ある日のラジオ参観③

理香「私と奏絵さんにはある共通点があったの」

奏絵「理香さんと私に共通点なんてありますか? ……性別?」

理香「そんなことじゃないわ」

奏絵「誕生日も近くないし、血液型も確か違うし……」

理香「家事ができないの」

奏絵「……」

理香「料理も、洗濯も、掃除もポンコツなの」

奏絵「……」

理香「だから私はずーっと家政婦さんに頼りっぱなしだった。けど、二人はそういうわけにはいかないわよね」

奏絵「……最近は成果出てきましたよ、ね?」

理香「そう、料理は特訓の成果もあり徐々に食べられるようになったの」

奏絵「ま、まぁその評価は特訓の割にどうなのって感じですが、改善されています」

理香「でも、実は料理だけじゃないのよね。全体的にガサツ」

奏絵「…………」

理香「意外とそこらへんは稀莉の方が几帳面なのよねー」

奏絵「共有スペースは気を付けてます。でも私の部屋は確かに汚いです……ごめんなさい!」

理香「私も人のこと言えないからとやかく言わないけど、奏絵さんの母親からも『あの子は新婚生活大丈夫でしょうか……』と相談が来たこともあったわ」

奏絵「うちの母親! 怖い、親同士の連絡怖い!」

理香「だから、うちの家政婦に調査させ、事細かに報告をもらったの。評価はD」

奏絵「うぎゃあああ」

理香「大丈夫、五段階評価だから下から2番目よ」

奏絵「何の慰めにもなってないー! ……家事は忙しいはずの稀莉さんに大変お世話になっております。ごめんなさい」

理香「そう、逆にやる気出しているのよね。こないだも母の日だからって作ったお菓子持ってきてびっくりしたわ」

奏絵「そうなんですよね……、稀莉ちゃんの料理スキルが私をすぐに追い抜いたんですよね……」


理香「稀莉は言ってないだろうけど、実家にいた時から家政婦さんに習っていたのよね」

奏絵「そうなんですか!?」

理香「一緒に生活するために、あの子なりに準備していたのね~。けっこう失敗もしていたのよ? そういう所は見せず、本当に健気なんだから」

奏絵「うわーめっちゃ可愛いですね。今凄くキュンキュンときています」

理香「家に帰ったら抱きしめてあげて」

奏絵「はい! ……って、しませんよ!? 抱きしめませんよ!?」

理香「そう言いながらも家に帰ると、真っ先に稀莉を抱きしめる吉岡奏絵なのであった」

奏絵「事実っぽくしないでください!? フリとかじゃないですよ!? まだ病み上がりなので、そんなにベタベタできません」

理香「まだ、ね」

奏絵「う~……」



 × × ×


奏絵「フリートークで花咲かせすぎですが、ここでコーナーもやっていきましょう」


理香「よしおかんに報告だー!」


奏絵「このコーナーでは、リスナーの相談や私たちに関する報告など、おたよりなら何でもありの、ふつおたのコーナーです。今日は理香さんにタイトルコールしてもらいました。こんなこと二度とありません」

理香「稀莉が手紙を破るコーナーよね?」

奏絵「間違ってないけど、違います! 普通、おたよりを破りません!」


理香「せっかくなので私が読みます。ラジオネーム『嗚呼同志よ』さんからです。

『よしおかん、稀莉ちゃん、こんにちはー』。理香でごめんね」

奏絵「いえいえ、大丈夫ですよ! リスナーもそんな予測できません」

理香「『運命の人に巡り合えた二人に聞きたいのですが、僕に出会い方を教えてください。親友からは、結婚した友達に紹介してもらうのが1番と言われるのですが、類は友を呼ぶと言わんばかりに、周りの人は誰も結婚をしていません。もう異性に出会うより、異世界に旅立つ方法が知りたいです……。どうかよろしくお願いします』」


奏絵「いやー私に聞かれても~。これは理香さんの方が詳しいですかね?」

理香「うーん、どうかしら。私も旦那とは現場で出会ってなので、普通とは違うでしょ?」

奏絵「ですよねー」

理香「でも、結婚した友達に紹介してもらうのは間違ってないわ。結婚をした人、特に新婚は余裕できて、幸せを分けてあげたいぐらい気前がいいの。相談すれば、かなりの頻度で紹介してもらえるわよ。といっても、撮影現場のスタッフが話していたことなので実体験じゃないけど」

奏絵「友人の紹介で結婚って人多いですよね」

理香「それってだいたい合コンってことよ、奏絵さん」

奏絵「そうなんですか!? 友人の紹介は間違ってないけど……」

理香「合コンで出会いましたー! とは言いづらいのね」

奏絵「ですね」


理香「合コンではなく、純粋に紹介だと『あいつの奥さんの知り合いなら……』って安心感もあるのかしら」

奏絵「相当変な人はこなそうですもんね。でも合う、合わないは多そう」

理香「それは仕方ないことよ。奏絵さんは合う人に出会えてよかったわね」

奏絵「そうですね、幸せです」

理香「あら、素直」

奏絵「もう取り繕うのを辞めました……。はい、吉岡奏絵は幸せでーす、どやっ」

理香「威勢いいわね。で、この人への答えは?」

奏絵「……いつか出会えるー!」

理香「根拠のない回答でした~」

奏絵「わからないですよ、一般の出会い方とか知らないです! 出会いは人それぞれ」

理香「思わぬところにあるかもしれないわ。ともかく行動しましょう」

奏絵「理香さんに言われると説得力が違う!」



 × × ×


奏絵「そろそろ番組終了のお時間です。どうでしたか、理香さん」

理香「あっという間です。まだまだ喋り足りないわ」

奏絵「私はお腹いっぱいです。ありがとうございます、しめましょう」

理香「何でそんなに早く終わらせたいの?」

奏絵「心が持たないからです」

理香「これを聞いた稀莉はどういう反応をするのか楽しみね」

奏絵「私は胃が痛くて、この回お蔵入りしてくれないか願っています……。でも、理香さんの仕事の話や、知らなかった稀莉ちゃんの話を聞けたのは凄く良かったです」

理香「よかったわ、ためになれたのね」

奏絵「ええ! 今日は突然の依頼にも関わらず、お越しいだたき本当にありがとうございました!」

理香「今日の感想は番組宛にどしどし送ってくださいね。私もリスナーとして感想楽しみにしています」

奏絵「それを稀莉ちゃんが読む地獄絵図……。頑張れ、未来の私!」



奏絵「ここまでのお相手は、吉岡奏絵と」

理香「ゲストの佐久間理香でした」


奏絵・理香「「これっきりじゃなーい!」」


理香「またきまーす☆」

奏絵「これっきりにしてくださーーーーーい!!!」

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