第54話 再び学校へ!

 朝。

 ここ数日は家で過ごしていたため、早く起きなくても良かった。

 だが今日は学校へ戻る日。

 いつもより早く起きた。


「シロー。起きろ―」

「んー?」

「遅刻するぞー。ペイルも起きろ―」

「はー……い」

「リーシュちゃんは……」

「起きているわよ」


 さすがリーシュちゃん。

 時間がずれてもしっかり起きている。


「そういえばペイルくんはどうするの?」

「どうするって?」

「いや、さすがに人の姿のままではまずいでしょう。ずっと犬の姿だったのに」

「そうだった……」


 学校にいる間は犬の姿でみんなの前にいたんだ。

 でもペイルだけ置いていくのはなあ。


「そうだ!リーシュちゃんの時みたいにどうにかごまかせない?」

「……貸しひとつ」

「え?」

「貸しひとつならいいわよ」


 さすがに「はい、いいですよ」とはいかないか。

 でもペイルを置いていくのもかわいそうだし、貸しひとつで解決するなら安いでしょ。


「じゃあそれでお願い!」

「わかったわ。それなら先に学校へ行っているわよ」

「リーシュちゃんも使えるの?」

「当たり前じゃん!それぐらいなら使えるわよ!」


 それぐらいって……。

 結構難しいほうだと思うんだけど・


「じゃあ行ってくるわ。ジルくんの家族には申し訳ないけど」

「大丈夫だよ。俺から言っとくから」

「わかったわ。じゃあ、またあとでね」


 リーシュちゃんはひょいと飛んで行った。

 俺のとは違い、一人だけ飛んだから楽と言えば楽。

 でも詠唱とか何もなしに飛ぶのはズルすぎない?


「あれ?リーシュちゃんは?」

「起きたか。用があって先に行ったよ」

「えー!一緒に行きたかったのにー!」

「一緒にって……。どっちにしろ俺の魔法で行く気だろ?」

「うん!」


 ならどうせすぐ会えるよ。

 一緒に行ってもどうせ1、2分程度だし。


「んー……」

「お、やっとペイルも起きたか。さっさと起きて朝ご飯食べるぞー」

「はーい!」

「はーい……」


 二人も起きたことだし朝ごはんを食べに部屋を移動した。


「おはよう3人とも」

「おはよう母さん、父さんは?」

「今日はお仕事よ。もう行っちゃったわ」

「そうなのか。あと――」


 リーシュちゃんについて話しておいた。

 もちろんいろいろごまかして。


「そうなの。ジルはまた魔法ですぐに学校に行くのよね?」

「え?うん、そうだけど」

「ならお弁当を用意するから向こうで渡してもらえる?」

「わかった!」


 なんかもう俺が魔法であっちこっち行くのが普通のように言われた気分。

 まあ、そうだけどさ……。


「とりあえずご飯にしましょう。そのあと準備すれば間に合うわ」

「「「はーい!」」」


 俺たちは朝ごはんを食べた。

 その後に準備。

 なぜ当日にしたかというと、ただ単にさぼっていたため。

 当日にならないとやる気でない時ってあるじゃん……。


「よし!準備おっけー!」

「シロもー!」

「僕もー!」

「じゃあ行こうか!」


 なんとか準備が終わった。

 忘れ物は、たぶんない!


「ジル、たまには顔を見せてね?魔法があるんだから暇なときに戻ってきてもいいのよ?」

「あ、うん。わかった」


 そんなひょいひょい戻ってきたら他の人はどうなんだよ……。

 自分ひとりだけだとなんだか気が引ける。


「じゃあ行ってきまーす!」

「「行ってきまーす!!」」

「行ってらっしゃい。気をつけるのよ!」


 荷物を持って外に出る。

 問題は移動先のほうだけど、前に使った場所でいいか。


「じゃあ離れるなよー」

「「はーい!」」

転移ワープ!」


 これから何回も使うだろうと思い、詠唱なしまで頑張った。

 もうほんと、移動の時に使われるな。

 他の人には黙っておこう。

 何か言われたりするのもめんどくさいし。


「とーちゃくっと」

「もう目の前にある!」

「あっ!走っていくなよ!」


 シロが走り出すとつられてペイルも走り出した。

 そこまでうれしかったのか。

 でもいきなり走っていくのは俺的につらいよ……。


「あれ?ジル?」

「ガウじゃん!久しぶり!ってなにそのおでこのケガ!?」


 久しぶりにガウをみた。

 だけど額に大きな切られたようなキズがあった。


「ああ、ちょっと練習中にな。他はいないの?」

「シロたちがいたんだけど……。先に行っちゃったよ」

「たち?」

「いや!なんでもないよ!」


 そういえばガウはペイルのこと人の姿で知らないんだった。


「とりあえず先に入っちゃおう!」

「ん?ああ、わかった」


 とにかく話をそらさないと!

 俺は一足早く学校のほうへと向かった。

 後ろからガウが付いてきた。


「おーい!少しゆっくり歩こうよ!」

「なんでー?」

「なんでーって、歩き疲れたから――」


 そこで言葉が途切れた。

 どうしたんだ?

 不思議に思って後ろを振り向くと、ボーっとした感じで突っ立っていた。


「おーい、大丈夫か?ガウ」

「……」

「どうなってるんだ?」


 起きているが意識はない。

 一体どうなっているんだ?


「ただ記憶をいじっているだけよ」

「リーシュちゃん!どういうこと?」

「どういうこともなにも、ペイルくんについてよ」

「何もみんなの記憶をいじらなくても……」

「元々『ペイル』という名前は犬の姿で呼んでいたのよ。いきなり人の姿で『ペイルです』と言って犬のほうが消えたら驚くでしょ?」

「まあ、確かに」


 新しく編入だけではなく、そこまでしてくれたのか。

 意外と頼まれたら責任もって全部やってくれる。


「ごめんね、よく知らずに言っちゃって」

「いいのよ。あと少しぐらいすればガウくんは動き出すわよ」

「リーシュちゃんはどこかいくの?」

「いきなり私がここにいたらガウくんが驚くでしょ?くる人を見るために姿を隠すのよ」


 めちゃくちゃ責任持ってやってくれるじゃないですか。

 軽い気持ちで「リーシュちゃんならできる」と思って頼んだ俺が悪いみたいじゃないか。

 これで貸しひとつなんて、安すぎたな……。

 なにか今度おごろう。


「あれ?オレ、今なにがあった?」

「いや?少しボーっとしてたんじゃないのか?ほら、さっさといこう」

「お、おう」


 前まで使っていた部屋に向かって歩いた。

 部屋についてまずやること。

 久しぶりの部屋掃除だった。

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