第7話 私の小さなセカイ
走馬灯が駆け巡ってきた。
だろうなと思った。時が遅くなる。命がマジでヤバイ。こんなんフラグだよ、フラグ。絶対見せにかかってくると思ったよ、コッチは。
と死ぬって事が突然、不意打ちに来てしまったものだからどことなく斜に構えてる自分がいる。
どれどれ、いったい何を見せて、くれるんですかね!?と若干ポップな感じでテンションが高揚してる私は私の精神世界?(としか言いようが無い)のスクリーンに映し出されるモノを待った。
「いっだーーーーーいいい!!!いだいよおおおおおおおおお!!!!!」
公園の砂場に鮮血が舞う。腕を犬に噛みつかれ幼い金髪ツインテールの少女があまりの痛さに叫びながら転げ回る。
「うわぁあーーー!!死んじゃう!!!死んじゃうよぉ!!!!助けてえええ!!!!!」
その姿を後ろから見ていた少年は、目の前にあるい痛々しく非日常な光景に恐れたのか、狂ったように泣き叫んでいた。
少女の血のしぶきが顔にかかり、更に発狂の拍車がかかり、そして気絶した。
少女はと言うと大量の失血からか先程までののたうち回り泣き叫んでいた姿が嘘みたいに砂場で生まれたての子鹿のようにうつ伏せに倒れ込んでいた。
「--------」
弱々しく少女が言葉を発する。私は聞きとれなかった。
「--------」
先程よりも強く少女が呟く。まだ私は聞き取れない。
ぐるるるぅとまるで腹を空かせたかのように鳴いてる犬が少女の方へと歩みを進める。狙いは定まった。
傷つき血塗れになっている少女は、瞳に涙を浮かべながら大きく叫ぶ。
今度は聞き取れた。
タスケテ、アスカチャン。
聞こえた!!聞こえたよ!!エミリー!!!!
「こおぉおんなぁぁあ!!ゆぅめぇええ、見てる!!ばあい!!じゃっっっっ!!!ねぇえええええええぇえええええ!!!!!!」
覚醒。瞬時、共に宙を舞っていたバイクを蹴り上げ浮遊からの脱出をする。
ギャルルルルルッ!!!!バイクは地に落ちるとその衝撃で回転しながら転がる、壁にぶつかる、やっと止まる。
私もスピードを殺しキレず、咄嗟に体育の柔道の時間に習った受け身をしながら転がる。はだが切り裂かれる。血が飛び出る。痛い。イタいイタい。
倒れ込みながら辺りを見回す。目を見開いて驚愕を隠しきれない、拘束されてる先輩とそれに銃を向けているメイドのクソばばあ。
その少し離れた所に倒れ込んでいる金髪ツインテール、何より両腕が黒い鉄腕の少女。いた!!!!!
少女も最初は突然来訪者(つか私)に驚愕するが、それな誰であるか分かる(つかやっぱり)とダムが決壊したかのように泣きながら、その誰かへ(やっぱり私に)叫ぶ。
「ダズゲデ!!!!!アズガチャン!!!!!」
あったりめぇええよ!!!!!!
私は興奮が抑えられなくなってる。
体の至る所から出血している体に鞭を打って、倒れてるバイクの方へおもむろに歩く。そして備え付けてあった金属バットを手に取る。
-そうこのバットはあの時も。
また過去の公園へと舞台が移る。
「うわぁああああああ!!!!!!」
金髪の少女へと襲いかかろうと助走をかけてた八重樫さんの犬、ケルベロスへバットがフルスイング。ホームラン級の衝撃。
「エミリィイイに何をすんじゃぁああ!!!!!!」
黒髪の少女が金属バットを立て続けにケルベロスへと叩き込む。
たまらず犬はキャインと弱々しく悲鳴を出して逃げていく。
黒髪の少女は、泣きながら。呼吸を荒らして。体を振るわせて。叫んだ。-そうソレは私だ。
-だから私は今また同じ言葉を繰り返す。血塗れになりながらも。予告ホームランをするかのようにメイドのトメへとバットを向ける。
「エミリーは私が守る。てめえ、ぜってえ許さねえ」
クラスの私のファンには見せられない私の修羅の形相。私はコレがライブ通信してる事なんてこの時、頭の片隅にも無かった。
ただエミリーを泣かすヤツは絶対許さない。私の世界はたったソレだけになっていた。
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