第3話 例えば、その一歩とて

例えばその一歩は、にい、にとっては物凄い苦痛だったりする。

アニメのグッズをただひたすらに拘るとそればかり集めたりするの。

それは普通の人が(あ、このアニメ面白い、だからグッズも集めよう)とかそんな感覚じゃないんだ。

ただ、一度、拘ったら拘った物だけ集めて。

飽きたらそれらを全て捨てて。

そしてまた別のハマった物を大量に搔き集める。

そんな感じだから、にい、のお金が全部無くなったりするんだ。

自閉症スペクトラムって、ただ自閉症スペクトラムと言って簡単に終わらせたら駄目な病なんだよね。

でも、決して悪い事が自閉症スペクトラムじゃ無いんだよ。

だって、例えば、絵が好きな子が居て拘っているってなったらどうなると思う?

多分、絵はメキメキ上達していくと思う。

だって、その子は要するに(絵)にしか興味ないんだから。

それが悪い事だって思うんだったらその考えをしている人はおかしいと思う。

拘りが強いだけで普通の人と何ら変わりは無いんだから。



にい、もその1人で拘りが強いんだ。

例えば、好きなアニメだったらグッズを全部かき集めないと気が済まないとかね。

だから私が気を付けて、なんて言うけど。

なかなか無理があるんだ。

私達はア○メイトの中を散策して居た。

個性的な可愛い女の子、かっこいい男の子で二次元がいっぱい、人もいっぱいだね。

だけど、にい、は人が一杯なのは今は気にしてないみたい。

ただ、さっき回ったばかりのグッズ売り場から離れないけど。


「.....にい、それ.....この前も買わなかったっけ?」


「.....いや、万が一の為にもう一個、買っとこうかなって」


「お金無くなるよ?」


私は少し心配げに話す。

にい、は首を振って目の前の事に集中している。

私はうーんと悩んで、それから閃いた。


「.....にい、私の持っているの一個あげようか」


「.....え。お前の.....?」


「うん。綺麗だよ。私の持っているの。コレクションだけど、また買いに来れば良いしね」


にい、は顎に手を添えて悩んで。

それから、グッズを手放した。

私は一安心しながら、にい、を見る。


「.....同人誌、見に行かない?あ、でもあまり.....アレなのは禁物だよ」


「分かってるさ。買わないよそんなものは」


「うんうん。なら出発だね」


にい、の手を引いた。

とら○あなに出発。

それで同人誌を見よう。

私も色々見てみたいしね。



私は方向を指差す。

どっちか分からなくなっちゃった。

どうしようかな。


「○らのあなってこっちだよね」


「そうだな.....」


「.....うん、じゃあ行こうか」


少し疲れているみたい。

とらの○なに寄ったら帰ろうかな。

でもその前に、にい、に状態を確認するのに聞いてみよう。


「.....もう帰る?」


「.....まだ大丈夫だと思う。多分だけど.....な」


私は立ち止まって、にい、の表情を、行動を確認する。

にい、は若干、体調の面に関して不安視している。

直ぐに私は判断して、夕焼けを見て踵を返す。


「やっぱ帰ろっか!」


「.....え?いや、まだ大丈夫.....」


「帰るのよ!べ.....別に貴方の事を心配している訳じゃ無いんだから!.....ってね」


そんな私の言葉に、にい、は見開いてから少しだけ(笑んだ)の。

私はその様子にかなり驚いちゃった。

にい、はあまり笑まないから。

笑った事に驚愕した。


「.....凄い.....」


「.....何が?」


「.....あ、ごめん。ちょっと涙が.....」


私の突然の涙に。

少しだけ慌てる様子を見せる、にい。

久し振りに笑ってくれたね。

とても嬉しく思えたよ。


「さ、帰ろう?明日も学校あるしね。大変だと思うよ?」


「.....そう言うなら帰るか」


「.....うん」


にい、の手を引いて。

そして歩き出す、私達。

明日も学校が有るから、にい、が体調を崩したらいけないから。

気を付けないとね。

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