第24話 ご先祖様

子供のころの話を一つ。


本家での話、その当時はまだ五右衛門風呂で、便所はポットン。

便所は家の中でしたが、家の裏側で廊下で繋がっていました。

便所に向かって右側は外に面したガラスの引き戸が一面に5メートル位あり左側は部屋の障子窓がありました。

右側の外は一段高くなって田んぼで畔のそばにお墓がありました。

本家は岡山の山奥なので、普通に田んぼの畔とかにお墓が点在してました。


お盆か正月で本家に集まってる時、夜中に目が覚め便所に行きたくなりました。

部屋の中は暗いオレンジ色の室内灯が点いているだけで、皆寝静まっていました。

仕方なく便所に行くことにして、暗い部屋を二つ抜けて便所へ続く廊下へのドアを開け廊下へと進んで行きます。

廊下にはなぜか電灯がなく、その時は月明かりがそこそこ明るかったと思います。

外には月明かりに浮かぶお墓が見えています。そのお墓は親戚のお墓でしたが、やはり夜に見て気持ちのいい物ではないので急いで便所のドアまで行き便所の電気を点けドアを開けます。

便所に入りすぐに小便器があり、奥のドアを開け大便器に進みます。

昔の便所の電気を知っている方なら解ると思いますが、昔の便所の電灯って暗いんですよね。


薄暗い中便器にしゃがんでいると、人の話し声が聞こえてきました。

何を話しているのか内容は解らないですが確かに2~3人の話し声が聞こえてます。

しかも外から。

いくら子供でも夜中にこんな田舎で人が出歩いていないことは分かります。

恐怖で固まっている中、外では話し声が、笑い声も混じっています。

声は聞こえているのに内容が理解できないんです。


早く人のいるところに行きたい。

早くこの恐怖から逃げたい。

用を済ませ立ち上がりますが、便所から出る勇気がなかなか出ません。

外から丸見えの廊下を行かなければ戻れないのです。


その時、ひと際大きな笑い声が聞こえ、弾かれる様に廊下へ飛び出し部屋の方へ走りました。

視界の端に何か青白いオレンジ色の何かが見えましたが、直視できるわけもなく布団に逃げ帰りました。


あくる朝、おばあちゃんに聞いてみましたが、みんなが集まって夜に騒いでいたからご先祖様が誘われてきたんじゃないかと…


ご先祖様なら怖がせないでほしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る