第52話 修行終了 前篇

 どこだ?

 泡のせいで見えない。

 そのために覚えたこの魔法だ!


範囲探索サーチ!」


 これは今まで覚えた熱、第三の眼サードアイや聴覚などを合わせた魔法。

 言葉では言いづらいけど使ってる人にはゲームのレーダー見ているようにわかる。


「ここだ!」

「いいですね、また避けれていますよ」


 これで9連続。

 10連続避けれれば合格と言われた。

 あと1回。


「……下!あぶなっ!?」

「不意を突いたつもりですが、避けれましたか」

「やったー!これで合格だー!!」


 今ので10連続!

 これで合格だ!


「よくできました。ここで教えることの最低限は終わりました」

「え?これで終わりなの?」

「あくまでも最低限です。他の人が終わるまで別で用意した修行をしましょう」


 あとはシロとペイルとリーシュちゃん待ちか。

 というと俺が一番最初にクリア?


「みんなの状況ってわかります?」

「そうですね、昨日聞いた限りだとみんな今日か明日ぐらいに終わると思いますよ」

「なーんだ、タッチの差か……」


「一緒にいられる時間も少ないです。最後まで頑張りましょう」

「はい!」

「では移動します。ついてきてください」


 場所は森。

 少し開けているところだ。


「ここで何をするの?」

「今までは人の姿での練習でした」

「というと?」

「次はこの姿での練習です」


 クーリアさんはドラゴンの姿へとなった。

 やっぱりシロとペイルよりでかいなあ。

 絵を描いたのが懐かしく感じる。


「ま、まさかその状態で全力で……?」

「全力は出しません。あくまでも自分よりはるかに大きなものと戦う場面です」

「じゃあドラゴン対策ってわけじゃないってことですか」

「そうですよ」


 よかったー。

 まさか今後ドラゴンと戦うからとか言われたらどうしようかと。

 大好きなドラゴンを倒すなんて変なことだしな。


「さすがにここからは骨折レベルのけがが多くなります」

「うげえ、嫌だなあ」

「もちろんそんなことをさせたら私が怒られます。それにジルくんにそんなことできないし……」

「え?」

「なんでもないです。それで魔法をかけておきます」

「そうすれば骨折はしない?」

「ええ、しませんよ。ただ受けてばっかりではだめですよ」


 それならよかった。

 骨折なんてしたくないからなあ。

 そもそもしたことすらない。

 剣は刺さったことあるけど。


「ではかけますよ。防護鎧プロテクション・アーマー


 目には見えないけど、はっきりわかる。

 重さがない鎧を着ているみたい。

 重さがないのにわかるってすごいけど。


「どれぐらい頑丈なの?」

「けっこう頑丈ですよ。それに衝撃も軽減してくれます。受けてみますか?」

「優しめでちょっと」


 そう答えると尻尾で吹き飛ばされた。

 今の全力じゃない!?

 いつのまにか吹っ飛ばされたんだけど!


「あれ?でもそこまで痛くない」

「衝撃も軽減されていますからね」

「痛いには痛いけど、これなら今までと変わらないぐらいだ!」


 今まで何回も攻撃が当たっていた。

 そのおかげか、ある程度の痛さなら全然大丈夫になった。


「今のように攻撃してくる敵がでてくることがあります」

「それって卒業して、冒険者になってからの話しじゃ?」

「……でも覚えといて損はありませんよ?」


 あ、やっぱり今でなくてもいいんだね。

 でもまあ、わざわざ用意してくれたんだ。


「わかりました。よければいいんですか?」

「ええ。ただし、反撃もしてきてください。そうしないと今まで何のために避けてきたか意味がなくなってしまうので」

「反撃しても大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。さっき自分自身にも魔法をかけましたから」


 準備はえぇ。

 やる気満々じゃん。


「ではいきますよ!」

「いたっ!速すぎるよ!」

「そうですか?でも今までもそうでしたと思いますが」

「上がり幅が違いすぎる!」


 今までは車の速さだったとする。

 今度は新幹線レベルだよ?

 間の電車級を飛ばさないでくれ!


 そんなことを考えているとき、大きな地震が起きた。


「なに!?」

「わかりません、ですが魔法の気配がします。少し行ってきます」

「俺も連れて行って!」

「わかりました。ただし絶対に離れないでください」


 クーリアさんは俺を乗せると、その魔法の気配のほうへ飛んで行った。

 ついた場所は木々がなくてすこし広い場所。

 そこには2人の人影があった。


「ジルくん?」

「ってリーシュちゃんじゃん、それにラグドラーグさん」

「師匠!さきほどの魔法は一体」

「この子の魔法だ。ようやく元の力を手に入れたから試しに使ってみたようだ」

「ジルくん聞いてよ!魂を分裂させたから今までの魔法が使えないと思ったんだけど、結局は両方とも自分が持っているから関係なくて――」

「落ち着いてリーシュちゃん!全然話しについていけないから!」

「えっと、説明をすると」


 何を言っているのか全然わからないけど、魂を分けると今までの魔法が使えるようになったと。

 分裂させたから使えないと思っていた魔法が使えた。

 分けても自分のものだから足りなかったら他から取りよせばいいってことらしい。

 いきなりこんなことを話されても全然わからん。


「簡単に言うと2Lのコップだと入口に入らないけど、1Lのコップ2つ順番に並べれば入口に入る感じよ」

「あー、何となくわかったような気がするよ」

「よかったわ!分裂の魔法が使えなかったらずっと使えないままだったのね」


 うれしいのはわかるけど、あれを試しに使う魔法じゃないだろう。

 結構揺れたぞ?


「何があったんすかー?」

「なになにー?何があったの―?」

「すごい揺れたー!」

「シロ!それにペイルも」

「ジルだー!」

「お兄ちゃんなんでここに?」

「同じ理由だよ。揺れた原因がこっちだったみたいだから来たんだ」


 ドラゴンの姿で3人とも来た。

 これで全員集合というわけか。


「ちょっとまって、シロちゃんしゃべれたっけ?」

「何を言っているのリーシュちゃん。今まで話していたじゃん」

「そうじゃなくて、ドラゴンの姿でってことよ」


 そういえば俺はラグドラーグさんからもらったものをつけているからわかっていた。

 でもリーシュちゃんはつけていない。

 ということは本当に話せるようになったってこと?


「すごいじゃないか、シロ!」

「えへへー」

「僕もー!」

「ちょっ、二人とも。今の姿を考えて!俺がつぶれる!」


 二人ともドラゴンの姿を忘れているのか、二人して俺に近づいてきた。

 二人して俺になでてもらおうと、頭をこっちに近づけようとしているけど危険だからそれ。


「ごほん。楽しむのはいいが、皆修業はどうした?」

「すみません師匠。すぐ戻ります」

「うわっ!ちょっ!?」

「ほらいくっすよー」

「「はーい!!」」


 俺はクーリアさんにガシッと掴まれた。

 けっこうガッシリ掴まれているから痛い。

 俺もシロとペイルみたいにノコノコ帰りたかった……。

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