19話 高月まことはクラスメイトとパーティーを組む


「頭痛い……」


 ルーシーが、二日酔いで頭を抱えている。

 飲みすぎるからだ。

 『猫耳亭』は、料理もお酒も美味しいから、気持ちはわかるけど。


「どうする? 今日は休む?」

「いやよ! そうやって私をのけ者にして、ふじやんさんやニナさんとパーティー組んじゃうんでしょ! そしたら、私は捨てられるのよ!」


 ルーシーがイヤイヤしと首を振る。

 しないって、そんなこと。

 最近思ったけど、ルーシーさんは思い込みが激しい。


「じゃあ、行くぞ」

「あうー……」

 ゾンビみたいな歩き方のルーシーと集合場所に向かった。


 ◇


 集合場所は南門前。


「タッキー殿、こちらですぞ」

「こんにちわー、高月様、ルーシー様。本日はよろしくお願いしまス」

 ふじやんと一緒にニナさんが待っていた。

 ふじやんは、いつもの商人の格好だが、ニナさんは軽装な鎧をつけている。

 ただ、気になる点が。


「ニナさんは、武器は持たないんですか?」

「ニナ殿は、格闘家ですぞ。手足が武器ですな」

 なるほど。

 獣人は身体能力が優れていて、素手でも強いとか聞いたな。


「今日はよろしくお願いします」

「……しますー」

 ルーシーはテンションが低い。

「じゃあ、みなさん出発しましょウ」

 ニナさんの言葉で、歩き出した。


 ◇


 俺たちは南の森の中を歩いている。

 大森林と違って、南の森の魔物は弱い。

 大ネズミや角ウサギを適当に追い払いながら進む。


「ニナさんは、火の国の出身なんですね」

「はい、そうなんでス。そこでご主人様と運命的な出会いを」

「ギャンブルで負けて、闘技場で闘士をしてましてな。奴隷として」

「ちょっと、ご主人様!その話はしない約束ジャ!?」

 ニナさんが、あわあわ手を振っている。


「ニナさんって……」

 ルーシーが残念な人を見る目になる。

「で、それを見たウサギ耳好きのふじやんは、ニナさんを買ったわけか」

 なんか言葉にするとエロい響きだな。


「いやー、でも本当にあの時は助かりましたヨ。火の国の奴隷の扱いは雑ですからね」

「藤原さんは、どうしてニナさんにしたの?あの国は獣人の奴隷なんていっぱいいるでしょ?」と聞くのはルーシー。

 俺は、火の国に詳しくないので、知らなかった。

 そうなのか。


「そうなんですよネ。ほとんど初対面の私を、一目で気に入ってくださって。私の何が良かったのか教えてくれないんですよね。私はご主人様に買ってもらって闘技場から解放されたときは、一生ついて行こうと思いましたヨ」

 ニナさんは、不思議そうに語っている。

「まあまあ、偶然ですぞ」

 ふじやんは、曖昧に言葉を濁している。


 実際はきっと、ふじやんがニナさんの心を読んだろうなぁ。

 本当に便利だな、『ギャルゲープレイヤー』スキル。


「ところでふじやん。俺たちはどこに向かってるの?」

 ふじやんの目がぱっと輝く。

「驚きますぞ!実は、最近発見されたダンジョンがありましてな!」

「えっ!マッカレンの近くにまだ未発見ダンジョンなんてあったの?」

 驚きの声を上げたのはルーシーだ。


「それって珍しいの?」

「だってマッカレンって、水の神殿の近くにあることやお酒が美味しい街ってことで新人からベテランまで、冒険者が多いことで有名なのよ。近場のダンジョンなんて、狩りつくされたって言われてるのに」

「へえ、そうなんだ。ふじやんは、よく発見できたね」

「ええ、それが南の森を調べるといいことがあるという夢を見ましてな」

「夢?それを信じて調べたの?」

 えらくふわっとした話だな。


「商人になってからは、直観や気になったことは必ず調べることにしてましてな。まあ、外れることも多いのですが今回は当たりでしたな」

 どや顔でふじやんが語る。


「でも、誰も入ったことが無いダンジョンなら難易度が不明だし危険じゃないの?」

 ルーシーが不安げに言う。

「そこは大丈夫ですヨ。私が事前に下見をしましたから」

「ニナさんが?」

「ええ、ご主人様の命令でダンジョン探索をしておきました。それほど強い魔物はいなかったので、ブロンズ級のお二人でも大丈夫だと思いますよ」

「いたれりつくせりだね」

 やっぱりふじやんと一緒だとヌルゲーになってしまうな。


 ふじやんと、目があった。

「まあ、たまにはヌルゲーもよいでしょう。苦労してたようですし」

 おっと、心を読んだな。

「そうだね。最近は、いきなりオーガの相手することになったり、グリフォンに急に襲われたり大変だったからなぁ」

 今回は、楽させてもらうか。



 しばらく森の中を進んで、岩や木に隠れたところに洞窟がでてきた。

「着きましたネ」

「これがダンジョン?」

 パッと見はただの洞窟だ。

「中に入ればわかりますぞ。行きましょう!」

 ふじやんは張り切っている。



 洞窟の中には、なぜかランプが灯っていた。

「こういうランプって何のためにあるんだろう?」

 疑問を口にすると、ルーシーがにやっと笑った。


「あら、まことったらそんなことも知らないの?ダンジョンっていうのは、冒険者を奥へおびき寄せるためにわざと、進みやすくしているのよ」

「へえ、そうなんだ」

 さすが異世界だな。


「それは生きているダンジョンの場合ですな。ここのダンジョンは、人工のダンジョンのようですぞ」

「え」

 おいおいルーシー。

 さっきの自信満々はなんだったんだ。


「おそらく昔の魔法使いが、研究用に作った施設か何かでしょウ。持ち主は不在のようですが、施設は生きていてそこに魔物がすみついたようですヨ」

 ニナさんが説明してくれる。



「これは、凄いな」

「綺麗ー」


 洞窟をしばらく進むと、そこは一面クリスタルの通路が出てきた。

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