信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略 クラスメイト最弱の魔法使い

4話 高月まことは女神と出会う

「女神さま……ですか？」

　目の前に、狂気じみた美貌の女の子が立っている。

　青みがかった煌めく銀髪に、サファイアのような瞳。

　透き通るような白い肌。

　少し幼さを残す少女のような肢体。

　だが、妖艶な色気も醸し出している。

　人形のように整い過ぎていて、少し怖い。

「えっと、俺に何のご用でしょう？」

　この世界は、神によって支配されている。

　本当に女神なら、彼らには逆らわない方がいい。

『明鏡止水』スキルのおかげで、女神を目の前にしても冷静だ。

「あなたをずっと見ていました。さきほど危険を顧みずゴブリンから商人を助けたことは立派なことです。あなたを私の眷属に迎えましょう」

　にっこりと女神が微笑む。

「女神様の眷属……」

　その言葉に、1年前の記憶が蘇った

　◇

　異世界に来てすぐのころ、水の神殿に『巫女』を名乗る人物が現れた。

　巫女とは、この国の聖職者の中でも特別な存在だ。

　いわく、女神の声を聞くことができる。

　巫女の言葉は、神の言葉と同義とされる。

　普段は教会の中で活動をしているそうだが、今回は異世界人に会いに来たようだ。

　目的はスカウト。

　巫女は、信者になったものに女神の加護を与える力を持っているらしい。

　異世界人の強力なステータスとレアなスキルは、魅力的なのだろう。

　俺たちの前に現れたのは『ソフィア・ローゼス』という水の巫女だった。

　彼女は、水の国ローゼスの王女でもある。

　要人中の要人。

　国の最重要人物だ。

　そんな人物が直接来るくらい、1年Ａ組のクラスメイトのスキルは際立っていたのだろう。

「あなたは超級魔法使いですか。素晴らしいですね。水の女神の加護を授けましょう。そのためには、我々の信奉する女神の信者になってくださいますね？」

「あら、あなたは黄金騎士のスキルをお持ちですね。水の女神の加護を授けましょう。そのためには女神の信者に……」

　こんな感じで、クラスメイト達を、どんどん勧誘していた。

　主に、レアなスキルを持っている人を中心に。

　そして、俺の魂書を見た時

「あなたは、水魔法……初級ですか。がんばってくださいね」

　微笑みながら、通り過ぎた。

　え？

「そ、それだけですか？」

「おい、巫女さまは忙しいんだ」

　詰め寄ろうとすると、騎士っぽい男に阻まれた。

　あとで知ったが、巫女の守護騎士という存在らしい。

「水の女神様の信者になります！　だから、加護をいただけませんか！」

　当時の俺は、弱いスキルしか貰えなかった焦りから、何とかしようと四苦八苦していた。

　女神の加護を受けると、さまざまな特典が貰える。

　なんとしても、水の女神の加護が欲しい。

　俺は必死だった。

　しかし、巫女の態度は冷淡だった。

「あなたは、もう少し修行が必要なようです。また、次の機会に」

　水の巫女ソフィアは、振り返りもせずそういって去って行った。

　◇

　その後、どれだけ修行しようと加護がもらえることはなかった。

