第17章 ふつおたでもいいと思う③

***

咲良「皆さん―!」

真琴「こんにちは!」


お客さん「「こんにちはー」」


真琴「皆さん、元気ですね!」

咲良「外は寒いけど、中は熱くしていこうぜ!」


お客さん「「わー」」


真琴「さてさて、私たちが先に出てきたということは」

咲良「ええ、まさかの司会だよ」

真琴「大役ですね」

咲良「プレッシャーで吐きそう」

真琴「さくらん、大丈夫!吐いたらこの手で受け止めるから、ほれっ、ほれ」

咲良「素手で受け止めるんなし!草!」

真琴「はいはい、進めますよ。今日は私たちだけのイベントじゃないんですから」

咲良「そうだった、いっけねー」

真琴「私達、『まことにさくらん!』の篠塚真琴と」

咲良「大滝咲良が、マウンテン放送合同ラジオイベント、お昼の部の司会を務めさせていただくぜ!」

真琴「ではでは、早速1組目に来てもらいましょう」

咲良「おお、このBGMは!?」


唯奈「たたたたた、たーん!いくぞー、今日も!」

お客さん「「世界で1番」」

唯奈「私が!」

唯奈・お客さん「「可愛い―!!!」」


唯奈「どうも、美少女声優、橘唯奈よ!」

お客さん「「わーーーーー」」


咲良「やべー、初っ端からやべー奴来ちゃった。自分で美少女言っちゃうのウケる」

真琴「でも、唯奈ちゃんなら許せちゃうー。あざとかわいい」

唯奈「お客さん、たくさんね。クリスマス前なのにいいのかしら」

咲良「煽らないでー」

真琴「クリぼっちもいいと思います」

咲良「肯定するのもどこか違う!」

唯奈「いいわ、今日は唯奈サンタが忘れられない日にしてあげるから」

真琴「な、なにをしてくれるのかな?」

咲良「お姉さん、ドキドキしちゃうぞ」

唯奈「一生残る、傷をつけてあげるから(ウィンク)」

真琴「みんな、逃げてーーー」

咲良「ホラーなの?ヤンデレなの?」

唯奈「今日はよろしく頼むわよ、『まことにさくらん』のお二人」

真琴「はい、宜しくお願いしますねー。1番組目は『唯奈独尊ラジオ』の唯奈ちゃんでした」

咲良「最初から怖かったぜ……。次の番組はこちらーー!」


梢「トコトコ。あのぉ、どうも、梢ですぅ」


唯奈「もっと元気に来なさいよー!」

梢「ひぃー。ご、ごめんなしゃい。あなたにエールをあげるよ。新山梢のコズエール!の梢ですぅ。お願いしますぅ」

咲良「どっちが先輩なのかな?」

真琴「はいはい、梢ちゃん、こっちこっち」

梢「わーん、真琴しゃん!」

真琴「……私、お母さんになります」

咲良「母性に目覚めないで、真琴!それにおかんキャラはこの後出てくる人と被るからっ!」

真琴「そうでした!梢ちゃんは今日は大丈夫かな?」

梢「朝ご飯たくさん食べてきたので頑張りますぅ」

真琴「何を食べてきたの?」

梢「今日はドーナッツ、マフィンとメロンパンですぅ」

咲良「朝からよく入るねー」

唯奈「私はプロテイン」

咲良「唯奈ちゃんは何を目指しているの!?」

唯奈「アーティストとして当然でしょ」

真琴「プロ意識高いなー、さすが唯奈ちゃん」

梢「お腹空いてきたので、楽屋に戻っていいですかぁ~?」

咲良「こっちはプロ意識が低いな!?」


真琴「……私たち司会務まるのでしょうか?」

咲良「あと二組を紹介しないといけないの?もうこれでよくない?って、ああ、BGMが流れ出した!」

真琴「このジングルは!?」


ひかり「わー」

彩夏「わーー」

ひかり「こっちのお客さん―!行くぞ―!こぼれ」

お客さん「「すぎー!!」」

彩夏「右もいくぞー、ダッシュ」

ひかり「こっちも元気よく!こぼれ」

お客さん「「すぎー!!」

彩夏「はい、2階!」

ひかり「こぼれ」

お客さん「「すぎーー!!」」

彩夏「よし、上出来!」


ひかり「行くよ、あやかん!」

彩夏「よっしゃ、ひかりん!」

ひかり「ひかりとー」

彩夏「彩夏のー」

ひかり・彩夏「こぼれー」

お客さん「「すぎー!!」

ひかり・彩夏「こぼれーーー!」

お客さん「「すぎーーー!!!」

