第58話 嫌な予感

「うーん……」


 朝、いつもならすぐ起きるがなんか嫌な気がしておきたくない。

 こういう嫌な気は大体当たるものだ。

 しかも天気は曇り。

 今にも雨が降ってきそうだ。


「でもサボるわけにいかないし、シロとペイルを起こしていくか」


 いつも通りシロとペイルはまだ爆睡中。

 そろそろ自分で起きてほしいな。


「ん~」

「おっ、自分で起きれたね」

「お姉ちゃんだから~……」


 寝ぼけているようだが、体を起こした。

 今回からペイルが学校に来た。

 お姉ちゃんらしいことをしたいのだろう。


「じゃあペイルも起こしてくれる?」

「わかったー」


 まだ寝ぼけているがしっかり起こしにいってくれた。

 これが毎日続けばいいなあ。


「二人とも起きたー?」

「「は~い」」

「うん、まだ寝ぼけているみたいだから顔洗っておいで」


 二人は顔を洗いに行った。

 俺は残って今日の準備。

 と言っても今日はグライド先生が見るって言ってたな。

 準備もしておくようにとも言っていたけど。

 何を準備すればいいんだろうか。


 シロとペイルが戻ってきたとき、二人とももう元気になっていた。

 顔を洗うとすぐ目覚めてこの元気。

 元気ありすぎだろ。


「それじゃあいくぞー」

「何も持たないのー?」

「何を持っていくのか分からないからね」


 しょうがないじゃん。

 そもそもいつも何も持っていっていない。

 持っていくときは大体あらかじめこれを持ってきてと言われる。


「じゃあ行こうか」


 教室へ。

 ついても誰もいない。

 リーシュちゃんはいると思ったんだけど。


「やっぱり、なんか嫌な予感がする」

「嫌な予感?」

「シロとペイルはここにいて!」


 俺は教室を出た。

 さっきから頭の中でチラつくことがある。

 昨日の魔法陣が思い浮かんでくる。


 どこかで見たことがあるような気がしたのは昨日寝る前。

 何かの本で結構前だから思い出せない。


「ここだ」


 着いた先は昨日リーシュちゃんと食事をしたところ。

 やはり予感が当たったみたいだ。

 魔法陣が赤く光っている。


「何の魔法陣だ?特徴的だったからなのか、有名だったのか本に載っていたんだ」


 何の魔法、何の守りの魔法か。

 いや、そもそもそれが違うかもしれない。

 なら何のための魔法?


「思い出した……。これは敵を閉じ込めるための火の魔法だ」


 この魔法陣を軸とし、周囲に炎の壁をつくる。

 相手を逃がさないための魔法によく使われる魔法だ。


 でもなぜこんなところに?

 誰を討ち取るとでもいうんだ?

 もしくは俺たちを皆殺しに?


「なんでこう、マイナスのほうへといくんだか」


 一回でも嫌な予感がすると、考えるのも全部マイナスのほうへと行く。

 とりあえずこの魔法の対策を考えなければ。


 この魔法陣の上に俺がつくった魔法陣を描いた。

 簡単に言えば上書き。赤く光っているため、もう消せないからだ。

 発動条件は下に描いてある魔法が発動したとき。

 この魔法陣が発動させた炎を消すために水をつくる魔法だ。


「これで大丈夫だろう」

「見事だな。子供がそんなことをできるはずがないんだが」

「誰だ!?」


 油断をしていた。

 あんなにも修行をしていたのに魔法陣のほうばっかり考えていた。


「グライドだ。いや、もうこの名前はいい」

「どういうこと?」

「いやー、念のために冒険者になってよかったぜ。こうも簡単に入れるとはな」

「だからどういうこと?」

「俺の本当の名はアメグラ。この姿を見れば子供でも分かるだろ?」

「!?」


 姿は変わり、悪魔となった。

 ただ、俺が見た悪魔とは全然違う。


「本当に悪魔、なのか?」

「合ってるぜ。ただ強すぎて変化が起きただけだ」


 ツノと翼が生えただけ。

 ただそれを除けば人のままだ。


「早く終わらせたいんだ。すまないが眠っててもらう」

「何が狙いなのか分からないが、そうはさせないぞ!」

「子供は元気だな。だがその元気もここまでだ。炎の縄ファイアーロープ


 不意打ちか!

 残念だが声をかけられてから警戒をしている。

 これぐらいなら避けれる。


「ほう、いい反応だな」

「そりゃどうも」

「人間にしておくのがもったいないぐらいだ。勇者なんてどうだ?」

「それは無理でしょ。生まれながらの宿命だし」

「よく知っているじゃないか」


 あわよくばなりたいと思ったけど、それは叶わなかった。

 勇者は生まれてすぐ勇者だと分かる。

 まるで呪いのように。


「いいのか、攻撃をしなくても」

「用心深いもんでね」

「そうか、ならこっちから行かせてもらうぞ」

「えっ!?」


 速い、速過ぎる。

 この速度はクーリアさんと肩を並べるほどじゃないのか?

 全然見えない。


「ここか!」

「外れだ、残念だったな」

「ガハッ!!」


 くそっ、いてえぇ……。

 何回も何回も吹っ飛ばされたけど優しくされていたのが分かる。

 今は普通に吹っ飛ばされたんだ。


「ここまでか?今後の成長が楽しみだったが、仕方ないことだ」

「はあ…はあ……」

「ふっ、最期まであきらめない目だな」

「当たり前だ!!」


 俺は氷の矢を飛ばすと同時に動いた。

 氷の矢を受け止めるときの一瞬で俺は後ろまで移動した。

 こんなに速く動けたのは修行のおかげかもな。


「くらえ!麻痺パラライシス!」


 よし!当たった!

 力も結構入れたし、効いただろう。


「いってぇ……。それじゃあ麻痺じゃなくてただの電撃だ」

「嘘だろ!?」


 無傷だと!?

 前のクロを想定として力を入れた。

 それでも全然効かないってことはクロとは格が違う。


「これぐらいなら大体の悪魔は動けなくなるな」

「自分は違うってことか」

「ああ。俺たち六大悪魔セイスデビルはこんなのデコピンされたようなものだ」


 さっき痛いとか言っていたけどうそかよ。

 やばいな、ここまで来ると本気で行かないと俺が死んでしまう。

 前みたいに油断をしなければ大丈夫なはず。


「ここからだ!ス――」


 俺が魔法を使おうと思ったその瞬間。

 炎が学校を包み込んだ。

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