　クラスメイトはもちろん、神殿にいる人たちからも可哀想な目で見られ、俺は涙で枕を濡らした。

　俺はそれ以来、水の巫女と教会が大っ嫌いになり、そいつが信仰しているという女神も嫌いになった。

　苦い思い出だ。

　当時を思い出すと、今でもイライラする。

　落ち着け……、もう気にしてない、気にしてない

「巫女の件は酷かったですね。あんな連中の信仰する女神は信じなくて良いですよ」

　まるで、心を読んだかのように、語りかけてくる。

　心を読まれたのだろうか。

　というか、水の巫女との出来事を知ってるのか。

「見ていた」というのは、本当らしい。

「その話は思い出したくないので止めましょう。ところで女神様の名前を教えてもらえませんか？」

　この世界の神様には名前がある。

『光の勇者』桜井は、『太陽の女神アルテナの寵愛』という加護をもらって、戦闘に関するステータスが倍になるというチートな加護を得ているらしい。

　まじ、あいつばっかりイージー過ぎない？

　そこまではいかなくても、有名な女神であれば加護も期待できる、という下心もあって名前を聞いた。

「ふふっ、私はマイナーな女神なので、知らないと思いますよ」

「そうは、言いましても、信仰する女神様の名前は知りたいですよ」

「では、いずれお教えしますね」

　誤魔化された。

　なんでだ？

　仕方なく、話題を変える。

「俺はこの異世界で、冒険者やっていけますかね？」

「ステータスが低いことを気にしてますね」

「まあ……」

　俺は自力の魔法では、スライム一匹倒せない。

　威力が低すぎる。

　さらに、あっという間に魔力が枯渇する。

　冒険者としてどうなんだろう。

「便利なスキルを持ってるじゃないですか」

「『明鏡止水』スキルと『RPGプレイヤー』スキルですか？　確かに、便利ではありますが、魔法使いや戦士スキル持ちには敵いませんよ」

　女神様相手に、拗ねたような口調になってしまった。

　しかし本音だ。

「クラスメイトの鈴木さん、山下さん、遠藤さんを知っていますか？」

　急に話題が変わった。

　一緒に異世界転移したクラスメイトだ。

　仲良かったわけではないが、もちろん知っている。

　みな、魔法使いや戦士の上級以上のスキルを持っていたはずだ。

「その3名は現在、行方不明もしくは亡くなっています」

「は？」

「スキルを過信したのでしょうね。実力以上の魔物と戦ったり、高難度のダンジョンに挑んで失敗したようです」

「そう、なんですか……」

　一年間、神殿に籠っていたから何も知らなかった。

「あなたのいた日本は平和な国ですからね。いくら強いスキルが得られても心は変わりません。『明鏡止水』スキルは過信や油断を防ぐ良いスキルですよ」

「『RPGプレイヤー』スキルですが、これは異世界人の固有のユニークスキルですね。これも面白いスキルだと思いますよ」

「ただの視点を変えるスキルでは……？」

「自分の姿を外から見えることで、不意打ちを防いだり、360度見渡して、遠目からの視点も可能。あとは、自分の行ったところは自動で『マッピング』する。しかも、『宝箱検知』もできます。こんな便利なスキルはなかなか無いですよ」

