第20話 長崎県のホテル

その出張は月金の4泊5日で行きました。

ちょくちょく行っている客先で、そのホテルは客先から近いところに一軒だけあるホテルでした。地名を書くと特定できてしまうので長崎県とします。

何時もはシングルでしたが、その時は閑散期ということもあり最上階の見晴らしの良いツインの部屋を使わせてくれました。


昼1で客先に入り、仕事をこなしてホテルへ入ります。

顔も覚えてもらってるのでフロントで世間話をしてから今週泊まる部屋へ。

春先の夕日が部屋に入っていて気持ちの良い部屋で窓からの眺めも最上階ということもあり申し分ありませんでした。


移動と仕事の疲れをとるために風呂に入り、夕食を食べに外へ出ました。何軒か行き付けの店もありますが、初日は新しい店を探すことにしてブラブラ散歩がてら歩いていました。

前に来た時には無かったラーメン屋を見つけ、ここで夕食を済ますことに。


部屋に帰ったのは9時頃で、少し書類作業を済ましテレビを見ながら寛ぎ11時半位にベッドに入りました。


2日目、3日目と同じような感じで過ぎ、4日目明日の午前中で仕事が終わる目途が付いたので安心してホテルの部屋で寛ぎ、荷物を片付けているとテーブルの上に置いておいた髭剃りがありません。

風呂に置いたかと思い見に行くがありません。さっきテーブルの上にあるのを見た記憶があります。

色々探して、何気にベッドの下を覗いたらそこにありました。

落とした拍子に転がって入ったのか、程度に思っていました。

荷物を片付け、コーヒーセットを仕舞おうとすると、コーヒーセットが見当たりません。

あちこち探し、コーヒーセットもベッドの下から出てきました。

これはおかしいと思いましたが、このホテルで不思議な経験はなかったのでこの時はさほど気にせずにいました。


明日の仕事の段取りを考えながらベッドに入り寝ようとしたその時に、いきなりの金縛り。

体が全然動かせません。目は開いています。ほとんど真っ暗な部屋の中で暗闇を見つめていました。

いきなり両足首を掴まれました。一人しかいない部屋の中叫び声をあげたつもりですが声が出ません。

その時頭の中に足首を掴んでいる何者かが浮かび上がりました。

同時に声も聞こえ「みず」「みず」

何人もの声が聞こえ、そのまま気を失いました。


目覚まし時計の音で眼ざめ、しばらく微睡んでいると昨夜の記憶がよみがえってきました。

恐怖もよみがえり、急いでカーテンを開け外の朝の景色を見て少し落ち着きました。

着替えようと足元を見ると、両足首にくっきりと手の跡がついています。

夢じゃなく現実の出来事なんだと実感し少し寒気を感じましたが、サッサと身支度を整え部屋を出ました。


以上ですが結局フロントには尋ねずにチェックアウトしました。なので何時も出るのかは分かりません。

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