第17章 ふつおたでもいいと思う⑤

咲良「ひどい番組紹介だったね……」

真琴「ずっと濃いと思っていた、オタクラジオの私達が押され負けるなんて、驚きでしたね」

咲良「豚を飼っているラジオに、変態が集うラジオに、女王様ラジオだぜ!?普通のオタクの私たちが敵うはずねーよ!」


唯奈「誰が女王様よ!」

ひかり「変態ラジオって……」

彩夏「否定できない」

梢「豚じゃなく、子豚さんですぅ~」


咲良「やべーって、濃すぎだって!それにいちゃらぶラジオだよ!?」


稀莉「うむ」

奏絵「認めないで、稀莉ちゃん!」


真琴「個性出まくりでしたね。このままじゃ、私達ただの司会者になってしまいます……。次のコーナーでは、『まことにさくらん!』も負けていられませんよ!」

咲良「いくぞ、お前ら―!次のコーナーはこちら!」


真琴・咲良「番組個性バトル!!」


お客さん「わー」


真琴「こちらのコーナーでは、番組の個性に関係するお題を出します。そのお題に上手く個性を発揮できたかで勝敗を決めます」


唯奈「個性?」


真琴「そうです!例えば、個性が『新人らしさ』だったとします。その場合、お題により新人っぽさが出た番組が勝ちとなります」

咲良「それぞれ対決してもらうよ。優勝チームにはプレゼントあり!」


梢「デザート~」

ひかり「金、金!」

奏絵「お酒!」

彩夏「イケメン、医師、弁護士!」


咲良「欲望もれすぎ!最後にいった君はちょっと黙れー」

真琴「いきますよー。最初の対戦チームはこちら~」


咲良「『新山梢のコズエール!』と『吉岡奏絵と佐久間稀莉のこれっきりラジオ』~!対決内容は、コズエール!の特徴、『癒し』対決!!」


奏絵「うお、私達!?」

稀莉「しかも癒しって」


真琴「対決内容は、癒される台詞を言った方が勝ちです!判定はお客さんの拍手ですよ。どんな癒し台詞を言うかというとー」

咲良「こちら!仕事に疲れて帰ってきた時の言葉!」


奏絵「これっていわゆる萌え台詞対決ってやつじゃん!」

稀莉「よしおかんの得意分野でしょ?」

奏絵「断じて違うよ!?」


咲良「はい、では梢ちゃんからいきましょう」

梢「がんばりますぅ~」

真琴「では、私が帰ってくる人役やりますね。スタート」



真琴「はぁ、疲れた……。もう寝ちゃっているよな。ガチャリ。ただいまーって、梢!?まだ起きていたのかい?」

梢「おかえりなさいですぅ~。お仕事、大変大変でしたね~。えらい、えらい。さぁ、早く入ってくださいですぅー」

真琴「何だい、急かして、どうしたんだい?」

梢「たくさんご飯をつくって待っていたんですぅ―。唐揚げに、ハンバーグ、グラタン、デザートにケーキ、ドーナッツ。たんと癒されてください~」



咲良「終了-!」

梢「難しかったですぅ~」

真琴「最初は、励まされて癒されました!けど、後半は梢ちゃんの欲望丸出しでしたね」

咲良「疲れた体にそんなにご飯はいるかな……」

梢「ご飯を食べればすぐに体も心も回復ですぅ~」


真琴「では、次はこれっきりの二人です。今度は私が帰る役をやらないで、二人で分担してくださいね」

奏絵「私が帰る役」

稀莉「駄目、癒し台詞はよしおかんが言いなさい!」

奏絵「やだよー」

咲良「はいはい、始めるよ、スタート」



稀莉「疲れた。5本同時収録とか、鬼でしょ植島。あー、いますぐ眠りたい。ガチャリ」

奏絵「おかえり、稀莉!あら、お疲れのお顔さんですね」

稀莉「ただいま、奏絵。もうくったくたよ」

奏絵「はい」

稀莉「え?」

奏絵「おかえりのぎゅーは?」

稀莉「ぎゅ、ぎゅー」


お客さん「「「おおおおお」」」


奏絵「疲れは吹っ飛んだかな?」

稀莉「まだ足りない……」



真琴「す、ストップーーー!」

咲良「なんやねんこれ」


彩夏「癒しじゃなくて、いやらしい!」

梢「さすがよしおかんしゃんですぅ……」


× × ×


真琴「次の対決は『まことにさくらん!』と『唯奈独尊ラジオ』。対決内容は、私たちの個性、どっちがオタクか、対決!」

咲良「質問に、オタクっぽく答えた方が勝ち!全3問!」

真琴「私たちが回答するので、司会は臨時で、さっき圧勝した『これっきり』の2人に変わってもらいます」


奏絵「どうもどうも」

稀莉「こっち側に来ると安心ね」


唯奈「よしおかん、よしおかんめ……」


奏絵「唯奈ちゃんからめちゃくちゃ睨まれていますが、問題すすめるよ。第1問、バッグにいつも入っているものは?フリップに書いてください。オタクっぽい答えですよー」