　うーむ、そう言われると悪く無い気がする。

　そっか。

　要は使いようってことか。

　少しだけ気持ちが軽くなった。

　別の質問をしてみる。

「ずっと、見守ってたとおっしゃいますが、今まで声をかけてこなかったのはなぜです？」

「水の神殿は、水の女神の管轄ですからね。遠慮してたんですよ」

「水の神殿内でも、他の神の信者からのスカウトはありましたが」

　光の勇者の桜井は、太陽の女神の信者になってたし。

「まあ、それはいいじゃないですか」

　曖昧に回答された。

「まこと。私の信者になりますか？」

　女神様ぐいぐい来るな。

　うーん、と考える。

　最初はあまりの美しさに目を奪われた。

　しかし、冷静になった今、目の前の女神は正直ちょっと怪しい。

　なぜ、俺のような弱小ステータスと変なスキルしかない男を信者にしたいのだろう。

　俺のプレイしてきたRPGゲームでは、序盤にこういう一見良さそうな選択肢は、安易に『YES』を選択すると、後で何か裏があることが多い。

　ゲーマーの感がそう告げている。

　しかもゲームと違ってリセットはできないのだ。

「少し考えますね」

「え!?」

　女神様はそれまでの優雅な仕草がなくなり急に慌てた顔になる。

「ちょ、ちょっと待ってください。女神の眷属ですよ！　しかも、女神が直接声をかけるとか、とんでもなく光栄なことなんですよ！」

　そうなのだ。

　女神が直接現れるなど普通はありえない。

　さっき、話にあがった巫女ですら声が聞ける程度だ。

　夢の中とはいえ、一般人が、直接女神の姿を見て話をするなど、聞いたことがない。

（もし、本物ならな）

『明鏡止水スキル』が囁いてくる。

　この女神様は、果たして本物なのか？　と。

「本物ですから！」

「え？」

「あっ、しまっ」

　やっぱり、心を読まれてるらしい。

「まあ、女神さまならそれくらいできますよね」

「れ、冷静なのね……」

　それだけが取り柄です。

　さっきは、声を荒げてしまったが。

「ね、ねぇ。神が人間界に来ることって大変なんだから。今日、契約してくれないかなー？」

　媚びるように俺の手を握って上目使いで話してくる。

　か、身体が近い。

　整った顔が眼前に迫る。

　昔テレビで見たキャバクラの接客みたいだ。

　女神様の蒼い瞳が淡く輝いている。

　頭がぼんやりして、少しくらっとなった。

　これ、魅惑魔法じゃないか？

　神殿の魔法学で、魅惑魔法の存在を習った。

　娼館などで働く女性がよく使うスキルらしい。

　世の中には色々な魅惑魔法があるそうだが、「相手の目を見て」「甘い声で話しかけながら」「身体を触る」のが基本だそうだ。

　初心者の冒険者が、魅惑魔法にかかって商売女に大金をつぎ込んで、借金を負ってしまう。

　よくある話だそうだ。

　今、まさにやられてないか？

　ただし、『RPGプレイヤースキル』の第三者視点を常時発動している俺は、自分の様子や、目の前の話し相手の様子を、数メートル離れて見ている。

　そのため、原則、相手と目を合わすという状況が起きない。

　ついでに言うと、スキルのせいで声や体の接触も、いまいち、自分のことのように感じにくい。

　さらに『明鏡止水スキル』である。

　心は平静だ。

「まことくんは、魅惑魔法は非常にかかり辛いでしょうね」と神殿の先生に言われた。

「女神様、とりあえず離れてください。近いです」

　結果、特に取り乱すことなく1歩下がった。

「あ、あれ？　なんで、効かないの！」

　女神様、それは失言では？

　信者にするために、魅惑魔法を使ってくるというはどうなんだろう。

　怪しい宗教勧誘のようだ。

「怪しくないから！」

「心読めるんでしたね」

　心の中で呟くのは意味が無いな。

「それなら、俺の不信感もわかりますよね？　今日のところは、あきらめていただけると」

「いやー!!　千年ぶりの信者獲得のチャンスなんだから、絶対に信者になってもらうのー！」

　ついには寝転がって足をばたばたさせ始めた。

　最初の威厳は消え去っている。

　短いワンピースのようなスカートからは、下着が見えそうなのに、……見えない。

　これが女神様の絶対領域？

　バカなことを考えていると、女神さまが聞いてきた。

「スカートの中を見せたら、信者になってくれる？」

