第24話 おんぶ

 それから約一時間ほどが経過して、


「う……?」


 学は目を覚ました。


 体が上下に揺れている? そしてなんだか血の匂いがする。一体ここは……。


「うぐっ……」


 次の瞬間学は全身に激痛を感じた。そうだ、学は小型のヘリに腹を撃たれ、さらには牧師に押されて崖から落ちてしまったのだった。


「学! 起きたの!?」


 左右に揺れていると思ったら学は誰かに背負われているようだった。この背中、そして目の前にある血だらけの髪は……


「砂音……?」


 顔を上げると目の前にある頭には痛々しい大穴が開いていた。そしてその中を除くと中には小さな人間がいて学の方に目を向けてきた。


「動かないでね。学、今死にかけてるんだから」


 ソルトだ。声は砂音ではなくソルトから発せられているようだった。ソルトは頭にヘッドギアのようなものを装着している。


「一体……どうなって……」


 学はかなりの量の血液を失ってしまっているのか、喋る気力すらほとんど湧かなかった。ただなされるがままに運ばれていく。


「崖下に落ちた学の元に向かったら学が死にかけてたから、私、この体にまた戻って学を拾い上げたってわけ」


 どうやらソルトは郷子から逃げおおせたということらしい。


 それにしても砂音はかなり華奢だが、学を背負って長距離を歩けるだけの力を持っているのか。小人によって操縦されているので体を限界以上に酷使出来てしまうのかもしれない。


「移動するのツラいかもしれないけど我慢してね。その程度の傷だったら私たちのホームに戻ればすぐに回復出来ちゃうから」


「俺を……助けてくれるっていうのか……お前を殴って……教授の元に持って行こうとした俺を……」


「うん……だから安心して、今は安静にしてて……」


 そして学の意識は再び途絶えてしまったのだった。




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