第41章 君を待っている②
***
稀莉「よしおかん30歳記念スペシャル、ひとつめ!」
奏絵「ひとつめって何個あるの?」
稀莉「よしおかんの30年を振り返ろうクイズ!」
奏絵「華麗にスルーって、30年を振り返る??」
稀莉「よしおかんの30年の歴史にまつわるクイズに答えてもらいます。自分のことだからわかって当然。正解前提のお誕生日企画よ。正解するごとに番組スタッフが用意したプレゼントが当たります」
奏絵「プレゼント……! やる気出てきたよ。自分のことならわかるし、全部貰っちゃうよ!」
稀莉「さぁよしおかんは自分のことをどれだけわかっているのか。それでは始めていくわよ。アタックサンジュウ!」
奏絵「その掛け声はやめてー」
稀莉「吉岡奏絵さんは青森の雪解けの季節、春に生まれました。体重3,200」
奏絵「細かい、細かい! それにその情報はどこから!?」
稀莉「そりゃよしおかんの両親に」
奏絵「番組スタッフやりやがったな!」
稀莉「私がやりました」
奏絵「お前かい! え、両親が協力したクイズって、え、え?」
稀莉「続けるわよ。赤ん坊の時のことはさすがにクイズにしてないわ。よしおかんは幼稚園の頃のお遊戯会で『竹取物語』を演じました。かぐや姫……ではなく、何故か求婚者側の役を男子と混じって演じました。この頃から何でも演じる『声優』という役者の片鱗が見られますね。さて求婚者側の役を演じたよしおかんですが、かぐや姫に『何のお宝』を取ってきたら結婚してもいいと言われたでしょう」
奏絵「むずっ! 幼稚園の頃のお遊戯会なんて覚えているか!」
稀莉「わからなくても5個のお宝のうちの1つでしょ? 1/5よ1/5」
奏絵「いや……、1個も浮かばないんだけど……」
稀莉「お話にならない……、もう何でもいいから」
奏絵「玉手箱!」
稀莉「それは浦島太郎でしょ」
奏絵「もしかしたら設定がリンクしているのかもしれない。それに賭けた」
稀莉「してない、してない」
奏絵「一問目から難しすぎるよ~。今日は私の誕生日回なんだからもっと優しく」
稀莉「正解は『龍の頸の玉』でした」
奏絵「わかるわけないー!」
稀莉「……うん、ちょっと意地悪ね。あ、当時のよしおかんの写真だそうです。待って、カワイイ、超絶カワイイ。皆、みて、この写真!」
奏絵「みえないみえない、ラジオだから」
稀莉「SNSに」
奏絵「載せるか!」
稀莉「は~カワイイ。髪短くて、ちょっと少年っぽさもあるけど、目元はやっぱり女の子で、持ち帰って育てたい。私が全力で甘やかしたい。頭なでなでしたい。追いかけっこしたい。ふふ、お姉ちゃん捕まっちゃった。かなちゃん足が速いね、えらいえらい。一緒にアイスクリーム食べようか」
奏絵「おーい、稀莉ちゃん帰ってこいー」
稀莉「切り替えて2問目。は? もう幼稚園エピソード終わりなの!? 小さい頃のかなちゃんをもっと堪能するの!」
奏絵「切り替え、切り替え」
稀莉「もう高校生の問題なんだけど! よしおかんの小学、中学時代は黒歴史なの!?」
奏絵「そんなことはない……はずだけどな。陸上もしてたし、勉強もそこそこだったし」
稀莉「ふーん、要はふつうだったのね」
奏絵「ふつうが1番!」
稀莉「高校2年生のよしおかんが修学旅行で行った場所は」
奏絵「京都!」
稀莉「そう、京都ですが」
奏絵「まだ続きが!?」
稀莉「問題は最後まで聞きましょう。早押しじゃないし、一人しか回答者いないわ。よしおかんの修学旅行の行先は京都ですが、グループ行動の時にあることをやらかしました。それは何でしょう」
奏絵「そんなプライベートな質問がどうして出てくるの?」
稀莉「青森からの協力者です」
奏絵「くっ、同級生まで巻き込んで……」
稀莉「30歳記念ですから」
奏絵「そんなことに気合入れなくていい!」
稀莉「何回か間違えていいから答えなさい~」
奏絵「八つ橋食べすぎた」
稀莉「ぶー」
奏絵「
稀莉「ぶー、そんなことしたらここにいないわ」
奏絵「せっかくの京都旅行なのに昼飯はマックを食べた」
稀莉「ぶー、いや正解かどうかわからないけど、そんなことしてないよわね?」
奏絵「でも何を食べたか特に記憶ないんだよな……。青森でもさすがにマックはあったのでそんなことしてないと思うけど」
稀莉「ヒントは、京都なら仕方がないかと思えること」
奏絵「小麦粉を顔に塗って、舞妓さんの真似して京都をまわった」
稀莉「高校生よ!?」
奏絵「えーっとじゃあ迷子になった?」
