第32話 友人Mの話

友人Mに聞いた話を…


何時もオチャラケているMが元気なく真剣な顔で話しかけてきた。

雨でも降るんじゃないかと、いや、雪が降るんじゃないかと思えるほど珍しいことでした。


「Sさんは幽霊とか見えるんですよね」


「たまにね」


「ちょっと相談に乗ってもらいたい事があるんですけど、聞いてもらえますか」


長引きそうなので会社の休憩時間じゃ足りないということで帰りに食事がてら相談に乗ることに。

仕事も終わり、焼肉屋へ。


「で、相談って何」


「実は今付き合ってる彼女の事なんですが、おかしいんです」


「Mの彼女だから面白いんじゃないの」


「いや、そーいうおかしいじゃなくて、変なんです」


「最初は、他人のそら似かと思ってたんですけど、買い物に行ってると通りの反対側に彼女が立ってこちらを見てる」


「それで手を振ると、全然反応が無いんです」


「確かに彼女に見えるのに全然無反応で」


「街中で見てるだけなら似てる人かな、で済ませられるんですけど」


「昨夜、家でトイレに入ろうと扉を開けたら中に彼女が立ってたんです」


「びっくりして扉を閉めたんですが、信じられなくてもう一度扉を開けたら居ないんです」


「それで直ぐに彼女に電話したら友達とカラオケに行ってると」


「最近、近づいてきてるんですよ」


「何なんですかぁ~」


焼肉を美味しく食べながら、聞いてましたが

要約すると、Mの彼女が生霊を飛ばしてる。


「M、お前浮気とかしてない」


「いや、してないです」


「誤解されるようなことは」


「いやぁ、無いと思いますけど」


しばらく、あーでもない、こーでもないと話てると


「あっ、そう言えば先月の休みに妹に買い物に付き合わされて、その時妹の友達も来てて、しばらく二人になった時があったんですけど」


「思い当たるのはそれくらいです」


「それを彼女がたまたま見ていたかも」


「それから彼女、何か変わったことない」


「そういえば何もしてないのに機嫌が悪かったり、距離をおかれたような感じはしてました」


「電話して訊いてみたら」


「そうします」


Mは席を離れて彼女に電話をしに行きました。

頼んでいた冷麺を食べていると、Mが帰ってきて


「Sさん、彼女見てたらしいです」


「やっぱり、しかしすごいね彼女」


「よっぽどMが好きなんだね」


多分、誤解が解けたらもう出ないだろうと解散しました。

その後のMは、彼女に見事なくらい尻に敷かれてます。




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