。がらがらがら。

 とつぜん 大きなおとが して きょうしつが グラグラ ゆれます。いったい どうしたんでしょう。


「ここだ ここだ。この ようちえんには おいしそうな にんげんの 子どもが たくさん いるぞ!」

「つかまえて たべてしまおう!」 


 たいへん 本当の オニが やってきました! オニは みんなを つかまえようと します。

「きゃー、先生 たすけて」

 みんな おおあわてで にげまわります。ゆうちゃんは こわくて たまりません。

「そうだ オニの なかまの ふりをすれば たべられずに すむかな?」

 ゆうちゃんは さっきまで いろを ぬっていた オニの おめんを かぶりました。そうして きょうしつの すみっこで じっとしていました。

「うわっ、はなせよう!」

 みどりの おにが こうじくんを つかまえます。

「まめを なげて オニを おいだしましょう! それっ!」

 先生が ふくろの 中の まめを なげました。

「いててっ」

 まめが みどりの オニに ぶつかりました。みどりの オニは おどろいて、つかまえていた こうじくんを はなしました。

「よし おれも たたかうぞ!」

 こうじくんも 先生と いっしょに まめを なげます。

「オニは そと。ふくは うち」

「オニは そと。ふくは うち」

 先生も みんなも まめを なげるので こんどは オニたちが にげる ばんです。

「ひええ なんて つよい 子どもたちだ。この ようちえんを ねらうのは やめよう」

 ところが きいろい オニが、じっとしている ゆうちゃんを みつけました。

「おや この 子どもは ずっと かくれているな」

 オニが ゆうちゃんを じろじろ みつめます。ゆうちゃんは とっても こわかったのですが、たべられないように オニのおめんをつけたまま オニのふりをして こわくないふりを しました。

「こんな オニの こどもが いたかな?」

 きいろい オニは くびを ひねりました。

「ううむ。だれだったか おもいだせないな。だけど ずいぶん つよそうな かおを しているぞ。つれてかえろう」

 なんと きいろいオニは ゆうちゃんを オニだと思って つれていって しまいました!



「そらをとおって オニの くににかえろう。にんげんの みちには あの おっかない のりものが あるからな」

 オニたちは そんなことを 言いながら くもにのって そらを いどうします。ゆうちゃんも きいろいオニと みどりのオニに つれられて くもにのっています。

「いててて さっき まめを なげられたところが まだいたい」

 みどりのオニが せなかを さすりました。

「あの ようちえんは しっぱいだったな。だけど こう ハラがへっては しかたない。どこかで にんげんの 子どもを つかまえて ゆうはんの ごちそうにしよう」

 きいろいオニが いいました。

 (わたし たべられちゃうのかな。なんとかして かえりたいなあ)

 ゆうちゃんは ぶるぶる ふるえました。

「おや。こいつ ふるえていないか? オニの子どもが こわがるなんて おかしいな」

 みどりのオニは ゆうちゃんをのぞきこみました。オニの とがったきばと ふといつおが よく見えます。ゆうちゃんは とってもこわかったのですが、にんげんだと 気づかれないように、ぴっと せすじをのばしました。

「だけど やっぱり つよそうなかおを しているぞ」

 きいろいオニが そういいました。

「あそこにも ようちえんがあるな。こんどこそ うまそうな 子どもをさらってこよう」

 オニたちは くもをあやつって じめんに 近づきました。


 (はやく にげださなくっちゃ)

 ゆうちゃんは 走るのが にがてでしたが、この時ばかりは はやく はしれるように いのりました。

「ここだ、ここだ」

「うまそうな こどもたちの においが ぷんぷんするぞ」

 二人のオニは ようちえんをのぞきこみます。ここは、もみじようちえん。ひまわりようちえんの ごきんじょさんです。


 プップーッ!


 そのとき ようちえんの きゅうしょくをはこぶ くるまが やってきました。

「くるまだ! ああ おっかない」

「ちくしょう、おれたちは あれが 大のにがてなんだ。なにしろ はやいし かたいし おまけに でかいとくる」

 大きなくるまに オニたちは びっくりぎょうてん。そのすきに ゆうちゃんは にげだします!


