番外編 夏休みの一日

 日は遡り夏休み後半。

 俺たちは実家にいた。


「今日は何するのー?」

「どうしようかなあ」


 まだ夏の暑さが残っている。

 全然頭が回らない。


「どこかで涼めたらいいけど」

「……リーシュちゃん、暑いのは分かるけどそこで寝っ転がるのは良くないよ」

「だって暑いんだもーん!」


 俺だって暑い。

 どうしたもんか。


「あっ!ならいいところがあるよ」

「「どこ!?」」

「なになにー?何のお話?」

「ペイル、ちょうどよかった。一緒に行くか?」

「どこに?」

「海だよ」


 こっちの世界にももちろん海がある。

 しかも砂浜を見つけたことが合った。


「「「いきたい!!」」」

「じゃあ行こうか。すぐ移動できるから水着を着たら戻ってきて」

「「「はーい!!」」」


 ということで今日は海へ。


 父さんは仕事で母さんは珍しく父さんの付き添い。

 たまに軍への料理をつくったりしている。

 母さんの料理はおいしいから軍でもすごい人気だ。


「終わったよー!」

「僕も!」

「私も終わったわ」

「じゃあ行こうか」


 俺は魔法を使い、海へと移動した。


「「広ーい!!」」

「誰もいないわね」

「深い森に底が見えない谷の底を抜けないとないからね」

「……よくそんなところを抜けたわね」


 けっこう苦労したぞ。

 でもその分、見つけた時はうれしかったなあ。

 みんなも楽しんでいるみたいだし、さらにうれしい。


「つめたーい!!」

「みてみて!魚がいるよ!」

「ほんとだ!えいっ!」


 準備体操もせずにとっとと海へと入る2人。

 まあ大丈夫だろうけどさ。

 ってか素手で魚捕まえているし。


「シロー!かわいそうだから逃がしてあげなー!」

「わかったー!」


 シロは素直に魚を逃がした。

 ペイルは少し残念な顔をしていたけど、さっきの魚は食べれなさそうだぞ。

 色なんてピンクだったし。


「リーシュちゃんは泳がないの?」

「海を見ながらこうしていると涼しくならない?」

「分かるけど、その椅子とパラソルどこから出したの……」

「魔法よ」


 よくビーチで見る格好をしているリーシュちゃん。

 さすがにサングラスはなかったみたい。

 子供がその格好でいるのは少し違和感があるな。


「ジルー!おいでよー!」

「行ってあげたら?」

「じゃあ行ってくるよ」


 俺はシロとペイルのいるところまで走っていった。


「ふふっ、こういう光景を見るのもいいわ」


*


「ジルー!あれ見て!」

「……なんでこんなところにチョウチンアンコウがいるんだよ」


 水面からチョウチンアンコウの光の部分だけが出ていた。

 それって光に寄ってきた獲物を食べるために使うやつじゃん。

 なんで水面から出ちゃってるんだよ。

 しかもここ浅瀬だぞ。


「見てくるね!」

「あっ、おい!危ないぞ!」

「グワアアアァァ!!」


 いわんこっちゃない。

 シロが近づいた瞬間、チョウチンアンコウは姿を現した。


「おおおお!でかーい!!」

「そんなこと言っている場合か!食べられちゃうぞ!」

「えっ!そんなの嫌だよ!えいっ!」


 かわいらしくパンチをした。

 けどそのパンチを受けたチョウチンアンコウは吹っ飛んだ。


「……えぇ」

「これで解決!」


 解決って何だよ!

 自分から突っ込んでいったのに。


「ジルくん」

「あれ?リーシュちゃん。泳ぐ気になったの?」

「いえ、もしかしたらあれって食べられるんじゃないのかなって」

「……あれを?」

「あれを」


 チョウチンアンコウって食えるのか?

 という前にでかすぎて食べきれないぞ。


「ジルー!」

「今度は何―?」

「このでっかいお魚美味しいよ!」

「ってもう食ってる!?」


 シロとペイルはさっさと食べていた。

 そんな好奇心で食べてはいけないと思うんだけど。

 毒があったらどうするんだ。


「ほらほら」

「おいしいよー!」

「分かったって」


 シロとペイルに渡され、まずは一口。


「!? 美味しい!」

「でしょー!」

「まさかこんなに美味しいとは」

「家に持って帰らない?」

「ナイスアイディア!さすがペイル」

「えへへへ」


 このでっかい魚は持ち帰ることになった。


*


「もうそろそろ帰るぞー!」

「「はーい!」」

「リーシュちゃんも、帰るよ」

「聞こえているわ」


 夕方、俺たちは家に帰る準備をし始めた。

 と言っても持って帰るのはこのでっかい魚だけ。

 近くに寄せて魔法を発動させた。


「次はみんなで来ようね!」

「そうだな。この魚をみんなたべたらびっくりするだろうね」

「「うん!」」


 家に持って帰ると、母さんがさばいて夕飯に出た。

 一番食べたのはリーシュちゃん。

 そんなに気にいったのか……。

 もしかしてリーシュちゃんが食べたくて俺を誘導したんじゃないの?

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