終章 結果 

 部屋には一人が吊り下がっている。揺れることなく、ただ静かに、重力に従っているもの。かつて人間だったもの。

 穴という穴から汁が垂れ、顔は紫色から黒色に変色しつつある。

 夏の暑さが腐敗を促進させている。すでに部屋には皮脂が腐ったような臭いが充満している。これが腐敗臭に変わり果てるまで、そう時間はかからないだろう。

 僕は僕だったものが変わり果てる様を、無感動に見つめる。

 お姉さんも、こんな感じになっていたのだろうか。

 ねえお姉さん、お姉さんの時はどんな感じだった?

 隣に立つお姉さんに問う。

 お姉さんは静かに微笑み、小首を傾げるばかりだった。

 僕はお姉さんのその可愛らしい所作を見て、それ以外のことはどうでもよくなる。

 お姉さんが隣にいる。それでいい。

 お姉さんの隣に、お姉さんに限りなく近づいた僕がいる。

 万事、上手くいっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣のお姉さんが死んだ話 むむむ @Ankou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