第57話 新しい人

 今、シロとペイルが拗ねている。

 理由はご飯をお替りしたいけど夕飯が入らなくなるためにダメと言ったため。

 うーん、どうしたもんかな。


「じゃあ何か遊んであげるからさ」

「「いいよ!!」」


 いいのかよ!!

 単純だな……。


「そうだ、遊ぶとは少し違うけど、さっき手だけドラゴンの姿になっていなかったか?」

「できるよ!ほら!」

「僕もできるよ!」


 シロとペイルは手だけをドラゴンの姿に戻した。

 爪があり、引っかかれたら真っ二つにされそう。


「そんなことまで覚えていたんだ」

「他にもできるよ!」


 そういうと、ひょこっと翼が生えた。

 なにそれ、可愛いんだけど。

 それはずるい。


「そういえば、それは俺もできるな」

「おそろい!」

「僕はまだうまくできない……」


 うまくってことはできるときはあるのか。

 ペイルの成長度合いがすごいな。


「ジルは何かないのー?」

「俺?一応あるけど」


 修行の間、一人でこそこそと練習していた魔法がある。

 楽しようと生み出したのに、完成したのは本当に最近。

 結局使わなかった魔法だ。


「じゃあもう一回ドラゴンの手を出してくれる?」

「? いいよ!」


 疑問に思いつつ、素直にだした。

 少しできるか心配だけど。


「じゃあ行くよ。疑似魔法コピー


 俺はシロの魔法を真似た。

 これは完全に自分で使えるようにするのではなく真似をするだけ。

 相手が使わないと自分も使えないのだ。


「ジルってドラゴンだったの!?」

「ちがうよ!コピー、魔法を真似たんだ」

「へぇー!そんなことできるんだー!」


 それにしてもこれ重いな。

 よくこんなのを振り回していたな。


 この後も何個か真似をして夕飯の時間。

 残りの休みの日もたくさん遊んだけど、遊んでるのが一番楽しい。


「それじゃあ行こうか。久しぶりにみんなに会えるんだから少し早めに行こう」

「「わかったー!」」


 みんなはペイルの姿を見てどうなるんだろう?

 まだみんなとは会ってないんだよね。


 食堂へ移動。

 やっぱりまだ人は少ない。


「リーシュちゃんは相変わらず早いね」

「ええ。あの話も早く終わったから」

「え?もうできたの?」

「そんなわけないじゃない。むしろ全然なぐらい」


 内容は分からないけど、大変そうだな。


「よっ!」

「久しぶりだね」

「ガウ、それにラウくんまで」


 ガウは額にキズがあって驚いたけど、ラウくんは今まで通り。

 俺たちも見た目は変わっていない。

 ガウの変わりがすご過ぎたんだ。


「やっほー!」

「みんな久しぶりー!」

「あれ?一番かと思ったのに」


 シャルちゃんとネルちゃん、それにクロがきた。

 あれ?

 何か違和感あるんだけど。


「ペイルは何してた?」

「僕?僕はがんばって強くなろうとしたよ!」

「オレと同じだ!」


 うん、ガウが普通にペイルと話している。

 リーシュちゃんはどういう風に魔法を使ったんだ?


「どういう設定にしたの?」

「みんな元々知っているペイルくんに容姿を変更しただけよ。ただし、人として対応してもおかしくない部分しか残していないわ」

「なるほど」


 今まで通りでいいってことか。

 その能力羨ましすぎるよ。


「遅れたでありんす」

「あ、フウちゃんも来たみ――だれ?」

「失礼でありんすよ!!」


 いやいや、偽物でしょ。

 見た目が年の倍に見える。

 10歳前後にいきなりなるわけなんてないだろ?


「ジルくん、僕たち獣人はフウちゃんみたいに急に大きくなったりするんだ」

「わっちのように強いと成長が早いでありんす」


 見た目の成長は早くても心は子供のままだな。

 にしてもこんなに急激に成長するのか。


「ラウくんはならないの?」

「僕はまだかな……?」

「ひとそれぞれでありんすから明日かもしれないし、来年かもしれないでありんす」


 そんなにバラバラなのか。

 獣人の間だったらこれが普通なのか。


「今まで同じぐらいだったのに一番大きくなったね」

「ふっふっふっ。その上修行もしたから強いでありんすよ……!」

「たぶんみんな修行したと思うよ」

「それでもわっちのほうが強くなっているかもしれないでありんすよ?」


 あの時負けたの相当根に持っていたのか。


「みんなー!久しぶり――ってフウちゃん大きくなったわね!?」

「そうでありんしょう?」


 ユリ先生が来た。

 よく一発で分かったね。

 全然変わったているけど。


「それにガウくん、額のキズは大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。もう塞がっているし」


 見るだけで痛そうなキズ。

 あんなになるまで鍛えていたのか?


「改めてみんな久しぶり!」

「久しぶりね。元気にしていたかしら?」

「「「「「してた!」」」」」

「相変わらず元気ね」


 まあ、当たり前だけど先生たちはいつも通り。

 あ、でも服は変わっている。


「もういいか?」

「あ、大丈夫よ!紹介するわ、新しい先生よ」

「グライド・メイルだ。グライドでいい」


 この人はリーシュちゃんの部屋に行くときに見た人だ。

 あー、新しい先生だから魔法の確認をしていたのか。

 それなら納得だ。守らないといけない場所だし。


「でもなんで今?」

「あまりにも君たちの成長が早くて手が回るか心配だからもう1人欲しいと思っていたのよ」

「だから冒険者の仲間を呼んだわけ!もちろん校長先生も許可したわ!」


 なんか、言いづらいな。

 成長が早いから新しい先生を呼んだのに修行していたなんて。

 先生の仕事が増えないようにしよう……。


「さっそく明日は俺がみる。しっかり準備しておくように」


 軍の隊長みたいな命令の仕方。

 この人の授業かあ。

 相当つらいだろうなあ。


「終わったかな?じゃあいただきましょう!」

「「「「「いただきまーす!」」」」」


 みんなで夕飯を食べ始めた。

 シロとペイルは食い過ぎていたからそこまで食べなかった。

 止めておいてよかった。


 食後、いつも通りのように解散となった。

 明日から学校生活が戻ってくる。

 しっかり朝起きるために今日は早めに寝ておいた。

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