45話 佐々木あやのスキルは強い
「アクションゲームプレイヤー?」
「まことのスキルに名前が似てるわね」とルーシー。
「ご主人様のスキルもですネ」とニナさん。
「どれどれ、もう少し詳しく見てみましょうか」
ふじやんが、さーさんの魂書を眺める。
「基本動作として『ダッシュ』『溜め攻撃』『空中ジャンプ』が使える……。佐々木殿、使えるんですかな?」
「えーと、確かに走る速さが急に速くなることがあるわ。あれって、スキルってやつだったのね」
「ダッシュは、通常のスピードの3倍!?」
「佐々木様のステータスの3倍となると、相当強力なスキルになりますね」
いいなぁ。
俺と違ってシンプルで使いやすそうなスキルだ。
「さーさん、大当たりだね」
「ふぅん、そうなんだ……」
ぴんと来てないような顔をしている。
「いえ、このスキルの一番とんでもないところはここですぞ」
スキル名『残機:4/5』※レベル30以上で発動。
「これって……」
残機って、アクションゲームによくあるあの残機だよな。
って、ことは……チートスキルじゃん!
「佐々木殿が、ハーピーの親玉から生き残れた理由がわかりましたな」
ふじやんが、ため息をつきながら言う。
「え? これってどういうスキルなの?」
「ご主人様、説明してくださイ」
「ねえ、高月くん。どういう意味?」
「いや、さーさんは、わかれよ!」
ゲーマーなら、わかるだろ。
「残機というのは、異世界で使われている言葉でしてな。『その回数はやり直せる』という意味ですぞ」
「やり直せる?」
ルーシーは、まだぴんときてないらしい。
「多分だけど『残機:5』ってのは、5回までは死んでも生き返るよ、って意味じゃないかな」
「あー、だから4に減ってるのね」
さーさんは、どうやら理解してくれたようだ。
しかし、ルーシーとニナさんはぽかんとしている。
「い、生き返る?」
「つまり、光の聖級魔法『蘇生』と同じ効果って、ことでしょうカ?」
「まあ……おそらく」
「「ひぃええええ!」」
ルーシーとニナさんが、ようやく理解してくれたようだ。
「蘇生なんて、教会に依頼したら何百万Gかかることか……」
「自分を蘇生させるなんてのは、もはや神器クラスですネ……」
やっぱりうちのクラスメイトのスキルはチートだよなぁ。
「さーさんの反則的な強さとスキルもわかったことだし、一回休もう。眠さが限界だ」
「うん、ふらふら」
「そうですな。まずは、ゆっくり休んでから作戦を立てましょう」
俺とルーシーは泥のように眠りについた。
◇
「さて、じゃあハーピーの女王を倒す作戦会議だな」
「おー」
さーさんが張り切っている。
残りのみんなは、ぱちぱちと拍手をする。
「最初に情報共有を。タッキー殿とルーシー殿が寝ている間に、冒険者ギルドにお二人が戻ったことを伝えましたぞ」
「あ、報告忘れてた」
さすが、ふじやん。
気配りが行き届いている。
「ついでに、大迷宮でお二人をつけていたガラの悪い冒険者たちの情報も集めましタ」とニナさん。
「どうやら、彼らはまだ戻ってきてないようですな」
「それってつまり……」
ドラゴンから逃げられなかったのか……。
「悪いやつらだし、当然ね!」
「ちょっと、心が痛むけど、今後襲われる心配が無くなったと安心しておくよ」
ありがとう、とふじやんとニナさんにお礼を言う。
「次は、佐々木殿ですな」
「私?」
さーさんは、大迷宮から戻っても元気だったようで、ニナさんと服を買いに行ってたらしい。
今は、ワンピースのような服になっている。
「こちら、冒険者カードですぞ」
「え? それって冒険者ギルドじゃなくても、貰えるんだっけ」
そんなはずはない。
冒険者カードは、冒険者ギルド以外では発行できないし、冒険者ギルド以外からの入手は違法だ。
だけどまあ、ふじやんのことだ。
そう裏口ルートが、あるんだろう。
ふじやんの、苦笑がそれを裏付けていた。
「えーと、名前は佐々木あや……。種族が、亜人?」
「通常の方法でギルドに行くと、魔物だとばれてしまいますからな」
「ああ、たしかにそうね」
ルーシーがうなずく。
「魔物ってばれるとまずいの?」
「高月様……」
ニナさんに、呆れた顔をされた。
「魔物や魔族は、冒険者カードが作成できません。この人族の世界では、討伐の対象ですからな」
「そうなんだ」
あれ?
じゃあ、ルーシーは?
