ひょっこり


「ねえ、来週から行く合宿の建物、がちで出るらしいよ」

Aさんは言いました。


「そんなの嘘っぱちよねぇ」


「ねえ〜」


「その都市伝説みんな信じていないけど、本当らしいよ」


「私、都市伝説なんて信じないもの。体験しないと信じられない、そんな話」


「私も〜」


BさんとCさんは信じていない様子でした。


「じゃあ、一緒に確かめましょ」



翌週。

彼女等を含めたバスは生徒総勢30人を乗せて例の合宿所にやって来ました。

部屋割りが自由だった為、仲の良いその三人組は一緒の部屋になりました。


一日目の夜。

Aさん、Bさん、Cさんの三人は部屋で怖い話をしていました。


「それでその壁に口と兄って血で書いてあったんだって!」


「待って、それって呪って漢字じゃん!!!」


「えー全然怖くなーい」


Cさんは全く怖がっておらず、むしろ退屈そうにしていました。


「じゃあ、私が言ってたここの宿屋の都市伝説話そうか?」

「あ、それ聞きたーい」


二人共興味深々でした。


「ここ実はね......」


Aさんの話によると、数十年前にこの宿屋で合宿に参加していた女の子へのイジメが酷く、合宿を機に首吊り自殺をしました。その女の子は成仏できておらず、未だにさまよっているんだとか。しかも首を吊った場所が312号室です。その為現在も『立入禁止』の紙が貼ってあります。そして彼女等の部屋は311号室でした。


「えー隣の部屋じゃなぁい」


「最悪〜」


「だから『立入禁止』なんて紙、貼ってあったのね」


「どうする、夜に私達の部屋覗いてたりなんかしたら」


「それ言わないでぇ、寝れないじゃなぁい」


「でも首吊り自殺とかあるあるよねぇ」


「でも怖いわぁ〜」


Aさんは二人共怖がってくれたので嬉しそうにしていました。

その夜は特に何も起きず、三人共眠りにつきました。


7日間何も起きずに過ぎていきました。

仲良し三人組はすっかり例の都市伝説を忘れて、合宿をエンジョイしています。

11日間という長い合宿なので、あと4日残っています。


その日の夜は自主勉強会がありました。最高夜中の二時まで勉強していいという事だったので受験生の三人は一生懸命最後まで自主勉強会に残こりました。


「もう二時になったわよ、帰りましょ」

「そうね、帰りましょ」


気づけばA、B、Cさんの三人だけになっていました。


「外真っ暗で気味悪いわぁ」

「しかも外雨降ってるしぃ」

「早く部屋帰りましょ〜」


三人は暗闇にとても怖がっていました。更に雨も降っていて、雷がゴロゴロ鳴っています。


この高校は共学だったので男子館と女子館は分けられていました。しかも女子館は別館だったため、いつも大半の時間を過ごす本館から渡り廊下を渡らなければなりませんでした。

夜は今にも消えるんじゃないかというくらい薄っすらとした外灯がポツポツあるだけです。


「こんな渡り廊下夜中に渡りたくないわ、怖すぎ」


「今にも幽霊出てきそうじゃなぁい」


「一、二の三で猛ダッシュしましょ」


「一、二の......三!!!!!!」


三人は猛ダッシュし、あっという間に別館へ着きました。

別館の前でハアハアと息を整えながら、ドアから中を覗いたBさんが言いました。


「なんか私達の部屋の前に立っているわ」


「あら、誰かしら」


「隣の部屋の千尋ちゃんぽくない?」


「そうね、きっと」


Aさんが気にせずにドアを開けようとした瞬間『その』影はシュッと消えました。


「ねえ、今の見た?」


「うん......」


「いやぁ。気味悪ぅい」


「あ、もしかして312号室の女の子とか?」


Aさんは二人を怖がらせようとして言いました。しかし二人はもう既にガタガタと震えています。ドアの向こうを見据えて。


「ねえ、それ本当かも」


「何よ、それって」


「Aちゃんが話してくれた都市伝説よ」


「どうしてそんなこと言うの、やめてっ!」


二人の緊張は限界のようでした。


「でもよく見てごらん......」


Aさんも一緒になってドアの向こうを覗いた瞬間息を呑みました。


明らかにAさん達の開け放たれた扉から、顔は確かではないが、『顔』が生首のようにひょっこりと、こちらを覗いています。しかし普通の女の子にしては顔の位置が高すぎるし、気味悪いほど異様です。


「ねえ、どうするの、行くの?」

Bさんは涙目になっていました。


「私は絶対に行かないからねっ......!」

Cさんは混乱しているのか表情が乱れていました。


Aさんも流石にこれはマズイ、怖いと思い、先生を呼びに行こうと提案しました。



「何もいないじゃないの」

先生は呆れた表情で言いました。


「きっと勉強のしすぎで疲れているのよ」


先生を呼んだものの、先程までの女の子は消えています。

先生にお騒がせしてすみませんでした、と一言謝罪した三人は睡魔に負けていた事もあってか、怖がることなく自分たちの部屋に入り、布団へ入りました。


暑さで中々寝付けなかったAさんは困っていました。

何度か寝返りをうち、寝心地の良い体勢を探っていました。


あれから何分経ったのだろうと、イライラしながら寝返りをうった瞬間。


ネチョッ


何かがAさんの手に触れました。反射的に手元を見ましたが、部屋は真っ暗で見えません。恐怖心より、好奇心のほうが旺盛だったAさんは手であの感触の原因を探してみました。

表面はザラザラしていますが、全体的に濡れていて、なんだかネズミの内蔵を触っている感じがしてきました。


段々と怖くなってきたAさんは触るのをやめ、再び寝返りをうった瞬間です。


ゴロゴロゴロゴロ〜


ピカッッッッッッッッッ


暗くなった部屋を雷が一瞬光りで照らしました。


そこでAさんはしっかり見てしまいました。





女の子の顔を。


その口からは舌が垂れ下がっており、目が飛び出ていました。


しかしその両目はジッとAさんを見据えていました。




Aさんは気を失いました。











⚠終わり適当です、すみません

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奇妙なお話集 高峯紅亜 @__miuu0521__

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