稀莉「はい、書き終わったわね。では、どうぞ」


唯奈「推しの写真」

真琴・咲良「せーの、ペンライト!」


奏絵「どっちもわかる。わかるが、どうでしょう」

稀莉「お客さん、拍手どうぞー、まずは唯奈」


お客さん「パチパチ」


稀莉「まことにさくらんー」


お客さん「パチパチパチパチ」


奏絵「これはさくらんの二人ですね」

唯奈「何でよ!」

奏絵「写真は何かオタクじゃなくても持っていそう、というか重い。ペンライトはいつでもライブに参加できるし、カラオケでも練習していそうで、オタクっぽいなーって」

真琴「現場にペンライト忘れたら困るんでござる」

咲良「わかりてなんだなー」


× × ×


咲良「司会に舞い戻ってきたぜ。今度の対決は、『ひかりと彩夏のこぼれすぎ!』と『これっきりラジオ』!」

真琴「対決は、これっきりの特徴、カップル度を争ってもらいます!」


奏絵「可笑しくない!?」

咲良「可笑しいのはお前らだよ!?だよな、みんな―」


お客さん「そうだー」「もっとやれー」


奏絵「敵しかいないの!?」

稀莉「私がいつでも味方よ」

奏絵「稀莉ちゃん……!」


咲良「はいはい、まだ対決始まってねーぞ」


ひかり「私たち棄権しない?」

彩夏「私たちの夫婦っぷりを見せつけないの?」

ひかり「あっちはカップルだけど、こっちは熟年夫婦なんだよ」

彩夏「そうだね、もう倦怠期で、熟年離婚を考えているもんね」


真琴「あの、まだ対決始まってないですよ?ここではエチュードをやってもらいます。シチュエーションはこちら!」


咲良「遊園地で、観覧車がストップ。そんな時どうする!?」


ひかり「整いました!」

奏絵「はやい!」

彩夏「では、早速いかしてもらうよ」



ひかり「たかーい」

彩夏「せやな」

ひかり「どうしたの彩夏?」

彩夏「下のカップルみてみ」

ひかり「あー、めっちゃチューしている!」

彩夏「な。盛っているな」

ひかり「ガタンゴトン。何!?観覧車が止まった?」

彩夏「ちょうど頂上のところや」

ひかり「怖いよ、彩夏。どうなっちゃうの私たち?」

彩夏「落ち着け、ひかり。外を見るんだ」

ひかり「外って、あー」

彩夏「な。めっちゃ車両が動いとる」

ひかり「止まっているのに、あそこだけ激しいね」

彩夏「な。ひかり」

ひかり「何かな、彩夏」

彩夏「わいらも揺らしてみーへん?」

ひかり「お、落っこちちゃうよー」



真琴「す、ストップでーーーす!!」

咲良「何なの!?カップル度対決だよ!?あんたらの得意な変態対決じゃないよ!?」


彩夏「カップル、観覧車、密室。何も起きないはずがなく」

ひかり「あはは、さすがあやかん」

真琴「R18ですよ!」

咲良「二人とも退場処分するからな!次やったらレッドカードだからな!」

彩夏「ちぇっー」

ひかり「うぃーす」

真琴「全然反省していないですね」


稀莉「この後私たちか……」

奏絵「ピンク色の空間をどうかしないと」


真琴「それでは、これっきりの二人です!よろしくお願いします」



稀莉「高い、ね」

奏絵「うん」

稀莉「……」

奏絵「……」

稀莉「何か喋りなさいよ」

奏絵「ご、ごめん」

稀莉「謝らない!」

奏絵「き、緊張しているんだよ」

稀莉「わ、私だってそうよ」

奏絵「……今日はいい天気だったね」

稀莉「他に話すことないの!?ガタンゴトン。きゃっ」

奏絵「え、観覧車が止まった?」

稀莉「こ、怖いわ」

奏絵「稀莉ちゃん」

稀莉「奏絵……」

奏絵「手握っていれば、怖くないよね」

稀莉「う、うん」

奏絵「……少しは落ち着いた?」

稀莉「うん」

奏絵「稀莉ちゃん見て、星が凄く綺麗に見えるよ」

稀莉「そうね、綺麗」

奏絵「観覧車がストップしたから見えた景色だね」

稀莉「そうかもね」

奏絵「あっ、動き出した。よかったー」

稀莉「か、奏絵!」

奏絵「うん、何?」

稀莉「手はまだ繋いでいて欲しい、かなって」

奏絵「うん、いいよ」

稀莉「ふふ」

奏絵「はは」



咲良「終了ー」

ひかり「甘すぎない?」

彩夏「初々しすぎない?」

ひかり「何だか、変態な寸劇が申し訳なくなったよ」

彩夏「やっぱり私たちは熟年なんだね……」


真琴「判定にうつります!」

***

 いつから間違えたのか。どこから方向性を見失ったのか。いや、見失ってはいないんだけどね……。いちゃらぶラジオを否定できない私であったのでした、まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る