68話目 えっ?怒られるの?

 式典後、俺たちは式典が始まる前に集まっていた部屋に戻ってきた。

 星十字架の証の件は一旦保留となり、後日話すとのこと。


「国王様!星十字架の証ってどういうことですか!」

「まあまあ、いいではないか」

「いいではないか、ではないですよ!!」


 国王に対して怒っているのは俺たち生徒や教師でもない。

 全く知らない貴族の誰かだった。


 でも式典の時に見たな。

 たしか、一番前の席にいたような……。


「ジルー、なんであのおじいちゃんあんなに怒っているの?」

「星十字架の証を与えるのはどうだろうかっていうことだよ」

「星十字架の証ってなんなの?」

「まあ簡単に言えば勇者ほどではないけど、勇者と共に旅をした仲間みたいなものかな」

「「すごいやつなんだね!!」」


 シロとペイルは新しいことに夢中になってくれて教えがいがある。

 まあ、二人とも本当にそうなるかもしれないけど。

 俺、勇者になれるみたいだし。


「ですから――ん?」


 俺が怒っていたおじいちゃんを見ていたらこっちに気づいた。

 やべ、なんかこっちまで来たんだけど。


「すまないな。いきなり入ってきて怒鳴ってしまい」

「い、いえいえ……」

「私はジャギー・コルバルト・ガンターフという。私はこう見えてもこの国の最高貴族、貴族の中でも一番偉い人なんだ」


 この国では貴族は多く存在する。

 多くと言っても、国民を含めて数えれば1%も満たない。


 そんな中での一番だ。

 国王ほどではないが、次に来るほど偉い人になる。


「君はノスタルの息子だろう?」

「父さんを知っているの?」

「もちろんだとも。この国で彼を知らない人はいなほど有名だよ」


 父さんってそこまで有名なんだ。

 家にいるときは全然そういう風なところをみせなかったから知らなかった。


「実は君の父親も星十字架の証を受けることになっていたんだ」

「そうなの!?」

「だけど彼は断固拒否したんだ」

「なんで……?」

「ふふっ、答えは簡単だったよ。『家族と一緒にいる時間を減りそうだから』と言ったんだ」


 理由が、それ?

 父さんらしいと言えば父さんらしい。

 俺たちと一緒にいるために名誉あるものを断っていたなんて。


「これって受けるとどうなるんですか?」

「星十字架の証か?恐らく、学校を辞めて城で英才教育を受けさせられるだろう」

「「「「「えっ!?」」」」」


 学校を辞めてここで英才教育?

 そんなこと絶対嫌だ!


「それなら断ります!」

「シロも!」「僕も!」「私もそうするわ」


 後に続きみんなも断ると言い始めた。

 みんなも学校を離れるのが嫌だったみたい。


「これを得るということはすごいことなんだぞ?」

「国王様、その証を子供に渡すのはどうかと思います。無理やり学校から引き離すのはもちろん、荷が重すぎます」

「な、なら先生方は……?」

「「もちろん断ります」」

「そ、そうか……」


 国王様はしょぼんと凹んでしまった。


「ねえねえ」

「ん?どうしたんだい?」

「なんで国王様はあんなに渡したがっているの?」

「ああ、歴代の国王は最低でも一人に与えているんだ。だけど国王様はまだ与えていなくて焦っているんだよ」


 そんなのが理由だったのかよ!

 っていうかこのまま話が通るとしたら結構な人数に渡すことになるぞ。


「ではこの話はなかったことに」

「ならだれに渡せばいいのか……」

「別に渡さなくてもいいと思いますよ」

「それだと――」

「しつこいですよ!!」


 なかなか引き下がらないな、国王様。


「あとは私に任せておいて、これで町へ遊びに行くといい」


 そう言うとジャギーさんは懐から袋を取り出した。

 なにこれ?


「中にはお金が入っている。その人数なら十分遊べるだろう」

「あっ、みんな。今日は城に泊っていくといい」


 横からひょこっと国王が顔を出した。

 この人、ジャギーさんが来てから子供のように変わったな。


「ジルくん、どれぐらい貰ったの?」

「どれどれ?」


 中を見てみると全部金色。

 数えてみると全部で30枚。

 えっ?なんでこんな大金が入っているの?


「金貨が30枚……」

「うそっ!?」

「私たちの給料の6倍もある……」


 なんてことを子供の前で言っているんだよ。


「メンディ、よかったらみんなを案内してやりなさい」

「わかった」

「メンディちゃん案内できるの?」

「むっ、それはどういう意味?」

「いや、王女様だから外にあまり出ないのかなあって」


 学校に行っていなくてここで勉強しているならあまり外に出る機会は少なそう。

 とてにも知っているとは思えない。


「メンディは時々抜け出す癖があるんだ」

「ブイッ」


 ブイッじゃないよ!

 勝手に抜け出しちゃダメだろ!!


「足りなかったらまたここに戻ってきてくれ」

「いやいや、こんなに使うはずないでしょう……」

「そうか?私が買い物すると1時間ぐらいでなくなってしまうが」


 さすが貴族のトップだよ!

 金銭感覚壊れている……。


「まあ楽しんできたまえ。さて国王様」

「あ、ああ。どうした?」

「どうしたではありませんよ!あんな公の場で問題発言をして!」

「す、すまなかったって」

「では反省をしているか、今から見せてもらいます。この件について弁明を考えてもらいます」

「う、うむ。わかった」


 まるでお父さんと息子だな。

 俺たちはそんな風景を見ながら町のほうへと向かった。

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