「あっ オニの子が にげたぞ!」

「いよいよ あやしい つかまえろ!」

 二人のオニが ドシンドシン 足音をたてて おいかけてきます。ふりむいたひょうしに あしがもつれて ゆうちゃんは ころんでしまいました。オニの太いうでが がっしり ゆうちゃんを つかまえます。

「もう にげられないぞ」

 きいろいオニが ゆうちゃんを つかまえたまま くもに のりこみます。みどりのオニは ようちえんに とびこんでいきました。


 しばらくして みどりのオニが 男の子を つれてきました。

「おい、みろ。いちばん でかくて うまそうなやつを つれてきたぞ!」

「でかした!」

 きいろのオニは おおよろこびです。けれど 男の子は 大きな声で さけびました。

「ちがうぞ! おれは オニの国を見るのが おもしろそうだと思って ついてきてやっただけだぞ!」

(あの子、 オニが こわくないのかなあ)

 ゆうちゃんは おどろいて 男の子を ながめました。ゆうちゃんより ずいぶん 大きくて 力も つよそうです。

 オニふたりと、オニにつかまった にんげんの子どもふたりは くもにのりました。いよいよ オニの国に つれていかれてしまうのです。

「おまえ、なんで こんなの かぶってるんだ?」

 男の子は ゆうちゃんの おめんを ゆびさしました。

「しーっ!」

 ゆうちゃんは あわてて おめんを おさえます。男の子は くもの上から めずらしそうに あたりを みまわして、また ゆうちゃんに はなしかけました。

「おれは、ダイキ。おまえ、なんてなまえ?」

「ゆうって いうの」

 すると みどりの オニが ふりかえりました。

「ゆうだって? にんげんの子どもみたいな なまえだなあ。それに どうも にんげんの においがするようだな」

 みどりの オニは いよいよ あやしんで、ゆうちゃんを ぐいっと ひきよせました。たいへん! そのとき、耳にかけていた わごむが とれて、ゆうちゃんの おめんが はずれてしまいました。みどりの オニは おどろいて ぎゃっとさけんだあと、ゆうちゃんの にんげんのかおをみて よろこびのこえを あげました。

「おい、見ろ! オニのかおがとれた! やっぱり こいつは にんげんだったんだ!! きょうは ふたりも つかまえたぞ」

「やったな、こんやは ごちそうだ! さあ、そろそろ とうちゃくだ」

 きいろい オニが がまんできないというように 舌なめずりを しました。



3 ゆうちゃんたちは オニのくにに やってきました。オニのくにでは オニたちが たくさん くらしています。ちいさな 川では 女の人たちが わなをしかけて さかなをとっています。男の人たちは 山で とりやへびをつかまえています。子どもたちは きのこや くだものを とっています。


「おうい、かえったぞ。今日は おいしそうな 子どもを ふたりも つれてきたぞ」

 みどりのオニが いばって言うと まっていたオニたちが、よろこんで わっとかけよってきました。子どもたちは 手をたたいてはしゃいでいます。

「やったあ。おなかいっぱい たべられる!」

 オニの子どもたちが うれしそうに ゆうちゃんたちを のぞきこみました。

 きいろいオニが ゆうちゃんの うでを つかみました。

「ようし、いつものように ふたりとも そこのこやに とじこめておこう」

 みどりのオニは ダイキくんをつかみ、オニたちは ふたりを 小さな木のこやに入れて バタンと とびらをしめ、ガチャガチャと かぎをかけてしまいました。



「どうしよう、ダイキくん。このままじゃ たべられちゃう」

「なんだい、おまえ。こわいのかい。だいじょうぶ、なんとかなるって。まあ、見てろよ」

 そんなことを言っている ゆうちゃんとダイキくんを、オニの子どもたちが きょうみしんしんで見ています。こやのまどには、オニの子どもの小さなあたまが たくさんならんで、ふたりがなにをしているか、じーっとのぞいているのです。

「おい、なにを見ているんだ。おれたちを ここから出せよ」

 ダイキくんはすごみました。

「だれが ごちそうを にがすもんか! おまえたちは うまい うまい なべになるんだ!」

 大きな オニの子どもが いいました。もじゃもじゃの かみのけが はえています。

(おなべで ゆでられちゃうの? そんなの ぜったいに いやだよ!)

