第4話 私達の家の事

そう言えば私達の家の事を話して無かった。

にい、の家の人は、にい、の自閉症スペクトラムを今でも認識出来ないみたいで。

将来の為に私や、私の親が代わりに、にい、を病院に連れて行ったんだけどね。

でも、証拠を見せつけても認めなかったんだ。

今でも、にい、は家に帰るのが嫌みたい。


「.....今日も来る?にい」


「.....そうだな」


だから、よく私の家に、にい、はやって来る。

年頃の女の子の家に男の子っていうのもおかしいかもだけど、私は全然気にしない。

そんな事を、にい、が気にしないっていうことは知っているから。

言っちゃ駄目だけど、可愛いんだ。

にい、がとっても愛おしい。

だから私は。

必死に説得しているだけど。

にい、の家族は聞いてくれない。

認めたくないんだと思うけど。


「.....」


「.....どうした?」


「だ、大丈夫だから!気にしないでよね!」


ツンデレをしながら。

私は私の家に入って行く、にい、の背中を見る。

複雑だった。

本当に複雑な日々だよね。

にい、を認めたくないのは分かるけど、にい、の気持ちも。

考えてほしいって思う。



「今日はトンカツよ」


「わあ、良かったね。にい」


「.....豚.....か.....」


少しだけ台所に向いて、直ぐに顔を背けちゃった。

にい、はリビングでとても熱中している。

何に熱中しているかって?

ライトノベルだよ。

私の側でずっと読んでる。

でも、そろそろ勉強しないと。


「.....にい、勉強しないと」


「.....」


一度ハマっちゃうと抜け出せないんだよ。

それに、ハマっちゃうと抜け出して、勉強するスタイルに入るのが大変。

臨機応変が苦手なんだよね。

でも、勉強はしないといけない。


「.....勉強しないなら私、あっち行くからね!」


ツンデレで対応してみる。

すると、にい、は目だけ向けてきた。

私はチャンスと思って、にい、に向く。

そして勉強道具を取り出した。


「.....にい、お勉強しよ」


「.....そうだな。ちょっと待ってくれ」


一呼吸、整えて。

そして、にい、はキッチリと荷物を置いて勉強の体制に入った。

私はそれを見ながら、勉強を教える。

勿論、私も勉強をするけどね。


「.....英語と数学は苦手.....いや.....全科目か」


「.....いや、全部が苦手じゃないじゃん。だって、保体好きでしょ?」


「.....」


苦手の分野の差が激しいんだよね。

0点が続いたりとかもあった。

私はそれを防ぐ為に、無理じゃ無い範囲で全科目、教えているんだ。

そのお陰で一応、にい、は赤点が防げてる。

でも英語のリスニングとかは相変わらず苦手みたいで。

0点が続いてる。

だから私はリスニングは放ったらかして、英語は他で穴埋めしてるの。

ノートも貸したりして写させてる。


「.....毎回毎回すまないな」


「.....うん、大丈夫だよ.....あ、大丈夫なんだからね!」


「.....ハハッ」


にい、は保体に対する強さは凄いと思う。

教科書のページを捲っただけで100点が取れるんだから。

だからそれだけ活かせば他はどうだって良いんだ。

でも、一応、学校で必要だから教えているんだけどね。


「にい、美味しそうな匂いだね」


「.....」


「駄目か」


熱中している、にい。

私はその様に思って、苦笑してから。

教科書を読んだ.....って。


「.....キスシーン.....」


教科書に偶然に絵でキスシーンがあった。

私はモヤモヤと頭に浮かべてしま.....。

直ぐに首を振った。

ダメダメ。

集中しないと。


「.....にい?」


「.....」


よく見ると。

にい、もキスシーンを見ていた。

私はそれに少しだけ緊張して、それから直ぐに教科書を閉じさせる。


「.....あまり見ちゃ駄目だよ。にい」


「.....なぁ、イルカ.....お前.....色々な奴らに告白されていたんだよな?大変だったな」


「.....ふえ?」


そんな労いの言葉を聞くとは思わなかった。

私は目をパチクリして、赤面する。

横を見て、そして目を潤ませる。


「.....有難う.....」


「.....は?」


「.....な、何でもないわ!深追い禁物!!!!!」


ツンデレで返す。

だけど、曖昧なツンデレになっちゃった。

何だろう。

心臓がバクンバクンと、かなりマズイかも。

そんな事を心配されるって思わなかった。

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