奇妙なお話集
高峯紅亜
天窓
これは僕がまだ小学生だったときのお話。
寝る前は決まって弟と喧嘩していた。
言い合いになると必ず喧嘩嫌いなお母さんが怒り狂いながら僕達の部屋に入ってくる。
ようやく皆が落ち着き、喧嘩も収まるとお母さんはカチッと部屋の電気を消す。
僕は墨をぶちまけたようなその暗闇が大嫌いだった。
すると沈黙を破るようにしてお母さんは喋り始めた。
「喧嘩する子たちにはね......」
「やめて!」
二つ下の弟は怖さに耐えられず叫んだ。
しかしお母さんは続ける。
「あそこの天窓から......」
「だからやめてって!」
「!!!!!!」
最後に大声でそう叫ぶとお母さんはバタンとドアを閉めて一階へ降りていってしまった。
恐る恐る頭から被っていた布団から顔を出すと目が暗闇に慣れたせいか、部屋が真っ暗から薄く青白い色に変わっていた。
天窓から差し込んでくる微妙な光が不気味だった。
弟の啜り泣く声が聞こえた。なんだか可哀想だったから謝った。
「ごめんね」
「うん」
***
あれからどれくらい経ったのだろう。
寝付きの悪い僕は未だに寝られずに苦しんでいた。
弟は寝息をたてて寝ている。
コンコン
どこからか物音が聞こえた。
しかしあまり気にしないようにした。
コンコンコンコン
ん?上から聞こえるな......。
コンコンコンコンコンコンコンコン
どうしよう、天窓からだ。
僕はジワリと背中に汗を感じた。
怖い。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
僕は再び布団を被った。
そしていつの間にかその音はしなくなり、気づいたら眠りについていた。
目を覚ましたがまだ夜中だった。
しかし目が冴えている。これまた中々眠れない。
寝ている間に身体が横向きになっていたから仰向けに戻した瞬間だった。
真上にある天窓から真っ白な女の人が目を剥いて僕を凝視していたんだ。
何時間あの状態で待っていたんだろう。
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