第26章 宛名のない物語

第26章 宛名のない物語①

***

奏絵「始まりました」


稀莉「佐久間稀莉と」

奏絵「吉岡奏絵がお送りする……」


奏絵・稀莉「これっきりラジオ~」



奏絵「皆さん、すでにお気づきですね?今日は私の一人の声じゃなかったですよね?お待たせしました、私もすごく待ってました!」


稀莉「佐久間稀莉、これっきりラジオに復活よ!」


奏絵「わーーーー、稀莉ちゃんが帰ってきた!おかえりなさい、これっきりラジオにおかえりなさい」

稀莉「スタッフまで拍手すると恥ずかしいわね。ただいま。皆さん、本当にお待たせしました。今日より、ラジオに完全復活です」

奏絵「やったー!」

稀莉「やったーって、子供みたいな反応しないでよ」

奏絵「うふふ、稀莉ちゃんがいる。稀莉ちゃんがいるよ」

稀莉「……よしおかん、キモいんだけど」

奏絵「えっ、待って、待って。毒舌戻っている?いつものイチャイチャはどうしたの!?」

稀莉「はい?そんな安売りしていないんですけど」

奏絵「不仲?不仲ラジオに戻るの?ループしているの?最初に戻って、リスタートしなくていいんだよ!?」


稀莉「だって、虚勢張らないと大好きが溢れちゃうし……」


奏絵「はい、きましたー。稀莉ちゃんのデレきましたー。特大のデレきましたー」

稀莉「う、うるさいわね。これっきりラジオってこうだったっけ?もうすっかり忘れたわ……。半年以上のブランクは大きい」

奏絵「取り戻していこう。私たちの愛を取り戻していこう」

稀莉「よしおかんもこんなんだったっけ……」

奏絵「盛り下がらない!盛り下がらないで!4月になっての稀莉ちゃん復帰特別回なんだから!」

稀莉「4月といってももう後半よ?皆の意識はゴールデンなウィークよ?」

奏絵「そ、そうなんだよね。また世間が浮かれる日が来るんだよね」

稀莉「言い方~。私も学校始まったばかりですぐに大型連休は、なんだか調子狂うわ」

奏絵「そうなんだよね。稀莉ちゃんももう大学生なんだよね……」

稀莉「ああ、皆には言ってなかったわね。私、この春からめでたく大学生になりました!」

奏絵「おめでとー。ラジオで初めて会った時は高校2年生だったのに、あっという間に大きく……、正直言うと背は伸びてないよね?」

稀莉「くっ、気にしているのに」

奏絵「いやいや、稀莉ちゃんぐらいの背の方が可愛いよ~。私ぐらいの背だとちょっと高めだし」

稀莉「母親が高くて、モデル体型だから羨ましいのよ」

奏絵「名役者さんが母親も大変だね。それにしても女子大生か……、あれ、私がそうだったのって何年前?」

稀莉「そういえば、よしおかんは29歳になりましたね」

奏絵「やめてーーーー。それはふれないで!!」

稀莉「おめでたいことです。29歳。29歳ですよ。大台まであと少し」

奏絵「マズイ、真面目のマジでマズイ。来年30歳?三十路?アラサーとネタにしづらい。もう笑えなくなるよ!?」

稀莉「笑えばいいと思う」

奏絵「嫌だよ!!」

稀莉「今日は復帰特別回だったので、次回私と奏絵の誕生日回を行いますねー。おめでとうメールは今すぐ送るのよ!」

奏絵「はぁ、時が止まればいいのに……」

稀莉「盛り下がらないで、と注意した人が、盛り下がらないの!」


奏絵「久しぶりに二人だと話題もたくさんだね」

稀莉「そうね。大学生活に、誕生日、それにイベントの話もあるわ」

奏絵「気になる色々なイベントの話は、次のコーナーで話します!ありがたいことに、たくさんのおたよりが来ていますので、早く次のコーナーへいきましょうか」

稀莉「私も話したくて、ウズウズしているわ」

奏絵「……余計なこと言ったら、容赦なくカットでお願いします、スタッフさん」

稀莉「余計なこと言うと思っているの?」

奏絵「思ってないとでも?ともかく、いくよー」


稀莉「今夜は」

奏絵「一人っきりじゃなーい」


稀莉「『吉岡奏絵と佐久間稀莉のこれっきりラジオ』は、あなたの暮らしを彩るお店、〇×と」

