第31話 数日前

数日前の出来事。

趣味でパラグライダーなるものをしていて、土曜の晩は山に泊まりました。

昼間たっぷりと遊び、泊まるメンバー5人で風呂と食事のために山をおりました。

夕方6時頃に降りて、近くの温泉に行き、台湾料理屋で話し込んで山に戻る頃は10時をまわってました。


コンビニで酒や朝食を買い込み林道を上がります。

対向車との履行も場所を選ばないと出来ないくらい狭い道です。

もちろん照明などあるわけもなく。

車のヘッドライトだけが頼りです。


途中に九十九折になっている所があり、カーブを回りきる寸前に何か赤っぽい何かが前を横切り急ブレーキをかけ止まりました。

横切ったそれを見たのは、運転している私と助手席の友人だけで後ろに乗っているメンバーは気が付いていませんでした。


「赤っぽいの横切ったよね」

私が助手席の友人に訪ねます。

「2~30代の男だったよ」

友人には人と見分けがついたみたいです。

「轢いてないよね、衝撃もなかったし」

「消えたよ、当たる瞬間に」

「人…じゃないの」

「違うよ、おばけ」

「まじ……」

「まじ、まじ、早く上がろう」


今まで結構行っている山ですが、こんな経験初めてです。

何とか気持ちを落ち着けて、山小屋まで運転しました。


山小屋で半分出来上がってるメンバー達と酒盛りをし、みんなが寝落ちしだしたのは1時過ぎでした。

それぞれ部屋のアチコチで布団や寝袋を敷き寝始め、私も眠くなったので寝袋を用意して寝る前にトイレに行くことに。


トイレは外で少し離れています。

外は真っ暗で、トイレまで行けば電灯が点けれます。

トイレに着き、電灯を点け入ります。

用を足しているとき、不意に先ほど車で会ったことを思い出しました。

それと同時に、


バンッ!


トイレに扉が激しく締められる音が響き渡り、固まってしまいました。

考えます。

私の後ろを通らないと奥の個室には行けない。

電灯を点けたのは私です。


奥の個室から、ブツブツと男の声が聞こえてきます。


身支度も程々に小屋に走って戻り、寝袋に潜り込みました。

心臓はバクバクでとても眠れません。

周りからは寝息や鼾が聞こえ、多少は安心できました。


大分落ち着いてきた、その時、今度は階段を上がってくる足音が。


ついに2階に上がってきました。


ミシッ…ミシッ……ミシッ……


部屋の中を歩き回る足音がします。


誰も起きる気配がありません。

私も寝たふりをし、様子を伺います。


しばらくして、メンバーの寝息と鼾しか聞こえなくなったので目を開けました。

男は私の枕元に立って私の顔を見ています。

異様に血走った目で。

叫び声をあげ、逃げ出そうとしましたが体が動かせず。

再び目を閉じ、あんなに叫び声をあげたのに、みんな寝息や鼾をかいて寝ています。

誰も起きないのです。


どれ位経ったでしょう、体が動かせることに気づき目を開けると、先ほどの男は居ません。

安堵して、そのまま寝てしまいました。


朝になり、夕べ叫んだことをメンバーに話しましたが誰も気が付いていないのです。かなり長い間叫んでいたと思うのですが。


それっきりで、今は何も起きないので付いてきてないみたいです。


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