ある日の収録④

稀莉「あなたの心がわかっちゃう?」

奏絵「え?」

稀莉「<これっきり心理テスト>のコーナー!」

奏絵「え、え?」


稀莉「このコーナーでは、言葉通り心理テストを行い、相手の知らない気持ち、隠された本性、本人も気づいていない性質を暴いてしまおう、というコーナーよ」

奏絵「いやいやいやいや!初耳なんだけど!このコーナーいつできたの?」

稀莉「さっき」

奏絵「さっきかい!」


稀莉「打ち合わせ前に、スタッフさんと朝の占いの話になって、予想以上に盛り上がったの。で、そこに植島さんが『何、盛り上がっているの?』となって、ごらんのとおり」

奏絵「そんな簡単にコーナーつくっていいの!?」

稀莉「もううるさいわね、やるわよ」

奏絵「えー、心理テスト、えー」

稀莉「よしおかんは血液型占いとか、星座占いとか信じないの?」

奏絵「良い情報の時だけ、ラッキーって思うけど、悪い時は都合よく信じないかな」

稀莉「良いとこどり、というわけね」

奏絵「言い方っ!」

稀莉「はいはい、やるわよ。お互い読むけど、答えは別の紙にあり、わかりません。ぜひリスナーさんもチャレンジしてね」

奏絵「わかったよ。はい、私から読みます」


奏絵「本当の姿よりも魅力的に自分を映し出す鏡があります。その不思議な鏡はどんな形をしているでしょうか?

   ①丸い形の鏡   ②四角形の鏡

   ③三角形の鏡   ④楕円形の鏡」


稀莉「実際の姿よりも魅力的に映し出す……。イン〇タ映えってことね!加工アプリでイジッたり、フォ〇ショで修正したり!」

奏絵「違うよ!そういうことじゃないよ!というか実際の姿もきっと魅力的だから!」

稀莉「いつも同じ角度で写真を撮る人いるわよね」

奏絵「敵をつくらないで!はい、回答!4つの中から選ぼう!」

稀莉「仕方ないわね。私は、④の楕円形の鏡かしら」

奏絵「うーん、自分は①の丸い形の鏡かな」


奏絵「はい、作家さんから答えの紙を貰いました」

稀莉「なんだか、ドキドキするわね」


奏絵「げっ。この心理テストでは、外見に対する自信がわかるそうです」

稀莉「外見?」

奏絵「まず稀莉ちゃんの回答。④の楕円形の鏡は、容姿にかなり自信あり!」

稀莉「いやいや」

奏絵「まぁ稀莉ちゃんは可愛いですからね」

稀莉「う、嬉しいけど。自信なんて全く無いわよ」

奏絵「とか言いながら、本心では自分ってめちゃくちゃ可愛い!と思っていると」

稀莉「そんなことないし!心理テストって嫌らしいわね。で、よしおかんは?」

奏絵「①の丸い形の鏡は、おだてられると調子に乗るタイプだそうです」

稀莉「よしおかんっぽい」

奏絵「褒められて伸びる子なんだよ!」

稀莉「アラサーが何を言う」

奏絵「はいはい。他の②四角形の鏡は、外見よりも内面的に自信あり、③三角形の鏡は、必要以上に外見を気にしない、という答えでした」


稀莉「はい、次いくわよ」


稀莉「あなたは恋人と一緒に遊園地へ出かけました。この中で、あなたがずっと楽しみにしていた、絶対に乗りたいと思っているアトラクションは次の4つの内どれですか?」

奏絵「遊園地、ね」

稀莉「①スリリングなバンジージャンプ

   ②エキサイティングなレーシングカート

   ③情緒あふれる景色が見られる観覧車

   ④絶叫必須のジェットコースター」


奏絵「うーん、これは悩むな」

稀莉「どれも乗りたいけど、1つね」

奏絵「恋人となら観覧車!といきたいところだけど、これは自分がずっと楽しみにしていたっていう設定だからなー」

稀莉「うーん、①のバンジージャンプ!」

奏絵「じゃあ、私は④のジェットコースターかな」


稀莉「皆も決まったかしら?」

奏絵「いやー、答え待っている間は落ち着かないね」

稀莉「はい、植島さんありがとう。って、えええ」

奏絵「え、何が書かれているの?」


稀莉「このテストでは、あなたの恋愛のタイプがわかります、とのことです」


奏絵「えっ、恋愛!?」

稀莉「まず、どっちも選んでいない②のレーシングカート。異性の何気ない言動を良い方に解釈して、勝手に気持ちを盛り上げるタイプ」

奏絵「辛辣っ!」

稀莉「ホレっぽさはそれほど高くなく、相手の事を知ろうとする意欲に欠けている人です」

奏絵「さらに痛烈っ!」

稀莉「これ、自分の回答のとこ読みたくないわね」

奏絵「気になるけど、怖い」

稀莉「はい、定番の③観覧車は、意中の人とは段階を踏んで仲を深めていくタイプ。ホレっぽさは低く、そのため相手の事を何でも知りたがる人です」

奏絵「あーこれが正解だったか?」

稀莉「悪くない答えね」


稀莉「どっちからいく?」

奏絵「いや、怖い。けど、ここは年長の私からで」

稀莉「いくわよ。④のジェットコースターを選んだあなたは、適度に相手の事を知ってから、恋心を燃え上がらせるタイプ。ホレっぽさは普通で、行動力もそこそこの、いわば平凡型といえます」