「なんてことを言うんですか」

　女神様は、地面に座り込んだまま、涙目でこちらを見つめる。

　可愛い。だがしかし。

　信者になるかどうかは、別だよなぁ。

「お願いお願いお願い！　信者になってください。お願いします！」

　肩をつかまれ揺さぶられた。

　だから、近いですって。

　どうしよう……？

　正直、相手の意図はわからない。

　だが本気度は伝わる。

　どの道、この大陸ではメジャーな6大女神を信仰する気はなかった。

　水の巫女の印象が悪いせいだけど。

　これだけ、言ってくれるのだ。

　悪い扱いは受けないと期待しよう。

『RPGプレイヤー』スキルが選択肢を表示してくる。

　信者になる ←

　信者にならない

「わかりましたよ。あなたの信者になります」

「えっ、本当？　や、やったー」

　女神は万歳してぴょんぴょん跳ねている。

「じゃあ、あなたの『魂書（ソウルブック）』を貸してもらえる？」

　夢の中でも持っているだろうか。

　探してみると服の内ポケットに入っていた。

「どうぞ」

「はーい、どれどれ」

　女神様が魂書を指でなぞる。

　ふっと、紙が一瞬光った気がした。

　契約の書面を見ると、『女神の一人目の信者』と書かれてある。

「僕の他にいないんですか？」

「そうよ！　あなたが一人目なんだから！　光栄に思いなさい！」

　不安が増す。

　マイナー過ぎる。

　どんだけ人気の無い女神なんだ。

　やはり心配だ。

　他に気になる点と言えば。

「女神様の加護は何がもらえるんですか？」

　信者になった瞬間で、ずうずうしいと思ったが大事なポイントだ。

　ただ、女神様は困ったような顔をする。

「実は、私は若いマイナーな神なので、すぐに信者に加護を与えることができないの。毎日祈りを捧げてもらえれば、そのうち加護がつくかも」

　え、そんな。

「大丈夫！　代わりにこれあげるね！　これは契約の証の『神器』ね。凄いんだから！」

　短剣を渡された。

「武器ですか？」

「武器としても使えるわよ！　女神の鍛えた短剣だから、少々のことじゃ壊れないから！　私に祈りをささげるときはこれを持って祈ってね」

　十字架みたいなものか。

「じゃあ、私はそろそろ行くから。困ったことがあったら頼ってね！」

「え、ちょっと、何か指示とかないんですか？」

　あわてて確認すると、女神さまはきょとんとした顔した。

「私にあれこれ言われたくないでしょ？　フリーシナリオが好きなのよね？」

「それはそうですけど」

　本当に、なんでも知ってるな。

「こういう場面では、大体女神様からのお使いイベントがあるもんですよ」

「自分から聞いてくるとか、気の利いた信者ね。うーん、じゃあ、一個だけ。強くなりなさい！」

「それが命令ですか？」

「命令じゃないわ。これはただのお願いよ。私の信者はあなた一人なんだから、簡単に死んだら許さないわよ！　あなたには期待してるから」

　ウインクをして「グッドラック」と言って親指を立てながら、女神は消えて行った。

　◇

　朝起きると、枕元に抜き身の短剣が落ちていた。

　あ、危ないな。

「あれ？　これ昨日のゴブリンから奪った短剣じゃないか」

　錆びてボロボロだった短剣が、綺麗に生まれ変わっている。

　おそるおそる、手に持ってみる。

　軽過ぎず、重すぎないちょうど良い重みだ。

　手に吸い付くように馴染み、身体に魔力が満ちてくる気がした。

　魔法武器かな。

　薄く青みがかった刃が、不思議な光を放っている。

「女神様、ありがとうございます」

　日本人の癖で、両手を合わせてお祈りをした時、右手に淡い紋章が浮かび上がっていることに気付いた。

　犬のような動物が、短剣を咥えた紋章だ。

　初めて見る紋章だが、あとで調べてみよう。

『魂書』に、女神の眷属と書いてあった。

　夢ではなかったようだ。

「あれ？　高月さん、短剣なんて持ってどうしたんです？」

　おっと、危ない。

　商人が起きているのに、気が付かなかった。

「ああ、ちょっと、女神さまにお祈りを」

「私も祈りますね。幸運の女神様。高月さんと出会えたことに感謝を」

　オーバーなと思ったが命を救ったのだし、大げさでもないのかな。

「さあ、出発しましょう。昼には街に到着すると思いますよ」

　◇

