Outro

　大きな舞台に立つ。

　満員の観客。光るペンライト。盛り上がる声。

　彼女は隣にいない。

「今日は来てくれてありがとうー！吉岡奏絵、ファーストライブ開催です！」

　歌が始まり、観客のボルテージはさらに上がる。

　必死に歌いながら、懸命に歌いながらも、客席を探す。

　彼女の幻影を探す。

「ライブ、最高だね！こんなにたくさんの人が来てくれるとは思わなかったよ。じゃあ、ここで聞いてみようかな。皆、私を何で知ってくれた？」

　アニメ！音楽！の順に聞き、ちらほら手が上がる。

「皆、正直だね。私は声優だよ？アニメで知ってくれよー。はい、すみません。声優活動ももっと頑張ります。じゃあ、ラジオで私を知ったという人？」

　声が上がり、たくさんの手が上がる。

　ねえ、稀莉ちゃん見えている？嬉しい気持ちでいっぱいだよ。

「ありがとー！これっきりラジオの力は偉大だなー。私にとっても、大切で、大事で、かけがえのない場所です」

　一人になった。でも、一人じゃない。

　君を、待っている。

　舞台の上で歌う私を、またみつけてくれる日まで。

「では、この曲を歌わせてもらいます。私の曲ではなく、二人の曲です。番組のテーマ曲になっているんですよ？じゃあ、皆で一斉にタイトルコールしてみようか？せーの！」

「「「これっきりじゃない！」」」

　いつかこの曲を二人で、笑顔で歌う。

　そんな日が来ることを願い、私は精一杯歌う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜第四部・完＞

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい