第13話 昼間っから
ある初夏の早朝、家から近くにあるため池に鮒を釣りに行っていた。
そのため池は三方を山に囲まれ一か所だけが堤になっていて、街中の池なら周囲を柵などで立ち入り禁止にしてるであろうが、田舎なもので柵も無く入り放題でした。
その堤の上で釣りの準備をして、振り返ると後ろは一面の田圃が広がっています。
まだ穂の出ていない稲が朝日に照らされ「綺麗だ」などと考えていました。
準備を終え釣りはじめ集中していると、ウキの先の方を蛇が泳いで横切っています。
何気に見ていると蛇が方向を変えこちらに向かってきます。よく見るとカラス蛇と呼んでいる黒くて気性の荒い蛇です。取り敢えず棒きれでこちらに来ないように威嚇してると、うまい具合に方向を変えてくれました。
安心して再び釣り始めます。
この釣りは釣台と呼ばれる人が座れるくらいの板と高さ調節できる足が4本あり前の2本は池の中に立てていました。長靴を履いて座り足は池に浸かっていました。
朝日に照らされ釣りに没頭してると視界の隅の方で何かが動きました。
「魚か?」
水紋だけが残っていて魚は見えません。
次の瞬間、足を掴み引っ張られました。
「ぎゃっ!」
水面からぶよぶよに膨らんだ腕が出て足を掴んでます。長靴を履いていたのが幸いします。長靴から足を抜き堤の上に駆け上がり池を振り返り見ます。
5メートル位先に長靴が浮かんでいます。あとは水紋だけ‥
もう釣りどころじゃなくさっさと片づけ逃げかえりました。
後から釣り仲間にその話をすると、
「あそこは先週自殺があったから、それじゃない?」
と、教えられました。
幽霊って夜出るんじゃないのか?
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