第6話 要らないのかな

にい、は不満げな感じで歩いて行く。

さっき気が付いたけど、にい、の手には傷が有った。

それだけじゃ無く、泣いた跡もある。

その後ろを私は付いて歩く。

幾ら心配しても変わってあげられないもどかしさが。

私の胸をチクチクする。

とっても。

チクチクする。


「.....にい、大丈夫?」


「.....あまり大丈夫じゃ無い。イライラする」


「.....だよね.....」


空を見て、それから決意して。

私は、にい、の手を握ろうとしたけど。

駄目だった。

弾かれちゃったよ。

とても怒っている様に見える。

私は心配げな顔付きをしてから、聞いた。


「.....大丈夫?何か.....手にも傷が有るから.....」


「.....母さんは.....なんでアレが母さんなんだ.....何も.....勉強が出来ないって事を.....分からないんだ!」


アレ。

自分の母親を表現した、にい。

私は絶叫を上げた、にい、を抱き締める。

ちょっと恥ずかしいけど、今はそんな事を言っている場合じゃ無いね。


「.....落ち着いて.....私は.....何時もの、にい、が好きだな」


「.....」


「.....あ、そうだ。良かったらまたアニソンのCDを貸して?」


「.....」


こんなにイライラしていたら私だけじゃ無理かも知れないけど。

私がやらないと駄目だ。

だから私が解決しないと。


「.....にい。学校、サボろっか。もうちょっとしてから学校行こう」


「.....何?」


私は驚愕している、にい、の手を握った。

やっと振り向いてくれたね。

こんな事は勿論、教育には悪いと思う。

だけど、こんな、にい、の姿を見ていられない。


「.....学校サボるなんて.....ふふっ。ワクワクしちゃう」


「.....でも.....母さんにバレたら.....俺が怒られる」


「.....あまり派手に動かなかったら大丈夫だよ。監視されているとかじゃ無いし。それに体調が悪かったって言えば良いしね」


その様な事を言って。

私は、にい、の手を握る。

そして笑みを浮かべて、駆け出した。

学校とは反対の方向に。


「イルカ.....」


「.....私は、にい、の悲しい顔を見たく無いだけ。だから大丈夫だよ。何も心配しない事!良いわね!?ってね!」


「.....ああ」


そして私達はそのまま駅にやって来た。

此処から何処に行こうかな。

やっぱり秋葉原かな。


「.....秋葉原行く?」


「.....そうだな.....」


私は教育方針が間違っているかも知れないけど、にい、が泣く姿は見たく無い。

だから私は教育をすっぽかすのも良いんだ。

半分の時間ぐらい良いよねと思う。



「学校に行くのが重苦しいな.....」


「.....そうだね。にい、にとっては地獄だよね」


秋葉原に行って4時間ほど楽しんで。

荷物を鞄に隠して、帰って来た。

機嫌はそこそこ良くなったよ。

それから、私達は歩いて行くけど。

にい、の足はあまり気乗りして無かった。

嫌な事の後だからだね。

私はギュッと手を握ってみる。


「.....にい。私が居るよ。だから安心して」


「.....暖かいな。お前の手」


「.....そう?良かった」


私は笑む。

にい、も笑んだ。

それから、私達は学校を目指して歩いて行く。

その時だった。


「.....イルカ。お前は俺の事が大切なのか?」


「.....え?あ、うん。当たり前だよ。だって、私は.....にい、の事が好きだから」


「.....苦労はしてないか?」


「.....どうしたの?いきなり」


私は気になって、聞いた。

ん、まぁ.....その何だ。

と言い澱む、にい。

それから、頬を掻いて、私に向いて来た。


「.....俺は.....お前に苦労を掛けている気がしてな.....その.....俺は.....生きていて良いのかな.....」


「.....!」


その言葉は。

とてもショックだった。

私は困惑してしまい。

俯いた。


「.....そんな事.....無いから.....そうはさせないから!」


「.....イルカ.....」


「だから、そんな事を言わないで.....」


どれだけ苦労しているのだろう。

私はその様に思いながら。

涙が止まらなかった。


「.....それなら.....良いんだ」


「.....うん。お願い」


私はギュッと握る。

すると、にい、がその手を握って。

そしてキスをした。


「.....ふえ!?」


「なんか、小説に書いてあったから真似してみた」


「.....も、もう!変な事覚えない!」


その様に言ったけど。

心底嬉しくて。

私は手を赤くなりながら、撫でた。

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