ある日のパパと娘
泪視点です。
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「れーい、今日はパパと一緒にいましょうね♪」
「ぶー」
「何よ、アタシじゃ不満なわけ?」
「あー」
にっこり笑った麗を見て、ああ、アタシって言わなかったのが不満だったんだな、と思った。
「お圭ちゃんはじーじのところだから、夕方には会えるわよ」
「あー♪」
手を振った麗を見て、麗もお圭ちゃんが好きなのね……と思わず笑ってしまった。
圭は今、小田桐に行っている。圭曰く、毎年インフルエンザを持ち込む馬鹿な社員がいて、例によって例の如く、今年もインフルエンザを持ち込んで秘書課の人間にうつしたというのだ。
かからなかったのは、早めに予防接種をした義父と義弟及び、三人の社員だけだったという。
圭は麗がいることもあってとっくに済ませていたし、たった五人では行き届かないことも出て来たために、義父は小田桐社長と父に相談したうえで、一時的に小田桐に来てもらうことを決めた。
瑠瀬姉にもらった揺りかごに麗を入れて、自分の事務所兼書斎に連れて行くと、太田が顔を出した。
「麗ちゃーん、トリックオアトリート!」
「ぶー」
「……太田」
「何ですか?」
「麗に嫌われたわね」
「麗ちゃん、厳しいなあ」
「それに発音悪すぎ! あんた英語得意でしょ?」
「うわ、薮蛇」
変な顔をした太田を見て「あー♪」と機嫌良く笑った麗は、決して太田が嫌いなわけではない。いつもは変な顔をして麗をあやすのだが、どうやら麗は太田のそんな顔を面白がっているようで、それが癖になっているようだった。
「ハイハイ、太田も変な顔をしてないで、きっちり仕事をしてちょうだい」
「はい。じゃあ、麗ちゃん、バイバイ」
「あー♪」
「さて。パパもお仕事しなきゃね」
「ぶー」
「なあに?」
不満げな声を出した麗の顔を覗くと、「あー」と言って足を動かす。
「うーん……Trick or Treat」
「う?」
「お菓子をくれないと、悪戯するわよ?」
「きゃー♪」
クスクス笑いながら麗のお腹を擽ると、麗は笑いながらもはしゃぐ。
「今度はここかしら?」
指で手のひらを擽ると、きゅっと握られた。
「あー」
「ふふ。全く……可愛いんだから♪」
麗のおでこにキスをする。それは、おやすみの合図でもある。
「さあ、アタシはお仕事をするから、少しだけ眠ってちょうだいね」
「ぶー」
「んー、それじゃあ、パパのお仕事してる姿を見てる?」
握られていた指を抜いて揺りかごを引き寄せると、自分の顔が見える場所に置く。
途端に機嫌よくなった麗に笑ってしまう。
(お圭ちゃんにはどんな悪戯をしようかしら)
時々麗をあやしに来る事務所のメンバーに麗を任せつつも、自分でも時々麗をあやしながら圭にどうやって悪戯をしかけようかと考えながら、仕事をこなした。
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※短いので、二話同時更新です。
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