稀莉「うーん、まぁいいか、正解。正確な答えは、何故か自信満々にグループを先導し、地図を逆に読んで真反対に進み、ホテルの集合時刻に遅れ、夕飯に遅れて登場した、でした」
奏絵「私、厄介! って細かすぎでしょ。思い出した、確かにそんなことあった。京都って碁盤の目になっているから上下左右がわからなくなるんだよね。初見の学生には厳しい」
稀莉「そうなのね~」
奏絵「あれ、稀莉ちゃんは修学旅行で京都行かなかった?」
稀莉「ちょうど仕事が入って……」
奏絵「あー……」
稀莉「修学旅行後の旅行話で盛り上がるクラスは地獄だったわ。ありがたいことにお土産はもらえたけど、現地での思い出には敵わない。その後に仕事で訪れたこともあったけど、観光もろくにできなかったし、京都のことはほとんど知らない」
奏絵「ぐすん、稀莉ちゃんにそんな悲しい過去が。稀莉ちゃん、今度行こう。私と行こう。このご時勢で今は行けないけど、落ち着いたら絶対だよ」
稀莉「奏絵……、ありがとう。嬉しい。あ? 何、構成作家? いいところなのよ。はい? いちゃつくのは家でやれって?? はい???」
奏絵「そうだ、プレゼント! 当たったからプレゼントは!」
稀莉「こちらです~」
奏絵「お、このサイズはもしやお金?」
稀莉「現金支給はしないでしょ」
奏絵「包装紙破っていいよね?」
稀莉「もちろん」
奏絵「え、もしかしてこの流れは来ちゃう? 京都の話をしたから旅行券来ちゃうの? さすが30歳記念! お、これはりょこ……お米券かい!!」
稀莉「スタッフ、京都旅行券に替えて!」
奏絵「お米、お米大事。嬉しいけどさ、駆け出しの新人の頃だったら泣いて喜んでいたけどさ、もう30歳だよ、30。お米もちゃんと買えるようになったよ!」
稀莉「成長したのね、よしおかん」
奏絵「おかげさまでね!」
× × ×
稀莉「結局、クイズの正解は5問中1問」
奏絵「難しすぎでしょ!? なんで本気出しているの? 大学の卒論のページ数とか覚えているわけないじゃん! 8年近く前だよ! 5番目に受けたオーデイションは?って落ちたのは記憶からできるだけ消去するようにしているから覚えてないよ! せめて5個目の役とかならまだわかるけどさ!」
稀莉「荒ぶるよしおかんは置いといて、次にいくよ」
奏絵「私の誕生日回!」
稀莉「よしおかんの好きなところ、30個言おうー!」
奏絵「うん?」
稀莉「30個言います」
奏絵「リスナーからアンケートでもとったの?」
稀莉「いいえ、私が勝手に言います」
奏絵「低予算!」
稀莉「いくわよ、しっかりと聞きなさい」
奏絵「いや、恥ずかしくて逃げ出したい!」
稀莉「私に優しい、綺麗、カワイイ、背が私より高い、声が素敵、歌声がすごい、けっこう緊張するところ、優柔不断なのにときに大胆、お風呂でまずは左手から洗うところ、髪の毛、安心するにおい、私より少し大きな手、太もも、腰、鎖骨、アドリブ力、酒のみ、私にメロメロなところ、大雑把、なんだかんだ真面目、集中力、トークスキル、笑顔、唇の柔らかさ、意外と体力あるところ、大人になっても子供心を忘れないところ、一緒にいて楽しいところ、寝顔、なんだかんだで許してくれるところ、よく笑うところ」
奏絵「待って、NGワードが何個かあるから!」
稀莉「30歳記念なので」
奏絵「許されないよ!?」
稀莉「3つ目は歌です。バースデーソングを色々な声優さんに協力してもらいました」
奏絵「次進めないで!?」
稀莉「今日は盛り沢山なので無視です。個人個人で収録した声を合わせ、一曲にしました。せっかくつくったのでSNSであとで貼るそうです。ではいきましょう」
奏絵「何なの今日は!?」
『よしおかん、30~。よしおかん、30~。
Happy birthday Dear 30~。Happy birthday かなーえ。
青森~出身~。すてきーな、こーえ。
Happy birthday Dear 30~。笑顔が、カワイイー。
おもしろいラジオ―。これからもききたいー。
Happy birthday Dear 30~。よしおかん、おめでとー』
稀莉「どうでしたか?」
奏絵「いじめか!? いじめなのか!? う、嬉しいけどさ!」
稀莉「30人の声優さんにご協力いただきました。皆さま、ありがとうございました」
奏絵「そ、そんなに!? 同期から、え、あの大御所声優さんまで!?!?」
稀莉「30歳記念ですから」
奏絵「本当、何なんだ今回は!」
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