奏絵「あれ、意外と普通」

稀莉「一目ぼれは少なく、相手のことを知ってから好きになるタイプなのね……」

奏絵「何で、稀莉ちゃんはメモっているのかな?」

稀莉「行動力はあるのかしら?」

奏絵「無ければ声優になってないよ!」

稀莉「仕事とプライベートは違うと思う」

奏絵「そんなことないって」


稀莉「では、次の心理テストにいきましょう」

奏絵「待って、待って!稀莉ちゃんの選んだ①の答え聞いていないから!」

稀莉「嫌だ」

奏絵「直球!じゃあ、私が読むから」

稀莉「あぁ、紙が奪われた!」

奏絵「なになに、①のバンジージャンプを選んだあなたは、意中の人に対して積極的にアプローチするタイプです。ホレっぽさは相当高く、意中の人を、どんな事をしてでも獲得したいと思っている人です」

稀莉「……」

奏絵「お、おう」

稀莉「惚れっぽくはないわよ!」

奏絵「どんな事をしてでも獲得したいと思っている、積極的なタイプ」

稀莉「うっ」

奏絵「私が言うのも何だけけどさ」

稀莉「ぅ」

奏絵「ピッタリじゃない?」

稀莉「そ、そ、そんなことないですよ、吉岡さん」

奏絵「急に敬語になって怖いんだけど!?それにこの答え、どことなくヤンデレ風味」

稀莉「だ、誰がヤンデレですって!?」

奏絵「別に稀莉ちゃんのことを言ったわけじゃないよ!」

稀莉「惚れっぽいわけじゃないわよ。惚れたのは1人だけ、よ」

奏絵「待て待て!」

稀莉「×××。ぷはっ、口押さえるなし!」

奏絵「何を言い出すのこの子!!心理テスト怖い!えっ、あと1問だけって。植島さん、ゲラゲラ笑うなって!」

稀莉「ぜえぜえ……。心理テストってこんなにエネルギー使うゲームだったかしら?」


奏絵「あっ、この質問は短い!いいね」


奏絵「がしゃん!何かが音をたてて割れたけど何でしょう?

   ①お気に入りのマグカップ

   ②窓ガラス

   ③陶器の人形

   ④めがね」


稀莉「私の心です」

奏絵「割れないで!冗談はさておき」

稀莉「さっきの心理テストでけっこうダメージ食らったんですけど」

奏絵「まあまあ。割れる、割れるねー。こういうのは直感だよね」

稀莉「うーん、でも悩ましい。③の人形か、④めがねかな」

奏絵「どうして?」

稀莉「①だとショックだし、②だとホラー映画展開で嫌だ。ダメージ少なそうな人形か、眼鏡ね。うーん、じゃあ眼鏡で。割れても替えがきくし」

奏絵「私は、割れると言ったら②の窓ガラスかな。これから事件が起きそうな予感がするからね」

稀莉「ドラマ的には確かに割れるなら窓ガラスよね」


奏絵「はいはい、植島さんありがとう。って、これまた嫌な答え」

稀莉「何よ」

奏絵「この心理テストでは、恋人との喧嘩のきっかけになりやすいものがわかります、ってことです」

稀莉「げ」


奏絵「②の窓ガラスを選んだあなたは、お金がきっかけで喧嘩になるでしょう」

稀莉「はは、奏絵らしいわ」

奏絵「私、貧乏キャラじゃない!」

稀莉「でもお金のトラブルは良くないわね。恋人にせよ、家族にせよ、友人にせよ」

奏絵「そうだね。金銭トラブルは良くない」

稀莉「通帳は私がしっかりと管理しないと」

奏絵「え、何の話」

稀莉「私たちの話よ、一緒に暮らすんでしょ?」

奏絵「やっぱり、ヤンデレの素質あると思うんだ」


稀莉「で、他は?」

奏絵「①のマグカップはプライドの高さ、③の人形は寂しさ」

稀莉「あー、③は危なかった」

奏絵「寂しさで喧嘩ね……」

稀莉「……何よ、寂しくさせるのが悪いのよ」

奏絵「さ、さてさて、稀莉ちゃんの選んだ④眼鏡は」

稀莉「眼鏡は?」


奏絵「……心理テストってけっこう当たるのかもしれない」

稀莉「何よ、早く言いなさいよ」


奏絵「嫉妬です」


稀莉「……」

奏絵「……」

稀莉「嫉妬が原因で、喧嘩」

奏絵「稀莉ちゃんは嫉妬深い女ってことですね」

稀莉「違うし、私嫉妬深くないし」

奏絵「そういえばこないだ映画を観に行ったんだけど」

稀莉「誰よ!?どの女と行ったのよ!?」

奏絵「いや、1人だけどさ……」


稀莉「…………」

奏絵「………………」


稀莉「……占いって怖いわね」

奏絵「私は、稀莉ちゃんのことが怖いよ!?」


稀莉「はい、以上、<これっきり心理テスト>のコーナーでした」

奏絵「うん、これっきりにしよう。本当に今回限りにしよう」

稀莉「今度は占い師をゲストに呼んでほしいわ。手相占いに、相性占いをしてもらうの!」

奏絵「そんなラジオはもうこれっきりにしてー!」

× × ×


 占いの牡羊座の所を見ると、『年下に振り回されるでしょう』という記載があった。占いを信じる気持ちが、少し芽生えた私であった。

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