第3話 ロリコンでないよ?

「え?だれ?」

「ガーンッ!」


 あ、それ口で言うのか。

 面白い子だな。

 って本当に誰?


「シロはシロだよ!」

「シロはドラゴンだけど…」

「人間の姿になれたの!!」


 なんてこった。

 契約するとこんなことになるの?


「初めて見たなこんな例」

「やっぱないんだね」


 父さんがいないと思ったら服を取りに行っていた。

 そりゃそうだよね。

 すっぽんぽんだもん。


 だとしたらなんでだろう?

 シロがドラゴンだから?


(それは私がやったからだよ)

(リーシュさんが!?)

(だってガウガウばっかりだと何いているかわからないだもの)


 そりゃ俺もわからなかったよ。

 正直表情と声色で話していたし。

 でもドラゴンの姿には戻れないのかな?


(ドラゴンには戻れないの?)

(私がそんなミスするわけないじゃない。もちろん戻れる魔法があるわ)

(おお!さすがです!)


「シロ、ためしにドラゴンの姿に戻ってみてくれない?」

「やってみる!」


「元に戻れ―!!」


 それ魔法なのか?

 でも契約の時みたいに光りだした。


「ガウー!!」

「あ、戻った」


 普通に戻れていた。

 服も一緒に消えた。

 もしかしてまたすっぽんぽん?


「もう1回人の姿になれる?」

「ガウ!!」


 決して裸をみたいわけじゃないよ?

 ただ気になっただけだからね?


「ガウーー!!!」


 また光りだした。

 だんだん形が小さくなってきた。


「じゃん!!」

「おおぉぉ!」


 服は着てた。

 さっき消えた時のが保存されていたのか?

 決して、決して残念じゃないよ?

 でも期待は少しあったけど。


「シロ、何か体に異変とかない?」

「ないよ!ごはんも食べたしお腹いっぱいだし!」

「ハハッ!まるで娘ができたみたいだ」


 年齢的には俺と同じぐらい。

 生まれて一年ぐらいなはずなんだけど。

 ドラゴンは成長とか早いらしい。


「そうなるとシロと一緒に学校へ行けそうだな」

「契約してもダメだったの?」

「ジル、この際だから言っとくとね」


 ドラゴンは人類の敵わない生物の一種。

 過去の英雄で倒した人もいたけどそれは例外とのこと。

 子供だけではなく大人でも漏らすぐらいの恐怖。


「たまたま卵から産まれて懐いたからよかったけどね」

「シロは怖くないのに」

「ねー!」


 君の話だよ?

 卵を持って帰った俺も俺だし。

 しかも頼んだ俺だしな。


「じゃあ家に入ろうか。お母さんにも言わないといけないし」

「「はーい!」」


*


「「「ただいまー!」」」

「お帰りみんな。あら?この子は?」

「シロだよ!」

「え?」


 母さん驚き。

 ドラゴンだったもんね。


*


「じゃあ契約をしたら人間になったの?」

「そうだね。初めて見たよ」

「なんでだろうねぇ」

「シロがジルと話したいと思ったからだよ!」


 まあ本当はリーシュさんのおかげなんだけどね。

 神様だから話せないけど。

 ごめん!みんな。


「まあこれでジルも心置きなく学校へ行けるだろう」

「そうね。そこはよかったわ」

「でも通うんだからそこまで心配しなくてもいいんじゃないの?」

「言ってなかったっけ?学校は寮生、家からじゃなくて学校で生活をするんだよ」


 初耳だね。

 完全寮生とかはないけど大学は一人暮らしだった。

 そこまで寂しくはないと思ったけどこの生活。

 実家を離れたことを思い出すなあ。


 それにしても向こうの両親はどうしてるんだろう。

 今更ではなくちょくちょく気になっていた。

 リーシュさんに話したら大丈夫とは言っていたけど。


「?ジル、どうかしたの?」

「ん?いや、大丈夫だよ」


 今は今、昔は昔。

 もう戻れない世界だ。

 この際、忘れよう。


「じゃあジルとシロには学校へ行ってもらう話だけど」

「俺はいいよ」

「ジルが行くならシロもいく―!」

「そうか」


 喜んでるし少し悲しんでいる。

 やっぱ子供と離れるのは寂しいよね。

 俺も父さんと母さんと離れるのは寂しい。


「まあ学校が始まるまでまだ時間がある」

「それまで楽しみましょう!」


*


 翌朝。

 いつもと違い隣にシロがいる。

 人間の姿だと可愛いなあ。

 寝顔もずっと見てられる。


「んんん~」

「ん?」


 寝ぼけているのか?

 腕に引っ付いてきた。


「ん~~アー」

「え?」

「ンッ!!」

「いってぇーーー!!!」


 噛まれた。

 甘噛みとかじゃなくて普通に。

 朝からハードだなこれ。


「「おはよー」」

「おはよう二人とも」

「おはよう。もう朝ごはん出来るわよ」

「「はーい」」


*


「ジル、シロと一緒に学校に向けて魔法の練習をしてみたらどうだ?」

「練習?」

「そう。どっちにしろジルはまた魔法の練習するんだろう?それならドラゴンのシロにも教えてみたらどうだ?」

「ジルー!教えてー!」


 案外とシロもノリノリ。

 俺は魔法についてずっと自分で調べている。

 父さんが軍の隊長とあって、魔法関係の本を借りてもらっている。


「それとシロにいろいろ教えてやってくれないか?」

「父さんは今日仕事なの?」

「ああ。ちょっと呼ばれてね」


 呼ばれたってことは打合せとかなのかな。

 隊長だと大変そうだなあ。


*


「じゃあジル。シロを頼むよ。シロもジルと仲良くな」

「「「いってらっしゃーい!」」」

「さっ!お掃除するからジルはシロをお願いね?」

「はーい」

「ジルー!早くいこー!」


「ジルー。なにするのー?」

「そうだね。まずは学校に行くからやってはいけないことを覚えてほしいかな」

「たとえばー?」


 シロには人間の生活について教えた。

 いつもは外にいたから人間に関してはそこまでわかっていなかっただろうし。

 唯一の救いは人語を話せたこと。

 リーシュさんが何を言っているのか分からないとも言っていたしな。


 教えるのに丸一日かかった。

 まあ今まで何も知らなかったんだから早い方でしょ。

 俺の話を興味津々に聞いてくれたのもあるのかな。


「そういえばシロは魔法使えるの?」

「もちろん!だってわたしドラゴンだからね!」


 胸を張って言っている。

 胸はないけど。


「ジル…何かしつれいなこと考えてない?」

「い、いや別に?」

「…ほんとにー?」


 視線が痛い。

 こういうことは無駄に鋭いな。


「ちなみにどういう魔法を使えるの?」

「それじゃあ見ててよ!」

「ん?おう」


 自信満々に声を出す。

 ん?

 何か嫌な予感がしてきた。


「じゃあいくよ!ンー!」

「あ!加減を――」


「ガアアァァァァ!!!!」


 やっちまったー!

 さすがドラゴン。

 威力が半端ない。


 なんて言ってる場合じゃねぇよ!

 目の前ほとんど焼け野原じゃねぇか!


 これはまた新しく教えないといけないな。

 その笑顔は本当に叱りづらいなあ。

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