01.「見知らぬ天井」

適合


 見渡す限りが灰色だった。


 一面の雲に覆われた空も、それの所為で太陽の光が届かなくなった地表も、みんなみんな、灰色だった。


 空からチラチラと舞っているのは灰だろうか。地表はやたら凸凹しているのは、ひょっとしたらその灰が降り積もった影響なのかもしれない。


 倒れ伏した人の形をしていたり、突き刺さった剣の形に似ていたり。形のバリエーションに富んでいるそれらの間からは、ところどころ黒い煙が上がっている。まるで戦場の跡のようだ。


 軽く触れてみると、灰の隆起はそれだけで簡単に崩れてしまった。剣も人も皆等しく、触れた先からボロボロと形を失っていく。崩れた後には何も残らず、まるで灰色の砂が敷き詰められたような、平らな地表が残るだけだ。


 一歩、また一歩と気紛れに歩を進めれば、灰のオブジェクトはどんどん崩れ、物々しい戦場の中に寒々しい荒野が広がっていく。巻き上げられた灰はしつこく纏わり付いてきて、まるで意志でも持っているかのようだ。


 ブスブスと音を立てている煙が、不意に風に流されたのはその時だった。特に脆いオブジェから風に巻かれて崩れ去り、灰になったそれらは、ざぁっと悲鳴のような音を立てながら宙を舞う。


 灰が目に入るのを嫌って目を閉じれば、ふと誰かに見られているような気配を感じた。


 疑問に思い、自分が足跡を残してきた背後を振り返る。



「────!」



 そして、見た。



.


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