ちらっと、見るとルーシーと目が合った。
そして、目を逸らされた。
(たしか、ルーシーはエルフと魔族のハーフって言ってたけど)
冒険者カードは、ただのエルフになっていた。
きっと、裏口を使ったのだろう。
「じゃあ、ラミアってことは隠せばいいのね」
「はい、佐々木様の肌は青白いので、種族を聞かれたら海人族とでも答えるのがよいでしょウ。南国のほうでなければ居ないので、めったに会う心配はありません。」
さすがは、ふじやんやニナさんだ。
色々考えて、先手を打ってくれる。
「では、本題ですな」
ふじやんが、ハーピーの女王の手配書と、他にも何枚かの紙を広げる。
「ハーピーの弱点は、火魔法?」
「まあ、羽はよく燃えるからな。頼むぞルーシー」
「ええ、任せて!」
ルーシーが腕まくりする。
火魔法は、本当に魔物相手だと便利だな。
「ハーピーの数ってどれくらいなんでしょうネ?」
「ラミア族の家族が、大体100人くらいの規模だったから、同じくらいじゃないかな」
ニナさんの問いに、さーさんが答える。
「その数をまともに相手にするのは避けたいですな」
「まとまっているところを、不意打ちで一網打尽にできないかな」
「ルーシー様の火魔法でしたら、うまくいけば……」
「ルーシーのノーコン魔法に、過度の期待はしないほうがよいよ」
「ちょっとぉ! まこと」
ルーシーに腕を掴まれ、揺さぶられる。
「ねえ、高月くんの水魔法? あれも凄かったじゃない」
反対側にいるさーさんが、肩を叩いてくる。
ちなみに、座席ではルーシーとさーさんに俺が挟まれて座っている。
「水魔法は、攻撃に向かないんだよ。魔物に囲まれた時に使った『水龍』の魔法は、魔物を吹き飛ばしただけで、倒したわけじゃないよ。中には溺れ死んだやつもいるかもしれないけど」
「水魔法・水龍! 超級の魔法ではないですカ!」
ニナさんが驚きの声を上げる。
「精霊にお願いして使ってもらったので、俺が使えるわけじゃないですよ」
「それでも大したものですぞ」
「うん、高月くん凄かったよ」
さーさんが、言いながらくっついてくる。
「攻撃は、私がやるわ。問題は、ハーピーの親玉がどこにいるかね」
ルーシーまで俺の腕を掴んで、くっついてくる。
ルーシーは体温が高いから、暑いんだけど。
「たぶんだけど、ラミアと同じでどこかに住処があると思うの」
さーさんが、ますます引っ付いてくる。
ラミア族の特性なのか、肌がひんやりとしている。
ルーシーとは、間逆だな。
てか、二人にくっつかれると非常に窮屈なんですが……。
狭い。
「うーむ、冒険者ギルドで色々聞き込みをしてみたんですが、ハーピーの巣についての情報はありませんでしたな」
「自分たちで探すしかないか……」
「じゃあ、今日は二手に別れよう。俺とさーさんは、大迷宮を探索。ふじやん、申し訳ないんだけどルーシーを同行させてもらえないかな。ルーシーは、ニナさんたちと冒険者の町の聞き込みを頼む」
「ええ! どうして。私も大迷宮に行くわよ」
ルーシーが抗議の声を上げる。
「ルーシー様、今の大迷宮はどこでドラゴンと遭遇してもおかしくない状況。探索は危険ですヨ」
「うっ、確かに……。でも、それならまことだって!」
「俺は周りに水さえあれば、逃げるだけならどうにでもなるよ。あと、精霊魔法を使うために、毎日水の精霊に会いに行く必要があるんだ」
「そうなのですか。なかなか大変なんですな」
「そのおかげで、超級魔法が使えるからね」
「私は高月くんにダンジョンを案内すればいいのよね?」
とさーさん。
「ああ、ついでスキルの練習をしよう。隠密スキルは覚えておいたほうがいいと思う」
「わかったわ。高月くん、楽しそうね」
「え?」
そうかな。
でも、確かにこういうボスの攻略前の準備って、初めてだし少しワクワクする。
「ごめん、さーさん。もっと真剣にならないとな」
「ううん、私一人だと滅入っちゃってたから。みんなで協力するのって良いね」
そういうさーさんの表情は、昨日と比べると柔らかい。
「ねー、まこと。二人っきりだからって変なことしちゃだめよ?」
「なんだよ、変なことって……」
ルーシーが頬をつねってくるのを、手で軽くはらう。
「夜は私と修行だからね」
「当たり前だろ。ルーシーの火魔法が、今回の肝だからな」
「うん!」
さて、概ねの方針は決まった。
「よし。じゃあ、みんな行動開始だな」
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