第2章 呼び方を決めるのが初回のラジオっぽいよね④
***
奏絵「はい、最初のコーナーです」
稀莉「もうこれっきりにして!(エコー)」
奏絵「こちらのコーナーではリスナーから『もうこれっきりにしたい』お悩みを募集し、私達が解決してあげるコーナーです」
稀莉「今回は事前に募集したお便りが届いているみたいね。まだ1回目放送していないっていうのに奇特な人達ね」
奏絵「稀莉ちゃん、しーっ! 時空の歪みは話しちゃダメ!」
稀莉「どうせ皆知っていることでしょ? じゃあ行くわよ、よしおかん」
奏絵「はいはい、お母さんですよ、稀莉ちゃんバブー」
稀莉「キモイ」
奏絵「直球な否定は傷つくかな? かな?」
稀莉「早く読みなさいよ」
奏絵「へいへい。えーっと、ラジオネーム『アルミ缶の上にあるぽんかん』さんから頂きました」
稀莉「なんでミカンじゃなくて、わざわざぽんかんを置くのよ」
奏絵「あえて、でしょうねー。そういう年頃なのよ、ちょっと捻くれた道を選んじゃう歳なの、きっと。はい、『佐久間さん、吉岡さんこんにちはー』」
稀莉「こんにちはー」
奏絵「『僕はお酒を飲むとついつい誰かに電話しちゃう癖があります。それも異性に電話してしまうのです。酔いが冷めて、電話の履歴を見ると記憶のない履歴が残っており、顔が青ざめます。急いで謝りの連絡を入れると、相手はたいてい許してくれるものの、時には勢いで告白してしまっているそうで、その後凄く気まずくなります。酔う度に相手に悪影響を与えてしまう自分に嫌気がさします。こんなことはもうこれっきりにしたい!です。どうかこんなダメダメな僕に助言をください』」
稀莉「うわー迷惑」
奏絵「辛辣! もっと優しくしてあげようよ。酔って電話しちゃうなんて何か可愛らしいじゃん」
稀莉「えー、こっちが何かしている時に、わけわからない酔っ払いから連絡きたらうざいでしょ」
奏絵「そうかな。酔っていて、ふふ、可愛いなってなるけどなー」
稀莉「そりゃ可愛い子が舌足らずな感じで話してきたら、『はいはい聞いてあげるよ』となるけど、むさい男から電話きたら、ただただ迷惑」
奏絵「そうかー、そうかな? 普段しっかりしている人だから、そういうだらしない部分にきゅんと来るとか……ないかな?」
稀莉「ないわね。っていうか、未成年の私にこんな質問しても感覚がわからないわよ」
奏絵「ですよねー。現役女子高生ですものね」
稀莉「言えることは、お酒は飲んでも飲まれるな!ってことね」
奏絵「上手い、その通り」
稀莉「よしおかんは酔っぱらうの?」
奏絵「うーん、それなりに強いからあまり酔っぱらわないけど。時々、酔いたい気分になっちゃうかな」
稀莉「それはどんな時?」
奏絵「うん、オーディションに落ちまくった時とか」
稀莉「はい、暗―い、暗いよ、あんた」
奏絵「大人には酔いたいときはあるのさ……。ねえ、稀莉ちゃん、今度酔っぱらった時電話するね」
稀莉「マネージャー、携帯持ってきてー。今すぐ着拒を設定するから」
奏絵「もう稀莉ちゃんひどい。公衆電話からかけちゃうからね、ぐふふ」
稀莉「ストーカー法って、同性でも適用できるんですっけ?」
奏絵「まぁ、半分冗談だとして」
稀莉「半分本気なの!?」
奏絵「『アルミ缶の上にあるぽんかん』さんへの解答はどうしようか」
稀莉「うーん、携帯を持って行かない。家に置いておく」
奏絵「なるほど、それはありかも。でも目的地に辿り着かないといけないから、飲み始める前に電源を切っておくのもいいね。はい、『あるぽん』さんは飲み会についたら電源を直ちに切ってください」
稀莉「名前長いからって勝手に略さない」
奏絵「もしくは幹事に携帯を預ける」
稀莉「幹事もたまったもんじゃないわね」
奏絵「幹事なんて基本慈善事業さ」
稀莉「過去に何があったのよ……」
奏絵「はい、次のお便り行きましょう」
稀莉「私が読むわね。『まきまき』さんから頂きました」
奏絵「まきまきー」
稀莉「適当な相槌ね。『吉岡さん、稀莉ちゃん、こんにちは』って、稀莉ちゃんって馴れ馴れしいわね」
奏絵「稀莉ちゃん、フレンドリーにフレンドリーに(にこっ)」
稀莉「はいはい。『私はついついお菓子を食べすぎてしまいます。それも決まって深夜に食べたくなってしまうのです。ダイエットしているので、辞めたいのですが止まりません。もう食べるのはこれっきりにしたい!』」
奏絵「お菓子、美味しいものねー」
稀莉「食べなきゃいいのよ」
奏絵「その通りだけど」
稀莉「意志が弱いのよ、買ってこなければいい」
奏絵「それはそうだけど、稀莉ちゃんはお菓子食べないの?」
稀莉「差し入れは食べるけど、自分から買って食べないわね」
奏絵「そうなんだね、偉い。学生なのにしっかりしているな~。私は新商品が出たらついつい買っちゃうかな」
稀莉「よく新商品わかるわね」
奏絵「コンビニによく行くからね」
稀莉「コンビニ……行ったことないわ」
奏絵「えっ、稀莉ちゃん、東京生まれだよね?それでコンビニ行ったことないって絶滅危惧種だよ」
稀莉「だって用がないもの」
奏絵「はっ、マジで!?」
稀莉「マジ」
奏絵「さ、さすがお姫様ですね。私はいちいちお金をおろしたり、振り込みしたり、なくてはならない存在です、ありがとうコンビニ、ありがとうATM」
稀莉「何処への配慮よ。で、『まきまき』さんへの解答は?」
奏絵「三食きちんと食べましょう、そしたらお菓子を食べる回数は減るよ」
稀莉「普通の解答ね」
奏絵「自分に言い聞かせているんです……」
稀莉「大人って大変ね」
奏絵「はい、こんな感じで、もうこれっきりにしたいことをどしどし募集していますー。次のコーナーはCMのあとすぐ!」
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