第9章 編集点からReStart③
***
奏絵「今回は特別コーナーです!」
稀莉「ぐっつぐつ、グッズづくりー!」
奏絵「ぱふぱふ」
稀莉「……このタイトル名、センス無さすぎじゃない?」
奏絵「稀莉ちゃん、そういうこと言っちゃ駄目だよ。30分かけて考えたアラサー女性が泣いちゃうよ」
稀莉「考えたのあんたか!」
奏絵「今回は、イベントで販売するグッズを私たちとリスナーで考えたいと思います」
稀莉「そしてスルー」
奏絵「事前に応募いただき、たくさんお便りが来ています!」
稀莉「まともなお便りなのよね?」
奏絵「それはどうでしょう」
稀莉「嘘でも自信持ちなさいよ」
奏絵「こちらのBOXに入っているので、どんどん引いていきましょう。そりゃ」
稀莉「不安だ……」
奏絵「うどん」
稀莉「う、うどんって販売できるの?飲食オッケーなの?」
奏絵「飲食は厳しいですからね」
稀莉「なになに、実際に売ったイベントもあるそうです。屋台とかではなく、持ち帰ってゆでるならオッケーと」
奏絵「でも、なかなかハードル高いですね」
稀莉「そして、私達何もうどんに縁もゆかりもない!」
奏絵「香川出身でもないですしね。ラジオネーム、『香川星人』さんからでした。お前が香川か!」
稀莉「次引くわよ」
奏絵「どうぞ」
稀莉「抱き枕」
奏絵「何をプリントするの?稀莉ちゃん?」
稀莉「却下、却下よ」
奏絵「じゃあ、等身大植島さん?」
稀莉「どこに構成作家の抱き枕が欲しい人がいるの!?」
奏絵「一部需要があるかもよ」
稀莉「ないでほしい。ラジオネーム、『むっつに生まれたむっつり』さんでした」
奏絵「イベントTシャツ」
稀莉「ふつう!ふつうじゃない!」
奏絵「定番っすね。もちろん販売すると思いますが、大事なのはデザインです」
稀莉「どういうのが人気なの?」
奏絵「フルグラTはなかなかハードル高いですね。普段も着られるようなお洒落なのが好ましいかも」
稀莉「ださいと駄目なのね」
奏絵「ええ、ださいとパジャマ用になります」
稀莉「これは真剣に考えましょう」
奏絵「イベントTシャツは販売しますのでお楽しみに!ラジオネーム、『にんげんいんげん』さんでした」
稀莉「婚姻届」
奏絵「おお」
稀莉「もちろん却下よ!」
奏絵「ええー」
稀莉「売ってどうするのよ、私たちのリスナーには必要ないわ」
奏絵「失礼な!売ったらその場で記載してプレゼントボックスに入っているかもしれないじゃん」
稀莉「こわっ、そんなの嫌よ」
奏絵「年収次第で考えます」
稀莉「やめなさい!ラジオネーム、『果汁3%』さんからでした」
奏絵「するめいか」
稀莉「嫌よ、会場がイカ臭くなるじゃない」
奏絵「稀莉ちゃん、待って!」
稀莉「何よ、するめいかを会場で食べたら、イカ臭くなるじゃない」
奏絵「その発言はNG!」
稀莉「なんでよ」
奏絵「なんでもじゃない!稀莉ちゃんは穢れないで」
稀莉「へ?」
奏絵「はい次、次!ラジオネーム、『スメル山口』さんからでした。お前はもう送ってくるな、出禁!」
稀莉「な、なんでよ?教えてよ、よしおかん」
奏絵「教えません!」
***
今日もひどいラジオだった。誉め言葉?
ゲラゲラと笑い合う私たちに、スーツを着た男性が近づく。ラジオスポンサーのお偉いさんだ。
「イベントグッズは大事なんだ」
大事なのはわかっている。お客さんに届く、私たち初のグッズだ。良いものにしたい。
しかし、私の思いはどこかズレていたみたいだ。
「何で重要かわかっているかな」
そういわれると答えづらい。
「それは、チケットが売れてもイベントはたいして儲からないからだ」
「へ?」
「え」
私と稀莉ちゃんが似たような反応を示す。
「チケットが満席になっても、せいぜい会場費、設営、人件費、諸々の諸経費が賄えるぐらいで、収益的にはトントンなんだ」
もちろんチケットが売れなければ赤字だけどね、と付け加える。
「チケットでは利益がでない。じゃあどこで利益を出すか」
「それがイベントグッズということですか?」
「その通り、正解。もちろんグッズの製作費もかかるので、必ずしもプラスになるとは限らないが、1番利益が見込めるポイントなんだ」
ライブでも同じとのことだ。ペンライト、タオル、Tシャツが売れるから、イベントは儲かる。儲かるから、イベントを開催するのだ。
確かにライブに行ったら、ついついグッズは欲しくなっちゃうものなー。
「でもラジオイベントだと、なかなかグッズは売れない。ライブみたいに一体感を出すためにTシャツやタオルを買ってくれる人はあまり多くない」
だから、『魅力的なグッズ』にしなくてはならないと。リスナーが買いたい、欲しい、手に入れないと!というアイテムにしなければいけない。
「というのがあくまで一般的に言われることだけどね。会場費や、設営をケチれば、チケットだけでもそれなりに利益は出る。でも、せっかくなら良い場所で、良い環境でイベント行いたいだろう?」
「はい、そうですね」
「なので頼んだよ。まだ幸い時間はある。グッズづくりは真剣に考えてくれ」
発破をかけられた。思った以上に責任重大じゃないか、グッズづくり。
私たちが好き勝手にやっていいものじゃない。
「ちゃんと話さないとね……」
「そうね……」
ラジオの勢いを失い、意気消沈してしまった私たちであった。
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