第4章 番宣大合戦!②

***

奏絵「こないだのゲームの収録に行ったんですよ」

稀莉「良かったじゃない、仕事貰えて」

奏絵「ええ、ありがたい。まじありがたい。ありがとうゲーム会社さん。まだタイトルは言えないので、発表になったら言いますね」

稀莉「それで、ゲームの収録でなんかあったの?」

奏絵「特に何かあったわけではないんだけどさー。ゲームの収録って、基本一人なんだよね。だから寂しくて……」

稀莉「しょうがないじゃない、そういうものでしょ」

奏絵「そうだけど……。それに一人で、『てやー』、『ていやー』、『うおおおお』っていうのは、周りから見るとけっこうシュールだよね」

稀莉「それは思う、変な光景よ。それに何度も同じ台詞言って、うーんもう少し炎が出そうにとか、宇宙にいる感じでとかアドバイス貰うんだけど、さっぱりわからないの。何が良い演技なのか見失う」

奏絵「やっている時は真剣なんだけどね」

稀莉「でも、ふと冷静になると私何やっているんだろう……となるわね」

奏絵「そう思うとアニメの収録は基本一緒にやって、声の掛け合いになるんで寂しくないし、面白いよね」

稀莉「ただいつも一緒なのに、スケジュール合わなくて一人で収録する時になるとなんだか物足りないわ」

奏絵「私、別録り経験したことない……」

稀莉「頑張りなさいよ」

奏絵「年下に励まされるアラサーって……」

稀莉「植島さんがそろそろ手紙を読めとうるさいので、読みます、はい」


奏絵「よしおかんに報告だー!」


奏絵「って、何で私がタイトルコールするの?何で、自分で、よしおかんって言っちゃっているの?」

稀莉「はい、ラジオネーム『宇宙従妹』さんからです」

奏絵「華麗にスルー!?」

稀莉「従妹って書いているのに、男性だわ」

奏絵「そういうプライベートなこと言っちゃ、ダメだよ。訴えられたら負けるよ」

稀莉「そんな深刻な問題!? ただのネカマでしょ?」

奏絵「外面は男性かもしれないけど、中身は立派な女性の心を持った人かもしれないでしょ?」


稀莉「はいはい。読むわ。『きりきり、よしおかん、マッターホルン!?』」


奏絵「山ね」

稀莉「山ですよ、はい。どんな挨拶よ」

奏絵「4,478 mあると植島さんが教えてくれました」

稀莉「情報はっや! 『最近、雨が続いて嫌ですね』」

奏絵「や、破らない!」

稀莉「ふつおたはいりません!」

奏絵「天気の話は皆の共通の話題だから仕方ないの、許してあげて」

稀莉「しょうがないわね。『番組のSNSに書いてあったのですが、初めて二人でご飯に行ったそうですね。その時の様子を教えてください』」

奏絵「ああ、その話ね」

稀莉「スタッフ! 何でSNSに書いているのよ! 誰よ、植島さん?」

奏絵「すみません、私です」

稀莉「お前か、そのスタッフ!」

奏絵「つい出来心で、皆に知ってもらいたいと思い、書いてしまいました、反省していません」

稀莉「反省しなさい!」

奏絵「大丈夫、行ったことしか書いてないから! 写真も載せてないから私たちだけの秘密よ、ねえ、稀莉ちゃん」

稀莉「その秘密を話してほしいというお便りなんだけど」

奏絵「あちゃー、やられた。話すしかないじゃない」

稀莉「簡単に打ち明ける秘密ね……」


奏絵「こないだの収録の帰りに行ったんです。稀莉ちゃんが『私、まだ帰りたくない……』っていうから、ちょっと休憩しようか、となり」


稀莉「はい、捏造、捏造です。私一言もそんなこと言ってません!」

奏絵「え、言ってなかったっけ? 確かに聞いたんだけどな」

稀莉「私と違う言語を使っているのね。英語? フランス語? エスペラント言語? そんなあなたにはこれ。翻訳こんにゃ」

奏絵「ストップ! それは色々と権利がまずいから、青い狸が銃を持ってやってくるから! それでですね、二人で夜景の見える高層ビル最上階のレストランに行きました」

稀莉「チェーンの喫茶店でした、奢ってもらいましたが」

奏絵「さすが私、大先輩! 太っ腹! 女神様!」

稀莉「チェーン店で奢ったぐらいで、何でそんなに偉そうなのよ……」

奏絵「それで稀莉ちゃんは何を飲んだんだっけ?」

稀莉「アイスコーヒーを飲んだわ」

奏絵「ふーん」

稀莉「何よ、その眼は」

奏絵「稀莉ちゃん、強がってブラックを頼んだんですが、苦くて飲めなかったんですよね、ぷぷぷ」

稀莉「べ、別に飲めなかったわけじゃないわよ。あんたがキャラメルラテ甘すぎて無理っていうから、ダイエットしているって言うんだから、だから仕方なく、交換したのは仕方なくなんだからね」

奏絵「ふふ、そういうことにしておいてあげる」

稀莉「う~ムカつく」

奏絵「それに稀莉ちゃんに飲ませてもらいました!ごめんね、リスナー。ごめんね、稀莉ちゃんファン。私が一歩リードだよ」

稀莉「私が飲み物を差し出した時に勝手にストロー咥えただけでしょ。それに何よ一歩リードって」

奏絵「何、植島さん? 交換ってことは間接キスになりますね。あー、そういえばそうだね」


稀莉「!」


奏絵「でも女の子同士なんで大したことないですよ。良く友達同士でやることですよね」

稀莉「…………」

奏絵「稀莉ちゃんどうしたの? あっ、ごめん、稀莉ちゃん友達少ないもんね」

稀莉「そういうことじゃない!」

奏絵「稀莉ちゃんの友達になってくれる人、お便りにプロフィールを書いてお送りください、あと年収も」

稀莉「何、勝手に募集しているのよ!? しかも年収って」

奏絵「大富豪の方は私がもらいます」

稀莉「お便りで婚活するな!」

奏絵「何をー! 稀莉ちゃんは友達が少ないくせに~」

稀莉「す、少なくないんだから、ぐすぐす」

奏絵「えっ、泣いているの。ごめん、嘘嘘。稀莉ちゃんは友達たくさん、皆が友達だから。ほーら、私も友達だよ」

稀莉「えっ、よしおかんがト・モ・ダ・チ?」

奏絵「ひどっ、ってやっぱり嘘泣きでしたー」

稀莉「こんなところ?」

奏絵「はい、話した内容は秘密です。ガールズトークなので秘密です」

稀莉「いちいちガールズトークと言うのがおばさんくさいわね」

奏絵「お、おばさんっていうなー!」

稀莉「時間が押しているそうなので、次のコーナーへ」

***

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