山田くん


私の友人の山田くんが昨日、死んだ。原因は心臓発作だったらしい。

昔から病気に患わされていた彼は二十一歳の若さでこの世を去った。

あまりにも急なことだったので私は現実を受け入れられずにいた。

いつしか山田くんがこんな事を言っていたことを思い出した。


「僕は病気になりたくてなってる訳じゃないんだ」


その日は長い大学からの講義とバイトで疲れ切っていたので私は早めに布団に入った。


私は夜中によく目を覚ましてしまう。

その後すぐに寝付くことができるけど治したい癖だ。


深夜二時。いつものように目を覚ますと頭上に何かの気配を感じた。

身を起こして後ろを振り向くとそこには誰かが立っていた。

暗闇の中目を凝らしてよく見ると死んだはずの、山田くんだった。

幽霊とかそういう類を一切信じない私は冷静だった。夢だと思っていた。


「山田、くん?」


私は恐る恐る声をかけた。


しかし彼は何も返答せず棒立ちしていた。


私はどうせ夢なんだから山田くんと話せるなら最後にしっかり話しておきたいと思った。


「心臓発作......」


私はしまった、と思った。なんて無神経なワードを言ってしまったのだろう。


すると山田くんの様態が急変した。

突然小刻みに震え始めるとウッ、ウッと声を漏らし始めた。


そして最後には白目を剥いて全身を痙攣させながら叫んだ。


「僕は心臓発作になりくてなったんじゃなぁぁぁぁぁい!!!!!!」


目の前に立つ山田くんの両目からは何故かドス黒い血が流れ出ていた。

私は夢の中だと分かっていながらも流石に恐怖を感じた。

段々と意識が遠のいていく......。


山田くんは半狂乱になりながら叫んでいた。



***



気づいたら朝になっていた。

怖い夢だったな、と思い返しながらベッドから身を起こすと夢の中と同じように後ろを振り向いた。


もちろん、誰もいない。


しかしあまりにもリアルすぎた気がする。

山田くん、何か思い残したことでもあったのかな。

でもなんで私の前に現れたんだろう。


いつも通り身支度をし、玄関に向かう。

靴を履いていると横に見覚えのあるスニーカーがきちんと揃えられていた。





ゾッとした。



それは山田くんのだった。

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