ひかり・彩夏「こぼれーーーーーーーー」

お客さん「「すぎーーーーーーー!!!」

ひかり・彩夏「もういっちょ、こぼれーーーー」

お客さん「「すぎーーーー!!」

ひかり・彩夏「ラスト、こぼれーーー」

お客さん「「すぎー!!」

彩夏「よし、優勝!」

ひかり「優勝ですー、ありがとうー!よっしゃ、パレードいくぞー」


咲良「いかないで!何この謎の一体感」

真琴「完全に持っていかれましたね」

ひかり「よーよー、司会のお二人よー」

彩夏「おっすおっす、可愛い子ちゃんたち」

真琴「酔ってないですよね、お二人とも?」

彩夏「君に酔っちゃているぞ☆」

咲良「やっかい、やっかい!そろそろ自己紹介してー」


ひかり「どうも、『ひかりと彩夏のこぼれすぎ!』から来ました、東井ひかりと」

彩夏「夏を彩る女、芝崎彩夏でーす!って、今は冬じゃないか!!」

ひかり「あやかん、今日はここだけ夏だぜ」

彩夏「えっ、水着になっていいの?」

咲良「ぬ、脱ごうとしないで!?」

真琴「水着きているんですか!?」

彩夏「何も着てないし、つけてないよ」

真琴「それは大問題です!!」

ひかり「嘘嘘、さすがのあやかんでも下着着けているから。貧乳で必要ないけど」

彩夏「戦争です、今言ってはいけないことを口にしました」

ひかり「貧乳、まな板、スットントン!」

彩夏「はい、宣戦布告とみなします」

咲良「誰かとめてくれいーーー!!」

***

 舞台袖にいる稀莉ちゃんと顔を見合わせる。


「この後、出づらい……」

「何なの!?自由すぎじゃない、あの人たち」

「意外と私たちってまともだったんだね」

「そうよ、まとももまともよ!」

「私たちの入場って打ち合わせ通りだと」

「お客さんに手を振って、入る」


「……地味」


「地味ね。どうしよう奏絵!このままじゃ私たち印象に残らない!」

「もう一回、社交ダンスで入る?」

「あれは滑ったじゃない。スタッフの白い目が忘れられないわ」

「じゃあさ、手を繋いで入るとか、どう?」

「それはいいけど、インパクトはやっぱりないわよね。絵的に地味」


 確かに手前の人はわかるかもしれないけど、後ろの人からは認識されづらい。じゃあ、どうすればいいのか。

 そろそろ、盛り上がっている前の組の紹介が終わる。悩んでいる時間はない。


「稀莉ちゃん、これはどうだろう」

「え」


 彼女の耳元で小声で提案する。

 アラサーの私にはきついことかもしれない。

 でも、「あれ」は案外、乗る人側の協力があればすんなりといくと、聞いたこともある。


「よし、行くよ、稀莉」

「わ、わかったわよ、奏絵」


 彼女のお尻の下に腕をいれて支える。よし、行ける。私も少しは鍛えておいて良かった。

 ジングルが流れ、スタッフが声をかける。GOの合図。

 彼女が持ちあがる。彼女もしっかりとバランスをとってくれているので、負担は少ない。いける、問題なく歩ける。

 さぁ、私のお姫様を見せつけに行こう。


***

咲良「ラストの番組は、この番組ー」

真琴「どうぞ……えっ」


お客さん「「「おお!!」」」


唯奈「お姫様抱っこ!?」

梢「さすがよしおかんしゃんですぅ」

ひかり「くそ、その手が!」

彩夏「あんたじゃ私を持ち上げられないわよ」

ひかり「うるせー、貧乳」

彩夏「裁判、裁判ですー!」


奏絵「稀莉ちゃん、マイクこっちに向けてもらっていい。両手塞がっているから」

稀莉「はい、奏絵」

奏絵「ありがと。どうもーー!吉岡奏絵と」

稀莉「佐久間稀莉の」

奏絵・稀莉「「これっきりラジオですー!!」」


お客さん「「わああああああ!!」」


咲良「私たちは何を見せられているんだ」

真琴「……結婚式ですかね」

***

 こうして、個性派ぞろいのラジオ番組の集まりで1番の印象を与えたのであった。

 ……どうかしていたと思う。お姫様抱っこで登場、挨拶。イベントの勢いって怖い。

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