奏絵「刺激的な毎日をさらに刺激する炭酸飲料、▽□の提供でお送りします」


稀莉「今夜は一人っきりじゃないってかけ声、初めてやったのだけど」

奏絵「いない間は、今夜も一人っきり~でした」

稀莉「寂しい!寂しすぎる!!」


~CM~


稀莉「何、にやけているのよ」

奏絵「だって、隣に稀莉ちゃんがいるんだよ。それだけで嬉しすぎるって!」

稀莉「気持ちは嬉しいけど、そんなんでいいの?」

奏絵「同じ空気吸えてる。幸せ」

稀莉「幸せ判定甘すぎない!?」


奏絵「はい、CM明けはこのコーナーに行きましょう」

稀莉「待って、今日展開早すぎて、ツッコミ疲れるんだけど!」


奏絵「よしおかんに報告だー!」


奏絵「このコーナーでは、リスナーの相談や私たちに関する報告など、おたよりなら何でもありの、ふつおたのコーナーです」

稀莉「はいはい、ふつおたはいりません。つまらないおたよりは容赦なく破ります」

奏絵「う~、懐かしいね。その台詞が聞きたかった」

稀莉「いない間破ってこなかったの?」

奏絵「普通、おたより破らないからね?」


稀莉「はい、読むわよー。ラジオネーム『シャンデリア大介』さんから。空飛びの最終回イベント行きました。アニメの最終回はもちろん最高だったのですが、驚いたのはよしおかんさんのサプライズ登場です。完全にノーマークでした。次の日、大阪のライブのよしおかんさんがまさか最終話イベントにいるなんて、驚きでした。目の前の光景をはじめは理解できず、夢でも見ているのでは?という思いでしたが、熱い歌声を聞くと、これは現実だ!!と気づき、その後は大盛り上がりでした。そして、その後の映画化発表。さらに大きくなっていく空飛びの世界に、興奮を隠しきれません。素晴らしいイベントに参加でき、忘れられない一日となりました。もしよかったら、裏話教えてください?稀莉ちゃんからの感想もぜひ聞きたいです」


奏絵「ありがとー。まずはこっちのイベントですよね」

稀莉「よしおかんから去り際に、『愛している』って言われました」

奏絵「おい、待て。言った。確かに言ったけど、まずそれ!?」

稀莉「正直、その台詞に全部持っていかれたわ。キャストが周りにいる中での大胆不敵な発言。顔が真っ赤になったのを覚えているわ。打ち上げもずーっとうわの空だったんだから」

奏絵「ごめん!嬉しいけど、ごめん!まずはイベント、空飛びの上映会の感想をよろしく頼むよ!」

稀莉「仕方がないわね。えーっと、ディスク化されないのがもったいないぐらいの豪華なイベントだったわ。ねえ、まだBDの最終巻のオマケにつけるの間に合うんじゃない?」

奏絵「こらこらー、無茶を言わない」

稀莉「空飛びのオープニングとエンディングを歌う、それぞれのアーティストさん、それに奏絵が揃うのはこれが最初で最後じゃないかしら」

奏絵「確かに。空飛びのライブがあるなら、呼ばれることはあるかもだけど、今のところそんな予定も無いね」

稀莉「来られたお客さんは本当幸運よ。私も、凄く感動しました。空音の曲は……、それはあっちの感想にしましょうか」

奏絵「そうだね。本編の方ですが、最終回も良かったね~。熱い戦闘、こういう結末になるかと感動しました。その後にキャストのコメントが聞けるのも豪華でしたね。スタッフ、キャストの皆さん、そしてファンの皆様。ありがとうございました!一緒の空間にいれて、嬉しかったです」

稀莉「私の方こそ、ありがとうございました。映画も見るのよ!」


奏絵「はい、次のおたより読むね。ラジオネーム『みじょれ雪』さんから。って、おい、この内容」

稀莉「何が書いてあるの?短文ね」

奏絵「あ、おたより奪わないでー」


稀莉「お姫様抱っこの感想をお聞かせください、以上」


奏絵「先にこれ持ってきちゃうの!?ちゃんとライブの感想言わせてよ~」

稀莉「そうね。光の中で、体がふわっと浮いて、気づいたらよしおかんの顔が近くて」

奏絵「律儀に語ろうとしない!」

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