 ゆうちゃんは なきだしそうになりました。だけど ダイキくんは まだ オニたちを にらんでいます。

「じゃあ、おまえたちとすもうをとって おれがかったら ここから出せよな」

「そんなこと、できるかい! いっただろう、おまえたちは ごちそうなんだから、にがすわけには いかないのさ」

「そんなことをいって、じしんがないんだろう。そんなに 大きいくせに おれにまけるのが こわいんだな」

「おれたちが おまえに まけるはず あるかい!」

「だったら すもうをとってみろよ」

「よし、わかった。ぜったいに まけないぞ!」

 そうさけぶと、もじゃもじゃの大オニは、こやのとびらを あけました。

「だけど おまえたちが かってににげださないように おれたちが みはっているからな」

 オニたちは ゆうちゃんと ダイキくんを ぐるりと とりかこみました。子どもとはいえ、みんな大きくて とってもつよそうです。

「ダイキくん かてるといいな」

 ゆうちゃんは 小さなこえで言って ダイキくんのうしろに かくれました。

「おれは、かつぞ」

 ダイキくんは うでまくりをします。


4 オニの子どもたちは 木のえだで どひょうと 二本のせんをかきました。

「はっけようい」

 もじゃもじゃの大オニと、ダイキくんはにらみあいます。

「のこった、のこった!」

 ダイキくんは、もじゃもじゃの大オニに すばしっこくつかみかかります。オニの子どもは にんげんの ダイキくんが こわがらずに むかってくるとは おもわなかったのでしょう。ゆだんしたところを、ダイキくんにどんどんおされ、あっというまに どひょうから おしだされてしまいました。

「ちくしょう、いまのは おれの 本気じゃないぞ!」

 もじゃもじゃの大オニは、ぶつぶつそんなことを言っています。

「つぎは わたしが あいてよ!」

 ふたりの たたかいを ちかくでみていた 赤いかみのオニの子が、いばって どひょうにあがります。

「はっけようい! のこった、のこった!」

 ダイキくんは、またもすばやくうごきますが、こんどは赤いかみのオニの子も すばやくむかってきました。ふたりは とっくみあったまま おしあって、どひょうの中を ぐるぐるまわって、どちらもひきません。

 オニたちが 大声でおうえんします。

「おうい、そんな にんげんなんかに まけるな!」

 ダイキくんが だんだん、おされていきます。もう少しで どひょうから 出てしまいそう。

「ダイキくん、がんばって!」

 ダイキくんをおうえんしているのは、ゆうちゃんだけ。それでも、ゆうちゃんは、ダイキくんが元気になるように 声をはりあげました。

 ダイキくんは、足をふんばります。二人は ぜんりょくで とっくみあっています。

 べしゃっ。

 赤いかみのオニの子が じめんに足をすべらせて ころんでしまいました。

「よっしゃ、かったぜ!」

 ダイキくんはおおよろこび。ゆうちゃんもほっとしました。オニの子は、まっかなかおをして みんなのところに もどっていきます。


「なんだい、なんだい! だらしないな、おまえたち! おい、にんげん。こいよ! おれと たたかえ!」

 いちばん大きな オニの子どもが そういって ダイキくんを ゆびさしました! つのが 三本もはえて とってもつよそうです!



