ある日のラジオ参観①
*****
奏絵「……どうも、吉岡奏絵です。今週のこれっきりラジオが始まりました」
奏絵「テンション低いって言わないで、植島さん! 今日はめちゃくちゃ緊張しているの! 前代未聞だよ!」
奏絵「残念なことに今日は稀莉ちゃんがインフルエンザでラジオお休みです。すでに熱は下がっていますが、うつす心配もあるので家でゆっくりしてもらっています」
奏絵「その代わりに、とんでもないゲストが来てくれました……、ではどうぞ」
理香「これっきりラジオのリスナーさん、こんにちは~。佐久間稀莉の母、佐久間理香で~す☆」
奏絵「わー、お越しいただきありがとうございます!」
理香「稀莉の代わりに来ちゃいました」
奏絵「いやーもうー、今日の私はどんなテンションでお送りすればいいのでしょうか! 相方の母親がゲスト出演するなんて、びっくりですよ。理香さん、よくオファー受けてくれましたね」
理香「これっきりリスナーなんで、一度出演してみたかったの」
奏絵「大変ありがたいことに、理香さんは毎週欠かさずにこれっきりラジオを聞いてくれているとのことです……。本当、私はどんな顔でお送りしていけばいいのでしょうか」
理香「笑えばいいと思うよ」
奏絵「笑えないですよ!」
理香「せっかくなので、楽しくいきましょ。いえーい、稀莉聞いている~?」
奏絵「稀莉ちゃんがラジオの前できっと怒っている! ……稀莉ちゃんには理香さんが出演することは黙っているんですよね。代わりのゲストが来ることだけ伝えています。後が怖い……」
理香「今日は稀莉の恥ずかしいエピソードや、二人の仲つつまじい様子をリスナーにお届けするわよ♪」
奏絵「稀莉ちゃんだけでなく、私にも被害がー」
理香「今日は相方なので、奏絵さんのことを『よしおかん』呼びしていいのかしら」
奏絵「植島さんOK出さないで~!」
理香「よしおかん、頑張りましょう」
奏絵「理香さん、悪ノリしないでください~」
理香「相方なので呼び捨てでしょ? ほら、理香って」
奏絵「勘弁してくださいー! 私は理香さんって呼んで、理香さんは奏絵さんって呼んでください!」
理香「えー」
奏絵「始めましょう、始めていきましょう!」
奏絵「吉岡奏絵と」
理香「佐久間理香の、一度だけの特別回」
奏絵・理香「これっきりラジオ~」
奏絵「……本当にこれっきりにしてほしいですね」
× × ×
奏絵「改めてゲストの紹介です。本日は稀莉ちゃんのお休みの代わりに、佐久間理香さんがゲストで来てくれています」
理香「はーい、佐久間理香だよー」
奏絵「めっちゃフレンドリー! これっきりラジオに来たのはもちろん初めてですが、ラジオ番組自体のゲスト出演はこれが初めてではないですよね?」
理香「ええ。今でもちょくちょく出ますよ。昔はラジオ番組を持っていたのよ」
奏絵「そうなんですね! 皆さん、理香さんのことは当然知っていますよね? 今クールのドラマにも出演されている俳優さんなんです」
理香「そうなの、今は弁護士の役をやっています~」
奏絵「すっごいカッコいい役ですよね。毎回決め台詞にしびれます!」
理香「あなたの声を聞かせて、私が証明するわ」
奏絵「きゃーカッコいい! ……コホン、いち視聴者になってしまいました。でも、本当に惚れ惚れする演技です。理香さんが演じるとどんな役でもかっこいいんですよね。今までどんな職業の役をされてきましたか」
理香「刑事に、教師、キャビンアテンダントに、看護師、医者、我ながら色々な職業を経験しているわね」
奏絵「すごいたくさんですね」
理香「奏絵さんほどじゃないわ。動物の役や、機械の役はないもの」
奏絵「それは特殊ですよ。理香さんもアニメ映画の出演ありますよね」
理香「えぇ。懐かしいわね。20年以上前かしら。稀莉はまだ生まれていなかったからもっとかも」
奏絵「ロードショーで何回も流れる国民的映画なんで、そんな前な気がしないですね」
理香「何度も流されるのは恥ずかしいわね。奏絵さんもそういうことない?」
奏絵「最初の頃に演じた作品は、声が全然違うし、へたっぴでじっくり聞けないですね……」
理香「私は映像でも残っているのが嫌だわ。老いには勝てないもの」
奏絵「いやいやいや、今でも大変お綺麗でびっくりしてしまいます」
理香「ありがとう。食事や運動、美容は努力しているわ」
奏絵「さすがプロですね……! いや~見たことある映画、ドラマの役者さんとラジオをやるなんて、何だか不思議な気持ちですね」
理香「あら。奏絵さんとはラジオのゲストどころか、嫁と姑の関係なのだけど」
奏絵「そ、それは……」
理香「リスナーさんには今さらでしょ? 奏絵さんのウェディングドレス姿はとっても綺麗でしたよ」
奏絵「その、ありがとうございます……? あの、本当、今日はやりづらいですね……」
理香「さあさあ、お二人の恥ずかしエピソードを早く話しましょう」
奏絵「稀莉ちゃん、早く帰ってきてーーーーーーーーー!」
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