第21話 夜釣り

若かりし頃、夏の夜は川に夜釣りへよく行っていた。

川幅は100メートル位あり深さも2~3メートルと深いので歩いて渡ることはできない。

そんな川岸で夜な夜な朝方までランタンの明かりを頼りに釣りをしていた。

田舎なもので明かりは他になく真っ暗でした。


そんなある夜、何時ものように釣りをしていた。

夜でも蒸し暑い日で、川岸でもあまり変わらなかった。


12時をまわり、1時をまわった頃、対岸をオレンジ色の明かりが草むらを見え隠れしているのに気付き


「他にも夜釣りに来たのか」


程度に思い釣りに没頭していました。


目の端に又チラチラと明かりが、さっきの明かりのように見え、何気に見ていると右へ左へフラフラ移動してます。


一度上に、ポーンと上がったと思ったら水面の方へ。


そのまま水面から1メートル位のところを少し上下しながらこちらへ向かってきます。


「何あれ」


川の中程まで来ましたが、徐々に大きくなってくるその明かりがふわふわした明かりだと気づいた時、一気に恐怖が襲ってきました。


どう見ても、火の玉。

人が明かりを持って渡れる川じゃないし。


次の瞬間、行動に移っていました。

ランタンを持ち土手の上までの30メートル位を全力疾走し、土手の上で振り返り見ました。今まで自分が釣っていた辺りを。


居ます。

火の玉と農作業姿の老婆が、さっきまで釣っていたところに。


とても釣り道具を取りに行けません。

車に乗り少し離れたスーパーの駐車場で明るくなるのを待ち、明るくなってから恐る恐る釣り道具を取りに戻りましたが、さすがに朝は何も起きなかったです。


それからは少しでも明かりのある所で釣るようにしました。


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