(どうしよう。なんて、大きいんだろう。ダイキくん、きっと、あっというまに なげられちゃう)

 ゆうちゃんは こわくなってきました。

 けれど、ダイキくんは ほんもののおすもうさんのように おちついて しこをふみます。

「よしきた、やってやるぜ!」

「なにを、なまいきだな。見てろ、なかまたちのぶんも たたきのめしてやる!」

 三本つのの大オニは さっそく ダイキくんに つかみかかりました。ダイキくんも オニの子を がっしりつかんで なげとばされないように こらえています。

 やがて、ダイキくんの ひたいから あせがこぼれてきました。

「ふう、ふう」

 いきも、くるしそうです。たてつづけに 三人と たたかっているのですから ずいぶん つかれているのでしょう。そのようすをみた オニは、いっきに ダイキくんを なげとばそうとします。そのとき、ダイキくんはニヤリとわらい、オニの足を、自分の足でひっかけました。ダイキくんは、つかれたふりをして オニの すきを ねらっていたのです。ダイキくんに 足をとられ、三本つのの大オニは、よろけて ころがりました。

「ちくしょう、おまえ、ずるいぞ!」

「ずるくないやい、アタマをつかえってことだよ!」

 ダイキくんは 大きなあいてに かって よろこんで とびはねました。

「ようし、かったぞ! さあ、このまま おれたちを はなせ!!」

「ううむ、しかたないな……」

 三本つのの大オニは つのに手を当ててかんがえています。

「まって!」

 にばんめに たたかった 赤いかみのオニの子が ゆうちゃんをゆびさしました。

「そっちの ちっこいのは ぜんぜん たたかっていないじゃない!」

 すると ほかの オニの子たちも いっせいに ゆうちゃんをみました。

「そうだそうだ! ひとにまかせて かくれてばかりで ひきょうだぞ」

「よし、おれが あいてになろう」

 一人の青いオニの子がいうと、あっというまに ゆうちゃんは どひょうにつれていかれます。ここで まけたら こやの中に ぎゃくもどりです。そんなのは、ぜったいに いや。

「はっきょおい、のこった!」

 ダイキくんの たたかいを みていた ゆうちゃんは、はじめから ぜんりょくで 青オニに むかっています。青オニの子も ゆうちゃんに つかみかかります。その力の つよいこと つよいこと! ゆうちゃんは いっしょうけんめい こらえましたが、オニの子どもに ぐいぐいおされて ついには なげとばされてしまいました。

 


 オニたちは おおよろこび。ゆうちゃんは がっかりです。ところが、ゆうちゃんが なげとばされた ひょうしに ポケットから なにかが ころりと とびだしました。

「なあに、これ? きれいなぼう」

 赤いかみのオニの子が ぼうを ひろいあげます。それは、クレヨンでした。ようちえんで オニの えをかいていた ゆうちゃんは オニがきた ひょうしに おどろいて クレヨンを ポケットに おとしていたのです。オニたちは めずらしそうに みんな むちゅうで クレヨンをみています。

「この ぼうを くれるなら おまえたちを ここから出してもいいぞ」

 三本つのの大オニが ゆうちゃんに かおをよせて いいました。とがった つのや きばが ちかくに みえて、ゆうちゃんは どきっとします。

「おい、どうなんだ」

「わ、わかった、それ、あげるよ」

 えのすきな ゆうちゃんは クレヨンが おきにいりですが、それより オニのくにを にげだして おうちにかえりたかったので、すこし さみしいきもちを おさえながら いいました。

「ようちえんに かえれば クレヨンは まだ たくさん あるだろう」

 ダイキくんが なぐさめるように よこから そういいました。

 オニたちは むちゅうで クレヨンを みていますが、だれも えをかこうと しません。

「どうやって つかうか しらないの?」

 ゆうちゃんは ふしぎにおもって たずねました。

「どうするんだ。みせてみろ」

 三本つのの大オニが あたまをひねります。

「ちょっと、かしてね」

「そのまま もっていくなよ」

 ゆうちゃんは こやのかべに おはなをかきました。

「おおっ、はなができた!」

「まほうだ!」

 オニたちが おどろくこえを ききながら ゆうちゃんは もっと かきつづけます。

「くもができた!」

「ほしだ!」

 ダイキくんが ゆうちゃんの となりに やってきました、

「オニたちは クレヨンや えを みたことがないんだな。それで おまえの オニのおめんをみて オニだとおもったんだな」

「ダイキくんも なにか かく?」

「えっ。お、おれは、よしとく。おまえ、かけよ」

 ダイキくんは えが とくいでは ないようです。

「お、おい、おまえ、すごいな!」

 オニたちは こころから かんしんしてるようです。

 ゆうちゃんは こんなに大きくて こわそうなオニの子が ゆうちゃんの えをみて よろこんでいるので うれしくなって、オニの子の にがおえも かきました。あたまに とがった つのが 三本。ぐりぐりのめと、おおきいはな。

