第26話 ビデオ

週末の夜、何時ものように友人たちと集まり遊んでいた。

その中の1人が、肝試しの場所を知り合いから教えてもらったから行かないか?

と言い出し、みんな刺激に飢えていたので行くことになりました。


そこは郊外の病院の廃墟でした。

5階建ての大きめの建物ですが、電気の点いていない建物はまるで巨大な墓石のようで不気味でした。

月も出ていなく、周囲は林と田んぼに囲まれていて外灯もなく漆黒の闇が広がってます。


男ばかり6人いるので、あまり恐怖感はなく、いい暇つぶし程度に考えていました。

懐中電灯はそれぞれ持っていて、一人がビデオカメラを回してます。

侵入カ所を探し建物の周囲を回ります。玄関は鍵が掛かっていて入れず、窓も鍵が掛かっていて、唯一階段を下りた半地下状のところの鉄扉が開いていました。


鉄扉を開け中を覗きますが、地下階のせいで真っ暗です。

懐中電灯で照らしながら入っていきます。

すぐに廊下がティーの字に左右に分かれ、まずは右の廊下を進むことにして部屋を見ていきます。

廊下の左右には倉庫や機械室などが並んでいて突き当りの一室が霊安室になっていました。

しばらく霊安室の扉の前で入る、入らないの押し問答の末入ることに。

中を覗くと何もなくガランとしていてコンクリートの壁があるだけでした。

机も何もありませんでした。

全員霊安室に入りアレコレと話、特に何も起きないので他を見に行くことに。


機械室や倉庫を探検していると金属が擦れるような音が響きました。

一瞬みんなの動きが止まり耳を澄ましていますが、もう何も聞こえてきません。

みんなここに集まってるので悪戯ではありません。


他にも誰かが肝試しに来てるのかもしれない。


階段を上がり1階へ、そして玄関ロビーへと

ロビーのベンチは開業当時のままに置かれていて、それぞれに座りこの後の経路の相談をしていました。

ロビーからガラス越しに外を見ていると、どちらかが異世界のような錯覚に襲われ少し怖さを覚えました。

その時玄関前を3人の男女が歩いて横切っていき、

やっぱり他にも肝試しに来てる人が居るんだ。

そう思っていました。


相談の結果は一度5階まで上がってから見て回りながら降りてくるというものでした。


階段を5階まで上がり病室や院長室や事務室みたいなところを見て回り、特に何もないので4階、3階と進んで2階へ。

病室をみてる時に、ふとある事に気が付き一気に恐怖が襲ってきました。


なぜ、さっき見た時に不思議に思わなかったのか、月も出ていない漆黒の闇夜に外灯もないこの廃病院の敷地を、懐中電灯も持たずに歩けるんだ?

なぜ、闇夜ではっきりと見えるんだ?


気が付いているのは、私だけのようです。

今話すと私もパニクルと思い黙っていました。


皆ワイワイと見て回り、ついに手術室を発見しました。

ドアは開いています。

少し戸惑った後に入っていきます。

私は、かなり怖さを感じていましたが後に続き入りました。

手術台やライト、機材は、そのまま残ってました。

その時、風が通り抜けました。

皆、風を感じたようで声が上がります。

さすがに怖さを憶えたのか、出ようということに。


手術室から外へ出るまでが異様に長く感じられ、外に出れたときは

漆黒の闇夜ですが、それでもほっとしました。


車に戻り、友人宅へ集まり先ほどロビーでの話をしました。

気が付いていたのは、私ともう一人だけで、他の4人は人が居たことにも気が付いてないんです。


これはビデオに何か映ってるんじゃないか?


みんなで観ましたよ。



病院内のいたるところに映ってました。

まず、外から玄関ロビーを覗いた時、ベンチに座っている人影が、霊安室は蝋燭の炎のようなものが、病室は黒い人影のようなものが蠢き、手術室は6人映っていて、

みんな声もなくなりました。


翌日、お寺にそのビデオテープを持っていきお祓いを受けました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る