Observer: L
05 揺りかごに眠る者は
幾つかは導入時に予想外の挙動を見せたものの、その後、
そうでなくては困る。この作戦が始まるまでに私たちは、二桁の人数を犠牲にしてしまった。彼らのためにもこの事件は必ずものにしなくてはならない。
「
各クレイドルの監視をしていたAI、
「終了の状況は?」
「情報収集中、自警団に遭遇した。徐々に警戒レベルを上げているとみていい」
「BOTなの?」
「多分な。装備は増えても、モデルが同じだ。同じ顔をしている」
「あら、手抜き」
「そうでもない。住人たちには通常見られることがないんだ。顔がついてるだけ凝ってるよ」
「ふん。
「ケツは切れたが、途中まではちゃんと取れてる。だが
送られてきたデータは直ちに本部に共有される。これまでに判明した情報から、大掴みではあるが既に現実の位置情報を絞り込む作業も始められていた。
私は終了した
私たちが追う犯罪組織、通称『バルビエル』が独立のネットワークを持っているということが分かって以来、私たちはそのネットワークへの潜入方法を探り続けてきた。それが意識ごとダイヴし仮想現実に入るタイプのものだということが分かると、私たちはバルビエル内部から苦労して技術者をスカウトし、ダイヴに必要な装置を作らせることにした。
まあ、犯罪組織らしい発想ではあった。ネットワーク使用中は身体が眠っているから、組織は身体の方を人質に取っておくことができる。
潜入した
バルビエルのネットワークは、巨大な高層スラム建築の姿をしていた。かつて香港旧市に実在したという巨大スラム建築などがモデルらしい。非常に雑然としており、過密で、迷路のようで、広大。外界との緩やかな敵対にも違和感がなく、出て行こうという気が起こりにくい世界観だと
そのスラム世界には、たくさんの住人が暮らしている。ただネットワークを使うだけならまるで必要がないほど高度に洗練された仮想現実の中に人が住んでいる。
はじめ、
スラムの
私たちはそれを、
BOTは
この
BOTと人間が混在するスラム街の中で、
引き続き収集された
そしてある日、鍵は星が持っている、という言葉を送ってきた直後、
しかし、彼が稼いでくれた数ヶ月の間に
今、潜入した工作員たちは新たな
星。
さそり。
腕の死。
それから、様々な場所に現れる脈絡のない数字。これがどうやら、位置情報に繋がりそうな様子だった。
もしかすると
そもそもバルビエルのネットワークの存在を私たちが知ったとき、そこにダイヴする方法は推定できたものの、出て来られる確証はなかった。これまで知られている類似の構造から推測するならば、一度入った者が出てくるためには、構造内部にある解除コードを必要とするはずだった。
つまり彼は、単身潜入して、予想される異分子排除システムに抹消される前に、自力で解除コードを発見しなければ無事に帰還することができない。可能性はきわめて低いと考えられた。
それでも行くと彼は言った。どんなことをしてもこの組織を摘発し、被害者を救わなければならないと。
解除コードを入手できないままスラムの中で死んだ場合にどうなるのかも、ダイヴ当初は分かっていなかった。だから、スラムでもし殺されればそのまま本当に死ぬ可能性もあった。
結果として彼が
新たに送り込んだ工作員たちが解除コードを手に入れることができれば、あるいは彼を助けることもできるかもしれない。
その
しかし、スラムの空に星はなかった。
星の名がつく街路や地区もない。
人の名前、店の名前、様々に星のつく名前を工作員たちは検証しているが、今もって何のことなのか分からない。
星とはなんなのか。
鍵は、どこにあるのか。
「八台目だ。
「
「取説だけだな」
終了していないのは、あと二台。
そのうち一台は導入時にトラブルがあり、予定通りに行動できているかどうか心もとない。
私は唇を噛んだ。
お願いだから、間に合ってくれ。
解除コードを探し出して、何とか伝えて。
私に、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます