第12章 待たね、ソワレ⑥

***

稀莉「劇団・空想学!」

奏絵「こちらのコーナーではお題を元に即興劇を行います」

稀莉「引き続き、テーマはバトルなので、交互に演じ、どっちが良いかをお客さんに判断してもらいます」

奏絵「で、今回も負けた人は罰ゲームとして、こちらの萌え萌えボックスから紙を1枚引き、書かれた萌え台詞を読んでもらいます」

稀莉「よしおかんに読ますわよ!」

奏絵「もう負けないぞ」

稀莉「では、一つ目のテーマはこちら。スクリーンに注目」

奏絵「な、長い!えーっと、『ご飯が出来ているのに、なかなか帰って来ない。そんな相手が今すぐ帰ってきたくなる即興劇』と」

稀莉「二人で暮らしているってことね」

奏絵「新婚さんのお嫁さん役かな、むむ、結婚していない私たちにはハードルが高い内容」

稀莉「長くなると数こなせないので、寸劇にしましょう。では、よしおかんから」

奏絵「私からか。よしっ、行きましょう。レッツデイドリーム!」


===

奏絵「稀莉君、帰って来るの遅いなー、よし電話してみよう」

奏絵「ぷるる、出ないなー、じゃあ留守電に残すか、コホン」

奏絵「今日はあなたの好きなハンバーグを作ったわ、隠し味は私の愛情♪早く帰って来てね」

===


奏絵「終了~!」

稀莉「隠し味は私の愛情って、どことなく怖いんだけど」

奏絵「ええー、ヤンデレキャラじゃないよ」

稀莉「そもそもハンバーグで早く帰って来るかしら」

奏絵「美味しいじゃん!」

稀莉「美味しいけど、特別感はないというか」

奏絵「もう、稀莉ちゃんの番だよ、はい」

稀莉「はいはい、レッツデイドリーム!」


===

稀莉「奏絵、遅いなー。今日もどこかで飲んでいるのかな……」

稀莉「電話しよう。ぷるる、出ない。留守電に残すか」

稀莉「奏絵、お疲れ様。今日遅くなるのかな?お仕事忙しい?でも、早く会いたいな……、一緒にご飯食べようね」

===


稀莉「終了!」

奏絵「また飲んでいる扱いされる私!」

稀莉「というか思ったのだけど、何でナチュラルに相手をお互いにしているのよ、私達……」

奏絵「あっ……まぁその方が想像しやすいというか」

稀莉「想像しやすい……」

奏絵「……うん」

稀莉「は、判定に移りましょう!良かったと思う人に拍手してください」

奏絵「私が良かったと思う人!」


お客さん「パチパチパチパチ」


稀莉「私が良かったと思う人ー」


お客さん「パチパチパチパチパチパチパチ」


稀莉「これは私ね」

奏絵「あー、また負けた」

稀莉「はい、引いて引いて」

奏絵「くそー、えいっ。ない、これはない!」

稀莉「はいはい、罰ゲームなんだから、どうぞ!」


奏絵「ご主人様お帰りだニャン♪さびしんぼうの猫さんだニャン。もっと私に構ってほしいニャン♪」


お客さん「「おおおおお!!」」


奏絵「きっつ!自分で言っていてきっつい!」

稀莉「ニャンが抜けているわよ」

奏絵「もう罰ゲームは終わっているから!」

稀莉「新境地開拓したわね」

奏絵「アラサーにニャンと言わせるな、ニャンと。はい、次!スクリーンどうぞ」

稀莉「『付き合って1カ月記念日、もっと長く続くために彼女が言った台詞は?』」

奏絵「結婚生活に続き、次はカップルの1カ月記念と。1カ月ではしゃぐとか若いなー」

稀莉「私たちをいじめているのかしら、ここのスタッフは」

奏絵「その苦難を乗り越えてこそ、芸人!私から行きます!レッツデイドリーム!」


===

奏絵「稀莉君、付き合って1ヶ月だね」

奏絵「覚えている?私と会った時のこと。えへへ、嬉しいな。こんなにあなたといれて幸せだよ」

奏絵「あのね、聞いてね」

奏絵「来月も、その次も、ずっと先も一緒にいたいです」

奏絵「……駄目、かな?」

===


稀莉「駄目じゃない―!」

お客さん「おおおおおお」


奏絵「何で稀莉ちゃんがテンション上がっているのよ。というかこの寸劇、萌え台詞読む罰ゲームと同じぐらい恥ずかしいんだけど」

稀莉「ええ、気づいたわね。このコーナーしんどい。めっちゃ体力使うし、精神すり減る」

奏絵「はい、稀莉ちゃんの出番だよ」

稀莉「ええ、デイドリ!」

奏絵「略さない!」


===

稀莉「付き合って1カ月ですね。毎日電話してうざくないですか?」

稀莉「え、嬉しい。それは良かったです。これからも続けていきます」

稀莉「では、こちら」

稀莉「こちらカップル契約更新の書類です。途中で解約はできません。はい、サインをお願いします」

===


奏絵「ずれている!そして既視感!」

稀莉「約束なんて破られるものなの。書類にするのが1番だわ」

奏絵「おぅ、そうですか……」

稀莉「では、投票に移るわよ」

奏絵「私が良かったと思う人!」


お客さん「パチパチパチパチパチパチ」


稀莉「私が良かった人―」


お客さん「パチ……パチ……」


稀莉「どうして!」

奏絵「いや、わかってよ!」

稀莉「何が悪かったっていうの……」

奏絵「お客さんが皆まともで良かったよ……。はい、ボックス」

稀莉「読んでやるわ!」


稀莉「疲れちゃった?じゃあ、私の膝枕にどうぞ。えっ、恥ずかしいって?顔真っ赤だよ。ふふ、顔が近いね。君がよく見えるよ」


お客さん「「おおおおお!!」」


奏絵「ああ、甘いですね」

稀莉「もう次!次は勝つわよ!」

***

 こうして夜公演は大盛り上がりで、順調に進んでいったのであった。

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