――水の街マッカレン。

　この大陸では、20番目位の大きさの街である。

　精霊の森と大森林からの流れ出る川が運河になりやがてシメイ湖へたどり着く。

　その湖の畔にある美しい街。

　街の中をたくさんの水路が駆け巡り、人々は移動に渡し船を使う。

　酒造が盛んなことでも有名であり、マッカレン産の火酒は大陸全土で親しまれている。

　そんな話を商人から聞いた。

「無事に着きましたね。高月さん、本当にありがとうございました」

「こちらこそ、色々教えてくれてありがとう」

　街にたどり着くまでに、街の権力者の情報、冒険者ギルドの場所、武器、アイテムが安く買えるお店、美味い飯屋、手ごろな宿屋の情報を聞くことができた。

　ついでに女神様にもらった短剣を見てもらったが、彼の『鑑定・初級』スキルでは、よくわからないと言われた。

　商人は、自分の商会に戻ると言って別れた。

　俺は、街の繁華街ある冒険者ギルドを目指す。

　ちなみに、街の中心にあるのは、教会だそうだ。

　水の国では、教会の力が強い。

　そのため、教会を中心に街が作られる。

　しかし、水の国が信じるのは『水の女神』であり、組織の中枢にいるのは、あの巫女である。

　俺は近づかんぞ。

　固く心に誓った。

　◇

　冒険者ギルドはすぐに見つかった。

　想像したよりも大きく、しっかりとした石造りの建物だ。

　中に入ると、広い開けた場所に、食べ物の屋台や、武器の露店販売が並んでいた。

　エントランスだろうか。

「おーい、一杯どうだい！　キンキンに冷えたエールがあるよ！」

「これは土の国で今朝、仕入れたばかりの業物だ。今なら1割引きだよ」

　活気がある。

　所々に簡易なテーブルがあり、宴会をしている人たちもいる。

　案内板を見ると、休憩所（泊まることもできる。男女は別）や訓練所、討伐した魔物の保管倉庫があるようだ。

　冒険者ギルド、イコール冒険者ライセンスを発行するというイメージから、自動車教習所のようなところを想像していたが、どちらかというと娯楽施設が併設されたスポーツジムだな。

　ライセンスの発行所は、クエストの受付所と同じ場所にあった。

　幸い、あまり人は並んでおらず、すぐに窓口に呼ばれる。

「こんにちは。本日はどのようなご用件ですか？」

　受付のお姉さんは、美人だった。

　周りの受付を見てもみなレベルが高い。

「冒険者登録をお願いできますか？」

「初めてのご利用ですね。では、こちらの紙に必要事項をご記入ください。あと『魂書』はお持ちですね」

　魂書を受付のお姉さんに渡した。

　名前、経歴、スキル、職業を書いていく。

「書けました」

「はい、ありがとうございます。確認しますね」

　受付のお姉さんは、名前と経歴「異世界」で少し驚いたようだったが、何も言われなかった。

「問題ありませんね。職業は『魔法使い見習い』のままでよろしいですか？」

「はい、そのままで」

「ライセンスの発行には、少しお時間いただきますので、番号札を持ってお待ちください」

　冒険者ギルドに新人が来ると、チンピラな冒険者に絡まれたりしないかと、キョロキョロ見回していたが、そんなことは起きなかった。

　何事もなく、冒険者のライセンスカードが発行される。

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高月まこと：魔法使い見習い

レベル：2

冒険者ランク：ストーン

ユニークスキル：『明鏡止水』『水魔法：初級』『RPGプレイヤー』

コモンスキル：『隠密スキル』、『探知スキル』・・・・

筋力：XX

体力：XX

精神力：XX

敏捷性：XX

・・・

・・

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　ゴブリンを倒したおかげで、レベル2になっていた。

　あとは、神殿で散々見てきた、平凡なステータスだ。

　弱いなぁ、俺。

　知っていたが、気持ちが沈む。

「まあ、いいや」

『明鏡止水』スキルのおかげで、気持ちの切り替えは早い。

　ライセンスカードをしまうと、冒険者ギルドを出る。

　よし、次の場所だ。

　向かう場所は、商人に聞いた『フジワラ商店』。

　そう、クラスメイトで友人のふじやんは、すでに自分の店を持っていたのだ。