Interlude

Interlude ―言葉にあふれている―

 どんなに遠くに行ったって、君は私をみつける。

 でもこんなに早く見つかるなんて思っていなかった。

 誰がばらしたのだろうか。事務所、両親、牧野さん? でも誰だっていい。彼女がそこにいた。


「奏絵」


 彼女が私の名前を呼ぶ。

 久しぶりに聞いた自分の名前に耳が嬉しさを覚える。


「……」


 怒っているようにも見えるし、今にも泣きそうにも見える。けど彼女は笑っていた。


「何かいいなさいよ」

「……」


 やっぱり怒っている気もするけど。

 君と会えて、嬉しかった。そんな気持ちが1番だ。私から離れたが、やっぱり彼女に会えると嬉しくて鼓動は加速しざわめていた。何度だって追いかけてくれる。私をみつけてくれる。降参だ。一生かけても稀莉ちゃんから逃げられないだろう。

 でもだからこそ今回だけは見つけて欲しくなかった。わざわざ飛行機まで使って、船まで使って遠くまで来たのに、彼女はやってきた。やってきてしまった。


「何か言ってよ。話してよ、奏絵」

「……」


 訴える彼女の目に涙が光った。

 私だって話したい。今すぐ、言葉にしたい。心から生まれる言葉はこんなにも溢れ、空を埋め尽くしている。

 けど、それはできない。


「奏絵、あなた……」


 何も言わない私に彼女が気づく。

 黙っている私の事実を彼女が知ってしまう。

 唇を震わせ、彼女が答え合わせをした。


「……喋れないの?」


 私は苦笑いを浮かべ、指で丸をつくった。

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