「これは、オレだな!」

 オニたちは びっくりぎょうてんです。

「つぎは、わたしよ!」

「そのつぎは、ぼくだぜ!」

 オニたちは ゆうちゃんのまわりに あつまって つぎつぎ じぶんの にがおえをかいてほしいと いうのです。ゆうちゃんは こやのかべに たくさん オニたちの えがおを かいて いきました。


「おうい、ゆうはんの じかんだぞ」

 きいろいオニと、みどりのオニが、もどってきました。やさいや、さかな、きのこのはいった かごをせおって、おとなのオニたちも たくさんやってきました。


 ところが、オニたちは こやから でている ゆうちゃんと ダイキくんをみると たちまち 目を ぎらぎらさせて おこりはじめました。

「あっ、なにをしているんだ! にんげんを にがしたな!」

「はやく つかまえろ! なべに ほうりこむんだ」

 ひろばには おふろみたいに 大きな なべがあって、おゆがぐつぐつ にえています。

「オレたち こいつらと あそんでいたんだよ」

 オニの子どもが 大人たちに 言いかえします。

「すごいんだ! こいつは すもうが つよいし、こいつは はなや ほしや オレたちのかおを つくっちゃうんだ。たべるなんて いやだよ。もっと あそびたいや」

 大人のオニは 子どもを しかりつけます。

「くちごたえをするとは なにごとだ。ゆうはんを ぬきにするぞ」

「さあ、とっとと なべに ほうりこめ!」


 みどりのオニと きいろいオニが ゆうちゃんたちに つかみかかります。たいへんです。どうしたら にげられるでしょうか。

 そうだ!

 ゆうちゃんは、おもいだしました。オニたちが ダイキくんの ようちえんで 大きなくるまを とっても こわがって いたことを。

 ゆうちゃんは いそいで トラックの えを かきました。そうして、ゆうきをだして おおきな こえを だしました。

「く、くるまが きたよ!」

 ふりむいた みどりのオニと きいろいオニは びっくりぎょうてん! おどろいて にげようとします。そのすきに ダイキくんが とびだしていって オニたちの あしを すくいます。

「いまだっ! ゆう、いくぞ!」

 ダイキくんは ゆうちゃんの うでを つかんで はしりだしました。

「まてっ。にがすものか」

 たくさんの おとなのオニたちが ゆうちゃんたちを おいかけます。ところが 子オニたちが おとなたちに とびかかって じゃまをしました。

「はやく にげろ!」

 子オニたちは、あとで、どんなに しかられるでしょう。でも、ゆうちゃんたちを たすけて くれたのです。

 ゆうちゃんは また かけだしながら 子オニを ふりむきました。

「おい、なにをしているんだ。にげないと」

 ダイキくんが、せかします。

 ゆうちゃんは くるまを かいたクレヨンを 子オニたちに むかって なげました。あの いちばん 大きな 三本つのの子オニが それを うけとめました。

「大人になったら また あおう!」

 子オニが さけぶのが きこえました。ゆうちゃんと ダイキくんは 子オニたちに てをふって、それから いちもくさんに かけていきました。




 もみじようちんで ダイキくんとわかれて ゆうちゃんは ひまわりようちえんに もどりました。

「あら、ゆうちゃん。ずいぶん ながい おさんぽだったのね。どこにいっていたの?」

 ようちえんの タマキ先生が ゆうちゃんに いいました。

「オニのくにに いっていたの。あたらしい おともだちも できたの」

 ゆうちゃんは そういって、いっぽん たりない クレヨンセットを うれしそうに ながめました。




(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゆうちゃんとオニのくに @m_e_yszw

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