第53話 修行終了 後編

「死ぬ……」

「よかったですよ。今日いきなりこの姿でそれほどよければ十分です」

「2回に1回ぐらいあたってたけど……」


 クーリアさんに掴まれて運ばれた後、夕方の今までずっと避け続けていた。

 昼飯抜きで。

 空腹が通り越して謎の満腹感がある。


「では帰りましょうか」

「はい……」

「大丈夫ですか?」

「ちょっと大丈夫じゃない、かな」

「しょうがないですね」


 いつも以上に疲れきってだんだん眠くなってきた。

 というよりもう半目でウトウトしている。


「しょうがないですね。乗ってください」

「はーい……」


 クーリアさんは俺を乗せて飛び立った。

 そんな背中にいる俺はいつのまにか寝ていた。


*


「そろそろ着きますよ……って寝ちゃっていますか」


 背中ではぐっすり寝ている子供。

 無邪気に遊び疲れて泥のように寝ているそんな状態だった。


「少し無茶をさせちゃったみたいですね。最後の日になるかもしれないから詰めすぎちゃったみたい。このまま運んであげますか」


 クーリアは人の姿に戻るとジルを抱っこさせた。


「どうしようかな?このまま寝かせてあげたいけどご飯を食べないと本当に倒れてしまいそうだし……。ご飯まで寝かせてあげますか」


 ジルを背負ったクーリアは食堂へと向かった。

 皆がいつも食べている椅子にジルを横にさせた。


「ふふっ。少ししかいなかったのにこんなに楽しかったのは久しぶりでした。ありがとうございます」


 クーリアはジルのおでこにキスをすると、料理をするために台所へと向かった。


*


「――きて!ジルー!!」

「んー?」

「起きてー!さもないとー」

「え?」

「どーん!」

「がはっ!」


 いきなり腹に飛び込んでくるなよ!

 しかも起きてすぐ。


「な、なに……シロ」

「ごはんだって!ジルお昼の時いなかったでしょ?」

「そうだけど、飛び込まないで普通に起こしてくれたらうれしいかな」

「だって全然起きなかったんだもん!」


 それなら揺すってほしかった。

 いや、揺すっていたみたいだけど本当に起きなかったみたい。


「皆集まったか、話があるんだが――」

「料理できましたよ。皆さん席に……師匠、どうしました?」

「クーリアちゃん、話を遮っちゃったみたいっすよ」


「ごほん、話だが、皆一通り修業を終えたみたいだな」

「俺はそうみたい。シロとペイルは?」

「もちろん!」

「終わったよ!」

「リーシュちゃんは……聞くまでもないか」


 あんな地震を起こしたんだ。

 聞かなくてもいいでしょ。


「あ、でも俺は完全に終わってないと思うけど」

「それは大丈夫だ。時間が余ったからやってもらっただけだ」

「そういえばそう言っていたような」

「一通りこの夏にできそうな内容が終わった。正直ここまで早く終わると思わなかったが、ずっとここにいるのも良くないだろう。明日から親のところへ戻るといい」

「そんな急にですか?」

「予定の段階では休み全部を使って終わるか分からないぐらいだったのだ。いい加減休みたいだろう?」


 それには激しく同意。

 今日は他を待つから余分にやっていたけどあれが毎日続くのは本当につらい。


「パパとママに会えるの!?」

「そうだよ。でもみんなとはお別れなんだよ?」

「えー!みんなも一緒に行こうよ!」

「ペイル、それはできないよ」

「ごめんねーペイルくん。うちらはここから離れられないんすよ」

「でも来たいと思えば来ればいい。うぬの魔法ですぐ来れるだろう」


 俺のワープ魔法。

 行ったことがある場所なら行けるからもちろんここにもすぐ来れる。


「いつ来てもいいんですか?」

「ああ、今はここを拠点にしている。当分移すつもりはないからな」

「じゃあ遠慮なく明日帰ろうかな」


 こんなあっさりと俺たちの修行は終わった。

 といっても帰るのは明日。

 今日はもうゆっくりしていこう……。


 翌朝。

 食後はすぐ寝たおかげでぐっすり眠れた。

眠ったおかげで寝起きがいい。


「おはようございます」

「おはようございます。そろそろ皆さん来ると思うので少し待っていてください」


 部屋にいるのは俺とクーリアさん、それにリーシュちゃんとラグドラーグさんとサリアさん。

 シロとペイルは寝坊のようだ。


「おはよー!」

「おはようございます!」


 二人のことを考えていたらやってきた。


「何それ?何をもっているの?」

「お花!」

「持って帰ってプレゼントにしようかと思ったの!」


 それでわざわざ取りに行っていたのか。

 朝から元気だな。


「これで全員そろったな皆かたまってくれ」

「かたまったよー!」

「うむ。4人とも、よく頑張った。これからも危険性がある。気をつけるように」


 そういうとラグドラーグさんはワープの魔法を使い始めた。


「みなさん!ありがとうございましたー!」

「「ばいばーい!」」

「ええ、お疲れさまでした」

「さよならっすー!」


 みんなそれぞれお別れのあいさつをした。


「助かったわ、本当にありがとう」

「これからも何かあるかわからん。気をつけるんだぞ」

「ええ……!」


 こうして俺たちはラグドラーグさんの魔法で飛ばされた。

 飛ばされた先は俺の家の前だった。


「ジル!?それにシロとリーシュちゃんに……えっと」

「ペイルだよ!」

「人間になれたのか!」


 移動した先には父さんいた。

 そういえばペイルの人の姿は初めてだったっけ。


「父さんは何しているの?」

「朝の特訓をしていたんだ。こんなふうに、なっ!」

「あぶなっ!」


 木刀の代わりに木の棒を持っていた。

 その棒を俺めがけていきなり振ってきた。

 あぶないだろ!

 いきなり何なんだ!

 避けたけど避けなかったら当たる寸前のところで止まった。


「うん、修業はしっかりしていたみたいだな」

「いきなり試さないでよ!!」

「ごめんごめん、悪かった」


 ったくもー!

 心臓に悪いから本当にやめてくれ。

 俺たちはとりあえずと家の中へ入った。


「ママー!」

「あらシロ!それにジルにリーシュちゃんと……」

「ペイルだよ!」

「人の姿になれたのね!」


 家の中ではおいしそうなにおいが漂っていた。


「そういえば朝ご飯食べてなかったな」

「みんなおなかすいた?」

「「「「すいたー!」」」」

「それなら新しく作り足すわ!」


 その後、俺たちは朝ごはんを食べながらあったことを話した。

 休みの残りの数日間、俺たちはゆっくり過ごした。

 もちろん修行でやったことを忘れないように毎日やったことの復習をしていた。

 修行しているときもそうだったが、休んでいる間も時間がたつのが早く感じた。


 こうして俺たちの夏休みが終了した。




◆まとめ

 約10日にわたり、修業編を書きました。

 見直すのがめんどくさいという方、読み飛ばしたいという方は下を読めばある程度わかると思います。

 よってネタばれ注意です(この話まで全部読んでいたら大丈夫です)。




 ・ジル → 魔法なしでも攻撃を避けれるようになった。ある程度の速度でも避けれる。

 ・シロ&ペイル → ドラゴンの姿でも話せるように。今までやらなかったドラゴンの戦闘もある程度できるように。

 ・リーシュ → 使えなくなっていた魔法を使えるようになった。

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