第6話 カオスダイバー
「待ちなさい‼︎飛鳥」
いーや私はもう待てませんよお母さん。止められない止まらないヤバイ止まれない状態になってるのよ、私は。と興奮状態で駆け出そうとしていた私の腕を掴んで無理矢理お母さんは止めた‼︎
「止めないで!!」
「止めないわよ‼︎エミちゃんがピンチじゃない」
あっ止めないんだと少し私は冷静さを取り戻した。
お母さんさんは娘を叱るような語調で私に聞いてきた。
「まさか走っていこうとしたの」
「ウン」
「そんなんじゃ間に合わないわよ‼︎コレ!使いなさい‼︎」
お母さんが何かを投げる/キャッチをする私/→手のひらには何かの鍵。
お母さんは私の腕を引っ張って家の裏の物置に連れて行く。
ガラァと開ける。
「コレ、乗ってきなさい。」
そこにあったのは、まぁきょうびの田舎でも見るのは珍しいゴリッゴリのヤンキーなバイク、族車だった。ヨロシク。
「いや……オカーサン、私未成年てか免許無い」
少し引き気味で私はお母さんに言う。
「気合でどうにかしなさい。というか私知ってるわよ。あなた偶にお父さんのKawasakiこっそり乗ってるの。それ見て私思ったよ、血は争えないって」
ヤバイ。バレてた。ヤンキーとヤンキーの子供もヤンキー的なモノに憧れるのか。実は私はヘビースモーカーでもあるのだ。コッチはバレてませんように。吸ってるタバコはハイライトメンソール。
「お父さんのより全然コッチのが速い。特攻天女 香織とはお母さんの事よ」
と私の中学の先生かつお母さんの同級生だった種田先生が以前語っていたお母さんの渾名が真実だと言うのを今、知ってしまった。
「大丈夫。お母さんの娘ならこのコだっていう事を聞いてくれる。だから行きなさい」
未成年に犯罪を助長させる。なんて親だ。
「大切な親友が困ってる時はすぐに助けにいくものよ。そして一緒に泣いて笑っていつも一緒にいるものよ」
そしてやっぱり私の親だ。血はやはり争えない。
「モチロン!!!!!!」
母の相場に跨る。即エンジンがかかる。コレは私がいない時にチョコチョコ弄ってたなと自分の家の商売は大丈夫なんだろうか?と少し思う。あすかセットをまた売り捌かなきゃか?と。
「エミリーを助けに言ってくるね」
轟音。そして疾走いや爆走。
張り裂けるくらいに聞こえる私の心臓音。
怖いと言う恐怖心がせり上がってくる前に。風になれてる事の楽しさ。が込み上げ興奮が体を包む。
轟音。
目の前。カンカンカンとこの街には珍しい踏切の信号音。構うか踏切が下がり切る前にアクセルをさらに加速させる。突っ切る。
補装が行き届いてない緑広がる畦道を音速で突っ走る。
止まれない。止まらない。止まってやらない。
言わなくちゃいけない。叱ってやらなきゃいけない。もしかしたら叩いちゃうかもしれない。けど抱きしめて一緒に泣いたらたぶんダイジョウブ。
だって私達は一番の友達だもん。
終わったら向き合おう。私も先輩が好きだって。……けどエミリーも好きだから辛いって事も。
加速する。するする。バイクの喧しい音が私の心臓音と重なる。シンクロする。心が踊っている。
まだする。加速する。風を切り裂いて痛い。けれどそれが気持ちイー。
私達だったらやり直せる。ううん、やり直すも何も変わってない。……エミリーが好きって事も。これからも隣に居続ける事も。なーにひとつ変わってないし変わらないんだ。これからも。
坂が見えた。ココを上がれば工場だ。周りは野次馬と多分マスコミの人、警察もいた。
警察が道をバリケードを封鎖していた。
邪魔!!!!!私の邪魔をするな。
私の存在に気づいて、警察は何か騒いでいたが、聞こえない。アクセルを限界まで踏む。踏み込む。
止まらない私に気づき焦り蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げる人々。
バリケードをぶっ壊す。ざまぁみろ、私はそんなんじゃ止まらないんよ。
坂を駆け抜けると工場が見えてきた。右側に灯りの着いた部屋。割られた窓が目に止まる__あそこだ!!
ガツッ!!
余所見をして気を取られていたのか。タイヤ石か何かに引っかかり。
次の瞬間。宙に浮いていた。バイクごと。
あっヤバ。コレ死ぬヤツだ。とどこか冷静になってる自分がいる。
時が遅く感じる。けれどどうすることもできない。私とバイクが弧を描きながらエミリーが破った窓の方へとスローモーションで進んでいるのが分かる。
コレマジでヤバイヤツだ。ルックバックアゲインもアイルビーバックもできそにない。
ぇえええ!!?どーしますよ!!!???私の命散っちゃいますよぉお。
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